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一郎が神となった日


 無名のゲームデザイナーが構築したゲーム世界なのに、開発途中でなぜか、全てのゲームキャラが独自の意志を持ってしまった。

 

 ……などという話をもし相馬一郎が聞いたら、「今どきそんな展開、ラノベでもなかなか受けないんじゃないか?」と皮肉の一つも言ったかもしれない。

 しかし……あいにく前述の無名のゲームデザイナーとは、相馬一郎自身のことであり、しかも、彼がデザイン中のオンラインゲーム「ヴィオランディス・サーガ」は、βテスト前にして、既にゲームの中でAIキャラ達が独自に動き回る世界になってしまった。


 つまり、それまで作った一郎のシナリオは一応は生きているが、それ以外の予定は全て未確定と化したのである。

 ゲームキャラが勝手に独自判断で動き回る世界で、なかなか先のシナリオなど作れない。


 何かの悪夢だろうと、初めて異常に気付いたその夜は、一郎はふて腐れてベッドに倒れ込んで本当に寝てしまった。





 

 ところが――あいにく、翌朝に一郎が目覚めても、事態は変わらなかった。


 ……それどころか、余計にひどくなっていた。

 一郎がせっかく作ったばかりの街を、こいつら(意志を持つAI)は、自分勝手に拡張し始めていたのである。

 店が増えるわ、街路はより複雑になるわ、住宅も増えるわで……当初予定していた規模の、1.5倍増しの広さになっていた。


 しかも、予定にはない売春宿まで街の中に建設し、今やその店の前にポン引きまでいる始末だった。ふざけんなという感じである。そんなもん、お子様向きのゲーム内に出せない!

 原因はどうも、昨晩の一郎にあるようだった。


 異常動作の原因を究明しようと、ゲーム内の時間設定を数百倍速にして観察していたせいらしい。

 しかもそのまま、寝てしまったわけだ。

 つまりゲーム内では、昨晩時点からもう一年経過している。


 慌てて時間設定をリアルタイム進行に戻したものの……一郎は、再び「始まりの街」として設定していた街の各所を眺め、あんぐりと口を開けていた。





 メインストリートを拡大表示してみれば、見よ!


 それぞれのキャラが勝手に街路を動き回り、商店を出している者は、賑やかな声をかけて、通行人に商品を売ろうとしている。

 これ全て、汎用性の高い自動プログラムで、プログラムした以外の動きなのだ。


 もちろん、中心となるはずだったヴィルゲリア帝国の中に、始まりの街「ランデルグ」を作ったのは一郎だし、商店やホテルを設定したのも、一郎である。


 全て一郎がデザインして、構築した。


 キャラについては、基本的な性格を二十種類作り、後は専門のソフトでそれぞれの性格を組み合わせ、外見も無限に近いパターンで自動変更してキャラ造形を量産した。いわゆる、NPC……ノンプレイヤーキャラクター達の創造である。

 しかし、一郎は創造したそいつらに勝手に街をうろつけと命じた覚えもないし、街を拡張しろとプログラムを組んだ覚えもない。


 だいたいプログラムについては、自動生成プログラム以外は、専門職が他にいる。


 デザイナーの一郎にしてみれば、まだまだ先の長い、ゲームデザイン途中の作業だったのだ。






「こいつら、人をからかってんのか?」


 拡大表示で観察しているうちに、だんだんむかついてきてしまった。

 よって一郎は、街中を歩く連中を三名ほど選んでその場で八つ当たりすることにした。


「神の怒りを知るがよいっ!」


 我ながら馬鹿らしいと思いつつも、独白する。

 マウスを動かし、生け贄に選んだ三名を範囲指定して、その場から一瞬で消去してみたら――そういう操作はちゃんと受け付けてくれて、三名は確実に街路から消えた。

 しかし……ああ、だがしかし、その結果はどうだったか?


「ひ、人が消えたぁあああ」


 見ていた大勢がそう騒ぎ出したのはまだしも、そのうち人が集まり、やんやの議論が始まった。


「か、神の怒りじゃああっ」

「我らが戦神、ヴァルキュリアがお怒りであるっ」

「嘘つけ、くそがー。じじいはすぐに神様のせいにする!」

「それより、どっかで転移の魔法が開発されたんじゃないけ?」

「うお、それだあああ」

「どう考えても、それだよなっ」





 ……こんな調子で、住人達が集まって騒ぐ騒ぐ。

 テキスト表示ではなく、住人の声をリアルタイムで音声出力しているので、やかましいことこの上ない。

 こんな調子で、俺はいつになったらまともなゲームを作れるのかと、一郎は愕然とした――が。


 ……ようやく目が覚めてくると、「実はこれ、かなり凄いことではないか?」と思い始めた。

 最初の段階である、「AIキャラが独自の思考を持って勝手に行動し始めた!」というだけでも、世界中がひっくり返る大騒ぎになるだろう。


 しかし、一郎はPCを介して、その「生きるAIキャラ達」にちょっかいを出し、彼らの反応を引き出すこともできてしまったのだ!





「おいおいおいっ……ひょっとしてこれは!?」


 そこまで考えた一郎、思わず呻いた。

 ヤバい……今の俺、立場的に神様とあんまり変わらないんじゃ?

 大画面モニターの中で自儘に動く住人達を見つめているうちに、一郎はもっと自分の力を試したくなってきた。


「そうだっ、確か俺が最初期に設定した、看板娘の女の子がいたなっ」


ふと思いついたネタですが、急いで書き溜めた分まで連載してみます。興味がお有りでしたら、おつきあいください。

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