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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第二章 創造主(一郎)の覚悟
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特Aキャラ創造でポイント激減

 ヴァレリーの元を去った後も、ベルザーグはまだすべきことが多々残っていた。


 明日……いや、もう今日になるのだが。

 ベルザーグ教の神官を自認するファニール・シャンゼリオンが、この帝都に着くはずだ。


 道中に間違いがあってはいけないので、今も彼女に気付かれぬよう、密かに護衛をつけているが。

 到着した後は後で、教会建設の手筈の確認と、それからあの子のために用意した屋敷に案内してあげる必要がある。


 自分で案内すれば一番いいのだが、今はその暇すらない。


 明日は明日で、帝国西部の海岸に着いた軍船とやらの件を、調べにいかないといけない。

 所詮、文明レベルが同じなら、今はまだ海岸付近で斥候を放ってうろうろしている状態だろうから、まだ慌てることもあるまいが――しかし、長らく放置していい問題でもないだろう。


  正直、ベルザーグ……いや、中の人の相馬一郎は、自分が今まで神様という存在をナメていたことを痛感した。


 神様というのはとんでもなく忙しく、責任の重い役目だった! 


 なにしろ、次から次へとやるべきことが出てくる上、自分と同じく広い範囲で世界を見渡せる者がいないし、自分に比肩する者も存在しない。


 当然、何かを決断する度に、全ての責任は己自身に関わってくる。

 各キャラの運命はおろか、世界全体の歴史の流れまでもだ。


 お陰で、方針を決定する度に、不安でしょうがないではないか!


 これが自分の可愛いキャラのためでなければ、根性なしの一郎は、とうに逃げていただろう。




「リアルワールドに戻った後で時間があれば、たまには近所の神社に参拝するか。せめて、これまでの不信心のお詫びにな。……おっと」


 脳内で愚痴を垂れ流すのを中止し、ベルザーグは当面の仕事にかかる気力を取り戻した。

 今晩、最後の仕事を終えて少し休んだ後、問題の海岸へ飛び、現状を視察してくるつもりだ。


「だが、とりあえず今はファニールのための最後の準備だな」


 帝都内にある自分専用の屋敷で、ベルザーグは私室に籠もってステータス画面を開く。

 一郎の肉体に戻ってからやってもいいが、今ダイブからリアルワールドに復帰すると、疲労のあまり寝てしまいそうな気がする。


 それはまずい!


 とにかく、ベルザーグの目から見て隙だらけのファニールが、帝都でスリにあったり誰かにさらわれたり、最悪、この前みたいに不心得者の強姦魔共に襲われないように、護衛兼身の回りの世話をする者をつけてやらないといけない。


 つまり、ベルザーグはファニール一人のために、わざわざ護衛にふさわしいキャラを創造してやるつもりだった。






「ええと……確かクリエイトポイントが減るんだよな、そういうことすると」


 ぶつぶつ言いつつ、自分のステータス画面で調べると、問題のポイントは前より微妙に増えていた。

 

「2565? 一日経過して増える値が昨晩の数字かと思ったが、心持ちそれより多いな? どういう理由で……というか、なにを根拠に増減するんだ、これ」


 わからないが、まあいい。

 今はとにかくキャラ作成だ。


 今のヴィオランディス世界の現状を十分に知り、なおかつ家事全般に通じ、さらに護衛としても有能なキャラ……それでいて、ファニールをばっちりサポートしてやれる存在である。


 もちろん、あらゆる危機管理が可能で、それぞれの場面に応じて最適な判断もしないといけない。



「ハードル高いな、くそっ。設定文章だけで、かなりの量になるぞ」



 幸い、キャラを増やす時のために、外見のみのアバターの準備だけは複数ある。

 後は中身をばっちり決め、キャラとしての方向と性格、それに実力を決めるのだ。


 ステータス画面に仮想キーボードを出し、ベルザーグはせっせと設定に入った。

 むむむ! よし、細かい部分は自動設定して、負担を減らそうっ。


 数時間ほどで一応の作業を終え、キャラの自動作成に入ろうとしたが――最後にEnterキー押す前に、赤字警告が出た。


「出たよっ」


 思わず声が出てしまう。



『キャラ能力が極めて高い特Aクラスとなりますので、クリエイトポイントを1800使用します。よろしいですか?』



「よろしくないわいっ」


 だいたい、そのクラス分けはいつ決めたよ、いつ!? それも俺は知らんぞっ。

 ベルザーグは鼻を鳴らしたが、このポイント消費量は、珍しく納得できるものだった。

 なぜなら、性格良くて強くて家事も出来て判断力もいいとか、ごく一部の面だけに限定すれば、ヴァレリークラスのキャラをも凌駕りょうがするからだ。


「汎用性の高いマルチプレックス(職種複数選択可)スキル付きで、レベル85は無茶すぎたか……」


 ベルザーグは唸ったが、昨晩の強姦魔事件が未だに脳裏に残っていて、これくらいは当然の用心の気がした。


「ええい、ポイント消費が激しかろうが、これは必要な子だっ」


 ほとんどヤケクソで仮想キーボードのEnterキーを押した。

 これでよし! 後は予定通りシナリオ上に登場するはず。


「さすがに……疲れた……少しでもいいから、リアルワールドに戻って休むか」


 ダイブ中でも眠れるが、かなり長時間のダイブだったし、一度戻りたい。

 数時間ほど休んでから、またダイブして創造主としての任務に励めばいいだろう。


「よし、決めた」


 ベルザーグはステータス画面から、ログアウトボタンを呼び出し、押す。


「……うん?」


 画面を見たベルザーグの表情が、にわかに曇った。


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