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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第一章 創造主、一郎(ベルザーグ)の奮闘
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魔王の女の子に特別なプレゼント

 スリットの入った短いスカートと黒ストッキング、それにビスチェにも似た上衣にマントという格好のヴァレリーは、臣下を連れずに一人でベルザーグの前に舞い降りると、その場で片膝をついた。


「我が創造主、偉大なる大神ベルザーグよ……ようこそご光臨を」


 声音には、魔王にはあるまじき崇拝心と畏怖心が込められていて、ベルザーグは大いにほっとした。この子もある意味では、あの神官ファニールに勝るとも劣らない信心を持っているようだ。





「うむ。密かに見守っているつもりだったが、どうもぶっそうな外敵が遠征してきたようなので、つい手を出してしまった。おまえの指揮を邪魔するつもりはなかったのだ」


 神バージョンのこの話し方は、ベルザーグにとってはめんどくさいから嫌なのだが、まあやむを得まい。


「それは畏れ多い仰りようです。貴重なアイテムを下賜かししてくださったばかりか、戦闘にまで介入してくださり、有り難き幸せ。それで――」

 

 ようやくヴァレリーはやや目線を上げ、ベルザーグの足元に座り込む男を見た。


「その男が、今攻め込んできた敵の片割れでしょうか?」

「ああ。おまえの指揮ぶりは見事で、あれ以上の介入は必要ないと判断し、指揮官の一人を捕らえておいた。今まで尋問していたが、どうもこの連中は、私の預かり知らぬ外の世界からやってきたようだ」


 男が話した内容を、ベルザーグは詳しく教えてやった。


「捕虜の尋問までお手を煩わせ、申し訳ないことです……」


 ヴァレリーほどの女性が、恐縮したようにまたしてもこうべを垂れる。






「いや、私もおまえ達の創造主として、この程度のことはやらないとな。精神支配はしばらくは有効だろうから、おまえも知りたいことがあれば、後で訊いてみるがよい」

「ははっ。――必要な情報を得た後は、魔獣の餌にするつもりですが、よろしいでしょうか」


 丁寧な口調ではあるが、末恐ろしいことをしれっと言われ、ベルザーグは内心で唸った。

 自分が彼女の敵でなくてよかったと、心から思った。

 いかに見た目がスーパーモデルクラスの美人で、しかもビスチェの胸の谷間も深い女の子とはいえ、やはり彼女は人型魔人や魔獣、獣人などを率いる魔王なのである。


 これが人間だと、「魔獣の餌にする」などというセリフは、脅しと拷問以外ではなかなか出てこない。

 しかし、ベルザーグ(一郎)にとって大事なのはヴァレリーとその配下なので、もちろん何食わぬ顔で頷いた。


「構わぬとも。必要以上に敵に情けをかけることはない。それと……大軍で来たからには、大陸北方の海岸には、軍船も数え切れないほど停泊しているであろう。それら全ては、おまえ達の戦利品とするがよい」

「――っ! ははあっ」


 キャンディーをもらった女の子のような笑顔を一瞬浮かべ、ヴァレリーがまた低頭する。

 あの軍勢の規模から見て、停泊している軍船も一隻二隻ではないだろうから、本気で嬉しかったのだろう。


 まず間違いなく、軍資金や糧食を積んでいるだろうから。





「それから、ヴァレリー……大陸中で恐れられる魔王とはいえ、私にとっておまえは、可愛い娘だ」


 未だに片膝をついたままのヴァレリーの金髪に、ベルザーグは手を置く。

 ほんの少しだが、ヴァレリーが震えた。


 寸前までそんなことするつもりはなかったので、実はベルザーグ自身が驚いていた。まあ、それだけヴァレリーが魅力的だったということだろう……下手すると思わずこっちの手が伸びそうな、豊かな胸の谷間も含めて。


「おほん。つ、つまりだな、おまえの才能限界を引き上げてやろうと思う。あのような者達が攻めてくるくらいだから、今後も用心は必要故」


 欲望に負けて本当にセクハラ行為をする前に、辛うじてベルザーグはごまかした。


「私の……才能限界をっ」


 頭髪に触れた途端、微かに震えていたヴァレリーは、ようやく目線を上げ、弾んだ声を上げた。切れ長の瞳が、この時ばかりは興奮で輝いていた。


「うむ。人間だろうが神族だろうが、私以外の者達には、当然ながら才能限界値というものがある。おまえの場合は破格に高いが、それでもLv94あたりが限界ではなかったかな?」

「ご指摘の通りでございます。もちろん、魔族内ではそれでも一番の数値なのですが」

「わかっている。だが、私は個人的におまえに期待している」

「なんと……もったいなきお言葉」


 せっかく元に戻っていたのに、またヴァレリーの声が震えた。

 彼女が言い含めたのか、他の魔族達は掃討戦のために敵軍を追っていったか……あるいは、遠目にこちらを見ているのみだ。


 なので、多少の密談をしても聞こえる心配はない。


 だからこの際、ベルザーグはとことんヴァレリーを喜ばせてやることにした。惜しかったが、つややかな金髪からようやく手を離し、ベルザーグは素早く彼女のステータス画面を開く。


 残酷なほど己の才能を数値化してしまう「才能限界値」の数字を、こそっと変更してしまった。





「このお陰で、後で神族の何名かの変更もせねばなるまいな……バランスを取るために」


 ベルザーグは苦笑して呟き、教えてやった。


「後で確認すればわかるが、限界値を一気にLv120まで上げておいた。その他の数値も、これに伴い、限界が上昇するはずだ。今後も精進するといいぞ」

「ああ……我が創造主よ。このヴァレリー、伏してお礼を申し上げます」


 滅多にないことだろうが、感激したヴァレリーの瞳は、かなり潤んでいた。


「ご恩に報いるためにも、一層励んで参ります!」

「う、うむ」


 泣く子も黙る魔王のくせに、創造主に対しては妙にしおらしい彼女に、むしろベルザーグ自身がうろたえかけていた。


 もちろん、彼女の臣下や敵共には決して見せないであろう、密かな可憐さに心奪われたせいで。

 改めて、「今後もちょくちょく様子を見に来てやろう」と決意した。


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