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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第二章 創造主(一郎)の覚悟
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皇帝の首をすげ替える決断

 

 ベルザーグ(一郎)はアリオンにファニールのことを頼み、さらに幾つか注意事項も語った。

 一応、サポート役として彼女に一人つけるつもりだが、ファニールに管理してもらうつもりの教会は、このギルドの隣にぶっ建てるつもりなので、アリオンにもちょいちょい様子を見てもらわないといけない。


 受付業務はそっちのけで、ベルザーグは出してもらった椅子に座し、顔をつきあわせてアリオンにファニールのことをくれぐれも頼んでおいた。






「よし、今のところはこれくらいか。彼女が帝都に着くのは明日になるだろうから、よろしく頼む」

「承知しました!」


 弾んだ声でアリオンが頷く。


「ようやくベルザーグ様の教会が出来るのは、僕も嬉しいですよっ」

「ははは……」


 柄にもなく照れ笑いなどした後、ベルザーグはふと思い出して訊いた。




「そう言えば、一年ほど留守にしていたが、私への依頼は来ているかな」

「もちろん、来ていますとも」


 アリオンは苦笑気味に頷く。


「ベルザーグ様――いえ、ベルザーグさんは、当ギルドの最高ランク冒険者ですからね。この一年で依頼は五百件近く来てます」

「それはまた、有り難いやら迷惑やらだな……できればギルドに貢献したいが、私も忙しい」


 ついうっかり、ゲーム内の時間を超速モードにして爆睡したことはおくびにも出さず、ベルザーグは重々しく告げる。

 幸い、アリオンは「よくわかります」とヤケに強く頷いてくれた。


「とはいえ、全てを無視するのもな……おまえから見て、引き受けるに足るような依頼はあったかな? 重要なことであれば、後日とりかかってもいいが?」

「重要というか……つい昨日、皇帝からの使者が来て、最高レベルの冒険者に仕事を頼みたいと言ってましたが」

「……皇帝?」


 さすがにベルザーグが眉をひそめる。


「皇帝なら、自分の臣下が幾らでもいるだろう。どうして冒険者ギルドに依頼などしてくる?」

「おそらく、臣下が信じられないのでしょうね……疑心暗鬼的な意味で」

「ふん?」


 皇帝として設定したキャラを思い出し、ベルザーグはたちまち顔をしかめた。

 デニケン・ド・ヴィルゲリアという青年で、正直、無能を絵に描いたような奴である。なんでそんなキャラを設定するのかというと、このヴィオランディス・サーガは自由度の高さを売りにするつもりなので、プレイヤーが一介の市民としてスタートしても、プレイのやり方次第で、皇帝にもなれるように工夫したのである。


 当然、下克上を前提にしていて、無能な皇帝がいるのは、そのためである。

 有能な賢帝などが帝位にいたら、どんなに努力しても下克上など無理なので。


 ……そこまで考えて、ベルザーグは嫌な予感がむらむら湧き起こった。




「ちなみに、皇帝の依頼とはなんだ?」

「一応内密にとか言ってましたが、あれは有力ギルド全部に依頼してますね」


 アリオンは呆れたように言った。


「内容は、帝国の西部海岸地帯に他国の軍船が押し寄せ、上陸を始めているので、その意図を探ってほしいと――」




「あの馬鹿っ」


 思わず立ち上がったベルザーグに、ギルド内の冒険者達の視線がさっと集まった。

 慌てて表情を改め、何事もなかったようにまた座る。


「軍船が海岸に着いたなら、攻めてきたに決まってるだろうっ。現に私は、大陸北部から侵略してきた似たような連中を、魔族と共に撃退したばかりだぞっ」

「うわぁ」


 アリオンが尊敬の眼差しでベルザーグを見つめた。


「やはり、影ながら世界を救ってくださっていたのですね」

「無論のことだ!」


 ベルザーグは即答し、片方の掌に、拳を叩きつけた。


「それより、れっきとした政治の責任者である皇帝が、侵略されている真っ最中に、斥候役を冒険者ギルドに依頼しようとは、どういう了見だっ。これこそ、国を挙げて対処すべき案件だろうにっ」


 とはいえ、ベルザーグにはもうその原因もわかっている。

 無論、皇帝たるあのデニケンが、めんどくさがって動かなかっただけの話だ。さすがは倒される前提で設定されたキャラだけある。


 その暗愚皇帝もまた、自分が創造し、設定したのだと思うと、自分とキャラの双方に腹が立って仕方ない。

 しばらく額に手を当てて考え、一郎は決断した。



「決めたぞ、アリオン。あの馬鹿には退場してもらい、新たな皇帝を立てるっ」



 これこそ、創造主の成すべき責任というものだろう。


 本音を言えば、もはや当初の予定は忘れて、今は有能なキャラに国を治めてもらわないと、こっちの負担が増えるばかりで困るのだっ。


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