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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第一章 創造主、一郎(ベルザーグ)の奮闘
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敵の情報

 

『案ずるな、ヴァレリー。私は創造主、ベルザーグだ! 特別に降臨して、外敵を屠るために力を貸しに来たぞっ』


 恐るべき魔法攻撃が炸裂した時、ヴァレリーはすぐにそちらを見た術者を確認したが――。

 おそらくあちらも、ヴァレリーと目が合った瞬間、わざわざ声を届けてきた。


 見た目はまだまだ若者だが、黒い瞳には魔王ヴァレリーをも唸らせるほどの力の波動を感じた。それでも、とっさにステータスディテクションを使ったのは、彼女なりの用心深さである。自分の創造主への信心を知り、何者かが罠にかけようとしている可能性もある。

 魔族を率いる立場の者は、決して用心を忘れてはならない。


 しかし、一瞬阻まれたかに思えた魔法探知が成功したあと、ヴァレリーはステータスの一端を見て、驚喜した。

 相手の方が遥かに格上なので、ステータスの全てを覗くことは不可能だったが、彼のレベルが100を遙かに超えていることだけはわかった。

 そこから先は探知不能のためマスクされて読めないが、「レベル100↑」とあって、赤字の↑が横につくということは、それ以上のレベルだということなのだ。


 当然、そのような破格のレベルが人間に有り得るはずもない。

 魔王たるヴァレリー自身ですらレベル91であり、既に才能限界値が間近な状態なのだから。


 ――今日はなんという日か! ついに私の前に、創造主が姿を現してくださったっ。


 深々と創造主の方へ一礼した後、ヴァレリーは喜色満面で叫んだ。



「者ども、見よっ。我らが創造主がこの地に降臨され、ご助力くださった。これ以上、大神ベルザーグの御手を煩わせるなあっ」

『うぉおおおおおおっ』


 たちまち彼女の周囲に、返事とも歓声ともつかぬ声が充ち満ちた。







「おぉ、どうやら信じてくれたらしい。結構、結構」


 無駄に鷹揚おうように構え、ベルザーグは笑顔で頷いた。

 見たところ、今のレベル90魔法の効果は絶大だったらしく、敵軍は既に総崩れの有様だし、逆に魔族軍はベルザーグの登場に士気が沸き立っている。


 これ以上の助力は必要ないと見定め、ベルザーグは高見の見物を決め込むことにした。

 おそらく、さほど掛からず敵軍を追い返せるはずだ。



「……となると、俺はむしろ、敵軍の情報を探るか」


 ベルザーグは再び空に舞い上がり、逃げ散る部隊のうち、指揮官クラスの一人を見定める。

 馬上にあるそいつの頭上に音もなく急降下し、さっと腕を掴んだ。


「うおっ」


 敵は素っ頓狂な声を上げたが、ベルザーグは一切構わず、そいつごと上空へ舞い戻る。


「は、離せえっ」

「ええい、やかましいぞ、侵略者があっ」


 むかついたので、まだかなり高度があったのだが、途中で手を離してやった。


「望み通り、離してやる!」

「――っ!」


 金属製のヘルムのみは外していたが、後はプレートアーマーをまとっていたそいつは、文字通り石つぶてのごとく落下し、がっちゃんと叩きつけられた。

 まあ死なない程度の高度にはしたので、一応、まだ動いてはいる。


 舞い降りた一郎は、すかさず精神支配系のマインドコントロールをかけてやった。

 拷問などの疲れるやり方より、こっちの方が早い。




「おまえは、どこから来た!」


 まず、一番肝心なことを尋ねると、男はぺたんと座り込んだまま、虚ろな視線で述べた。


「クレアデス共和国からです……」

「阿呆っ」


 思わず拳で、ごちんと半白の頭を叩く。


「国名じゃなくて、このヴィオランディス大陸から見て、どこら辺から来たのかってことを知りたいんだよっ。別の大陸か?」

「別の大陸です、はい。この大陸に来るまでに……三ヶ月以上、海を渡る必要がありました」

「三ヶ月ぅ?」


 そこまで遠いとなると、明らかにヴィオランディス・サーガのワールドマップより外ということになる。

 なにしろ、今自分達がいるヴィオランディス大陸は、ワールドマップの北端にあるからだ。

 他にもある大陸のほとんどは、マップの南側に集中していたはず。


「最初から、目的は他国への侵攻か?」

「……はい。我々の大陸はもはや全土が統一されているので……さらなる新天地を求めて、評議会が遠征を決めました」

「ここにヴィオランディス大陸があると、おまえ達は知ってたのか?」

「古文書には、そうありました……ただ、確信のある者まではいませんでしたが」


 そんなアテにならない航海にそれほどの兵力を割けるとは、どれだけ余裕のある国家なのか。


「他にもまだ来るのか?」

「いえ……我らの帰還を待ってからだと……評議会議長はそう言われました」

「ふむ」


 ひとまずほっとしたところで、ヴァレリーが空を渡ってこちらへすっ飛んできた。

 ベルザーグはひとまず質問をやめ、表情を調節した。


 なにしろ、今の自分は創造主なのだ。へらへらしている場合ではない。


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