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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第三章 侵略される世界
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信徒ファニール、帝都に着く

 これまで住んでいた街から、帝都エグランデルまでは、ファニールの足でも丸一日かければ到着する。


 だから、ファニールも朝の祈りを捧げた後、朝食代わりのリンゴを食べてから、すぐに出発した。途中の道は全て整備された街道だし、夜はどこかの街でなんとか安い宿を見つけるつもりだった。


 さすがに、女の子一人で夜歩くのは危険なので。


 しかし、そんな行き当たりばったりな計画は、実際には全く必要なかった。

 まず、昼間は散歩気分で快適に歩き、途中は一度だけ、後ろの方で言い争う声が聞こえたくらいで、他はなにひとつ問題なかった。

 しかも、その唯一の事件も、ファニールが振り向いた時には、喧嘩していたはずの男性二人は、なぜか肩を組んで笑顔で話していたという……片方の人は顔が引きつっていた気がするけど。


 ――実はこれは、ファニールに目をつけてよからぬ意図で近付こうとした男を、ベルザーグが密かにつけていた護衛がささっと事前に取り押さえ、「くだらないことを考えずに、笑顔で私と肩を組め。さもなきゃ、脇腹に突きつけたダガーで刺す!(マジ声)」と警告したためなのだが、もちろんファニールは知らない。


 しかも、夕暮れになって見知らぬ街に接近したところ、どこからともなく見知らぬ中年のおじさまが近付き、最敬礼でこう言ってくれた。


「今宵の宿の用意が調っております」と。


「ええっ!? わたし、予約していませんけど」


 ……予約以前に、生まれた街を出てこんな遠くまで来たこと自体、そもそも初めてなのだ。


「ご心配なきよう、お嬢様」


 高級そうな漆黒のタキシードを着込んだそのおじさまは、笑顔で言った。


「全てはベルザーグ様の思し召しでございます」

「――っ! まあ」


 いかに世間知らずのファニールであろうと、そして相手が身なりのいい上品なおじさまであろうと、甘言をろうされたくらいで、ほいほいついていくほど愚かではない。

 しかし、ベルザーグの名前を出されたとあれば、別である。


 当然、あのお方が道中の心配をしてくださったということだろう。

 そこに思い至り、ファニールは驚きと喜びと申し訳なさで、しばらくその場で立ち尽くしていたほどである。

 たんなる一信者にすぎない、このわたしなどをそこまでっと思ったのである。


 実際はベルザーグの中でファニールの優先度と言えば、魔王ヴァレリーやホワイトドラゴンのエステルなどに、全くひけをとらないのだが。


 ともあれ、造物主の名をもって招かれた以上、ファニールも拒否するつもりは毛頭ない。

 当然、そのおじさまに同行して、用意された宿とやらへ赴いた。


 ……到着してみれば、宿というより、立派な石作り数階建てのホテルであり、どう見ても一泊が銀貨数枚はしそうな場所だったが。

 宿代などは既に払い込み済みとかで、一晩とはいえ、彼女は生まれて初めて豪勢なふかふかベッドで眠ることができた。


 お陰で、いつもより半時間ほど寝過ごし、朝の祈りの時間が少しずれたほどである。


 祈りを終えてホテルを出る前には、フロントで呼び止められ、既に用意されていたらしい、見たこともないご馳走の朝食も食べたし、結局、銅貨一枚たりとも払わずに出てしまった。

 清貧づくしの人生を送っていたファニールにとっては、有り得ないような話である。


 それでも、ファニールとて年頃の女の子であり、生まれてはじめての経験に心が躍っていたのは間違いない。


 そこで、終始夢見心地の気分で街道を歩き、ついに目指す帝都エグランデルに到着した。


 帝国きっての巨大城塞都市なので、当然ながら街の門には順番待ちの人だかりがあった。門番に帝国市民である明かしの木札を見せ、どんな目的の滞在かを告げる必要があるのだ。


(これから、どうすればいいのでしょうか? だってわたし、ランデルグの住民であることを証明する札しか持っていません。それだと、帝都の長期滞在は無理だったはずでは?)


 どきどきしたが、しかし創造主の命令は絶対である。

 多分、どこかで道が示されるだろうと思い、ファニールは長い列の後ろに並ぼうした――が。

 いきなり背後から声をかけられ、息を呑んだ。




「お待ちしていました、ファニール・シャンゼリオンさん」


 慌てて振り向くと、また別の意味で驚く始末である。


(なんて……綺麗な人)


 ファニール自身も、住んでいた街でよく「ファニールちゃんは美人だねぇ」とか「可愛いねぇ」とか散々お世辞を言われたものだが、それは所詮、お世辞にすぎない(彼女はそう決めつけている)。

 しかし、この黒い瞳の女の子はどうだろう。

 なんだか、ポニーテールにまとめた長い黒髪はもちろん、肌そのものがうっすらと光っている気さえします。

 切れ長の瞳が少し鋭いのが気になるけれど、それとてむしろ彼女の美貌を際立たせているような。

 年齢は……多分、十八歳くらい? 自分より年上なのは間違いないはず。


「もしや、貴女も創造主様の?」

「そう、ファニールさんのお世話をするために、創造主より命じられて参りました。エレナと申します、どうぞよろしく」


 黒と白のコントラストがはっきりしたメイド服を着た彼女は、そう述べると上品に一礼した。

 


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