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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第九章 空中都市ハイランダー、出撃
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ラーメンもあるレストラン


 レストラン区画へ向かう途中、ベルザーグは愛想よく述べた。

「しばらく会えないかもしれないからね。今日は会えてよかった」

 途端に、後ろで大きく息を吸い込む気配がした。


「……えっ」


 振り返ると、ファニールは随分とショックを受けた顔で、立ち尽くしている。


「それでは、エレナちゃんが話してくれた他国への遠征は、もうすぐ……なんでしょうか」

「うん。というより、正確にはもう向かっている。現在このハイランダーは、北部海岸からずっと先にあるらしい、未知の大陸目指して飛んでいる最中なんだ」

「まあ……」


 絶句して俯き、ファニールはもじもじとなにやら考え込んでいる。

 ベルザーグはなるべく優しい声で「とにかく、食事しながら話そう」と声をかけ、ようやくまた歩き出した。




 

 ハイランダーの居住区画にあるレストラン区画は、初めて訪れる者が必ず度肝を抜かれるほど広い上に、似たようなレストランが、他に二つもある。

 デパートのレストラン街並のスケールがあるので、ひとまとめにしてその周囲を「レストラン区画」と呼ぶわけだ。

 常に三つのレストラン全部が開いているわけではないが、少なくとも一番小さいレストランは、掃除時間を除いてほぼ二十四時間ずっと営業中である。メイドの女の子達は当番制で仕事をしているので、彼女達がいつでも食事を摂れるように配慮されているわけだ。


 もちろん、ベルザーグがいつ来るかわからないという理由も大きい……というか、本来はそっちが、コンビニ並にいつも開いている理由だろう。

 そもそも、船内に複数のレストランがあるのは、緊急時、この空中都市に自軍を乗り込ませて出撃する際、戦闘要員全員の食事をカバーするためだ。


 腹が減っては戦はできぬということわざがあるが、これはベルザーグの持論でもある。

 ただし、今この都市にいるのはメイド達と、後は戦闘マシンの女の子達だけなので、常時開いているレストラン内は、ほぼ貸し切りも同然だった。


 三つのうちで一番小規模とはいえ、このレストラン内にも壁際にずらりと料理を揃えたテーブルが並んでいるし、ケーキなどのデザートも完備されている。

 しかも、卵や肉などの料理素材は、専任の料理人がその場で料理してくれるという、サービス付きだった。


 ちなみに、ベルザーグは「ファンタジーメシの常識など、俺に関係ない! 俺が好きなものを食べるんだっ」と決めていて、このレストランにはラーメンもあればカレーもあるし、頼めばカツ丼や寿司まで出てくる。

 ここへ来たベルザーグがだいたい真っ先にレストランへ来るのも、当然と言えよう。




「なんでも好きなのを皿に載せて来るといい。私のお勧めはラーメンかな。食べるには、まずこうして、並べられた麺の一つを湯に入れてだな――」


 などと、彼女にも嬉々として説明してあげた。

 最初に、ファニールが素早くデザートの方を見たので、「今回はリンゴ以外を食べようじゃないか」とわざと本人に勧めたのである。

 図星だったと見えて、ファニールが口元に手をやったのが印象的だった。

 というか……本当にまたリンゴを選択するつもりだったのかこの子……。


 ファニールに選ばせるだけだと、必ず粗食になりそうな気がしたので、ベルザーグはやむなく、ラーメン以外にも彼女の分も自分で選んで料理を選び、おおよそ肉と魚主体の料理に、蒸かし立てのシュウマイまで皿に取り、窓際のテーブルに並べてやった。


 散々うろうろしてやっと戻ってきたファニールは、お粥の椀と卵焼きの皿だけというシンプルさであり、ベルザーグは早速、自分が選んだ皿を幾つもそっちへ押してやった。


「料理を選びすぎてね。残すと料理人の彼女達に申し訳ないので、手伝ってほしい」


 適当な理由で、早速ファニールに、ラーメン入りの丼を押しつけてやる。

 こうでもしないと、この子は食べないだろう。


「は、はい」


 予想したよりは素直に頷いてくれたので、ベルザーグも内心でほっとした。





 しばらく、二人で無心に食べていたように思う。

 ただ、ベルザーグが三分ほどでラーメンを完食した時にちらっと前を見ると、ファニールはフォークでラーメンの麺をそっと啜り、噛みしめるように麺を噛み、いちいち驚いたように丼を見下ろしていた。


 少なくとも「美味しいわ!」と思ってくれているのだけは、伝わる。


 箸が使えないのでフォークというのはわかるが、麺を啜る時に、いつも口元を空いた手で隠しているのが渋い。

 おまけに姿勢も全くダレないという……さすが、早朝から冷水でみそぎしている少女である。


(ま、まあ……人の食べ方に突っ込みを入れるのはナシだろう……好きにさせておこう。しかし、あの調子だと食べ終わるまでに麺が伸びそうだな)


 肩をすくめ、ベルザーグは彼女の好きにさせておくことにした。

 またしばらく食事に集中して、そのうちあまりにも静かなので、またちらっと彼女の様子を窺った。

 さすがの彼女も、もうラーメンは食べ終わっていたのだが、今度はなぜかベルザーグをじっと見つめていた。それも、やたらと熱心に。


「……ど、どうかしたかな?」

「あ、いえ……」


 訊いた途端に、ファニールが俯く。

 肩がしきりに動くので何事かと思えば、膝の上でもじもじと両手の指をいじっていた。


「創造主様は……とても素敵な方だと思い……わたし、ずっと見とれていました」


 辛子をつけまくったシュウマイが、ベルザーグの箸からぽろっと落ちた。


「あ、あのっ。それだけではなくて!」


 テーブルの上を転がるシュウマイを見て、慌ててファニールが付け足す。


「わたしも戦いに連れていってくださいと、そうお願いしようかと」


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