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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第二章 創造主(一郎)の覚悟
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種族最後の一人となった女の子

「さて、皇帝を引きずり下ろすのはいいとして、後釜に誰を据えるかだが……」


 自分の創造したキャラ達のあれこれを思い出したが、あいにくベルザーグの記憶にある限り、この国の貴族や大臣にろくなのはいない。


 これも当然、一般プレイヤーが努力次第で貴族にもなれるための配慮として、わざと隙だらけのボンクラにしたのだが……まさか、こんな形で弊害が出るとは思わなかった。




「アリオン、おまえの知る範囲内で、貴族や近臣達にふさわしい者はいるか?」


 念のために、帝国内の情報に詳しいアリオンにも尋ねたが、彼もしばらく考え、首を振った。


「駄目ですね……申し訳ありませんが、推薦するに足る人物はいません。誰が次の帝位についても、国が傾くでしょう。正直、今の皇帝のままで放置していても、数年もしないうちにカルランデス王国あたりが攻め込んで来るかと」


 アリオンはベルザーグが創造主だと知っているので、もちろん荒唐無稽こうとうむけいだとは思わず、真剣に考えてくれた。

 しかも、その予想も驚くほど正確である。

 いくさが起こるのは数年後どころか、今から半年後の設定という部分を除けば。


「カルランデス王国……第八時代の遺棄兵器を発掘して多数秘匿している国だな。おまけに、召喚術にも長けている。アリオン、おまえの予想は正しい。必ずそうなると思うぞ」


 ……必ずそうなるというか、それがシナリオ上の予定だったのだ。

 魔法全盛のヴィルゲリア帝国の衰退を見て、カルランデス王国がいくさを挑む……プレイヤー達は、どちらの国に所属してもいいし、あるいは傍観してもいい。さらには魔族を率いる魔王ヴァレリーの下についてもいい。


 あらゆる陣営を選んで戦乱の世を生きることができる……正式な公開時には、そうなる予定だった。


「やむを得ない。新たな皇帝の座は、帝室や貴族以外からとしよう。混乱が起きるかもしれないが、このままあの無能にやらせるよりマシだ」


 ベルザーグがため息をつくと、アリオンがふいに身を乗り出した。


「ここは一つ、ベルザーグ様が玉座に着かれては? それが一番、間違いがないでしょう!」

「それも考えたんだが」


 ベルザーグは、大真面目な顔で頷く。


「しかし、今は駄目だ。私が出向かないとどうにもならない場合が、今後多く起きそうな気がする。ワールドマップの外からの侵攻とかな!」

「……え?」


 ワールドマップなどという用語はさすがに理解の範囲外にあるのか、アリオンが首を傾げた。

 ベルザーグは首を振って、ごまかした。

 その用語を説明するなら、まずこの世界がゲームだと教える必要が生じてしまう。





「とにかく、次の皇帝だ!」


 強引に話を変えた。


「正直、申し分ないキャラがいることはいるのだが……あの子を皇帝に据えると、問題多いだろうなあ」


 自分の知る限り、聡明さと強さを兼ね備えた、非常時には申し分ないキャラを思い出し、ベルザーグはため息をつく。

 だがいっそのこと、ここは大なたを振るって――




「ベルザーグ様!」


 ふいに声をかけられ、ベルザーグとアリオンは慌てて振り向く。 

 見れば、ギルドの受付……つまりベルザーグ達がいる場所に向かって、女の子が悠然と歩み寄るところだった。


 長い純白の髪と、同じくフリル付きの白いゴシックドレス……ヴァレリーと似た切れ長の瞳は、しかしうっすらと輝く黄金色をしている。

 もちろん、このような瞳を持つのは、人間でも魔族でもない。


 あいにく、この世界では知る者すら少ないかもしれない。


 彼女は既に滅んでしまった龍族の一種族であり、ホワイトドラゴンと呼ばれていた。

 しかも、ホワイトドラゴンとしては最後の生き残りなのだ。今も健在な他の龍族と違い、人間形態とドラゴン形態の両方をとることができる。


 生まれてくる時は人間形態なのでそちらがメインだが、ドラゴン形態に変身すると、現在各種存在する、全ての龍族の頂点に立つほどの強さを見せる。


 というか、そもそも他の龍族はもちろんのこと、太刀打ちできる種族はまずいないだろう。

 魔王ヴァレリーで、ようやく互角の戦いが望める程度か。


 当然、人間など束になっても無理であり、彼女から見ればゴミ同然である。

 正直、この子を設定する時「これ、どうやって滅んだことにするんだよ!」と、一郎が悩んだほどである。


(結局、さらに強い謎の外敵に滅ぼされた設定とした)




「一年ぶりでようやくご光臨されたのですね……このエステル・グランベール、これほど嬉しいことはありません」


 ちゃんと周囲に他の人影がないのを確かめ、エステルはスカートの裾を摘まんで、優雅にお辞儀した。

 見かけはせいぜい十代前半なのに、その威厳は侵しがたいものがあった。


 もちろん彼女もまた、一郎が創造したキャラの一人であり、アリオンと同じく、ギルドでよく話し合った仲である。


 戦騒ぎがなければ、もっと早くに様子を見に来ていたはずだ。

 


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