イケメンな臣下であろうと、NTRの心配なし
「あ~、アリオンよ」
「な、なんでしょう? 急に口調が変わりましたが」
「いや、おまえはよくやってくれているが、果たして満足しているかな、と思ってな。もしなにか希望などあったら、言ってみるといいぞ。今までの褒美だ」
ちょっと様子見的に、ベルザーグは迂遠な言い方で真意を探ろうとしてみた。
すると、アリオンは涼しげな目をベルザーグに向け、他意のない笑みを見せた。
「不満など、ありませんとも。なにしろ僕は、創造主が秘密裏に人の姿を借りて活動していることを知る、数少ない人間ですから。そんな栄誉に預かっただけでも、有り難いと思っています。むしろ、月々頂いている俸給は、いささか過剰だと思っていますよ」
男にはまるで興味のないベルザーグですら、「ああ、こいつは女の子設定にした方がよかったか!」と思わず後悔するような笑顔だった。
実際、遠目にじっとこちらを伺っていた冒険者の女の子達は、このアリオンの笑顔を見てぽおっとなっていた。
だがあいにく、アリオンにモーションかけてもおそらくは無駄のはず。
念のため、ベルザーグは彼のステータス画面を開いてみた。
○アリオン・ベルクレフト○
種族:人間
年齢:18 金髪碧眼
技能:忍者Lv71
ヴィルゲリア帝国の、帝都エグランデルの冒険者ギルド「ハイランダー」のギルドマスター代理(真のオーナーはベルザーグ)大抵はギルド内で、メイド達と受付業務や掲示板の更新業務に携わっている。
○キャラ概要○
創造主ベルザーグが人間として活動するためのサポート役として創造されたキャラ。帝都住まいであり、今は滅びつつある、忍術を極めている。
彼の下で働くギルドのメイドさん達も、すべて忍者であり、くノ一。
ベルザーグのために情報収集すべく特化したキャラであり、忍術の技能もその必要性から。
ちなみに、男としてはかなりの美貌を誇る少年だが、彼自身は女性に興味がない。
どうでもいいが、例によってベルザーグの正体を含め、全てがここで説明されているのが、今一つ納得いかない。
前はそんなヤバい情報は載せていなかったはずだ。
――その部分に目を瞑れば、まあ内容はそう変化していない。
最後の、一見無駄に見える「女性に興味はない」という部分も、ちゃんと残っている。
なぜこんなどうでもいい設定にしたかというと、このギルドで「影のギルドマスター」として活躍するにあたり、ベルザーグ――というより、中の人の一郎が、ふとこう思ったせいだ。
『俺のサポート役として必要なキャラだが、こんなイケメンがギルドにいたら、加盟した女の子キャラを片端から食っちまいそうだよな。シット!』
――という具合に。
我ながらドン引きものだし、普通に考えてプログラムしていない限り、受付の少年と客の恋愛イベントなど、間違っても生じるはずがない。
しかし、かなりオタク入っている一郎は、ゲームのAIキャラといえども、自分の可愛い娘がイケメンにとられる気がして、たまらなかったのである。
ならばアリオンを女の子キャラにすればいいという話になるが、当時、デザイナーの一郎は、重要キャラをもう散々女の子として設定しまくっていて、上司から睨まれていたのだ。
『おまえ、何人女を増やしゃ気が済むんだよっ。うちはエロゲーの会社じゃないぞ! 大事な腐女子様を無視すんなっ。死ね、死んでしまえっ』
――そんな感じで。
ちなみに、最後の罵倒も含めて、本当に言われた。
それ故のこだわり設定だが、まあさすがにこの「女性に興味ない」部分の設定は、当時やり過ぎた気がして一人で赤面した。
……だが見よ、今になってかつてのこだわりが生きているではないか!
「いやぁ、我ながら先見の明があったな、俺。お陰でおまえに任せておいても、全然安心だ」
「はい?」
「いや、こっちの話」
一応はすっかり機嫌がよくなり、こそこそ開いていたキャラステータス画面を閉じた。
「ところでアリオン、改めておまえに頼みがある」
安堵したところで、そろそろ肝心の話に入ることにした。




