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ティレリエン・メア 〜学館の陽は暮れて〜  作者: 西羅晴彦
赤色魔術
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遭遇

翌日、ユーナがクリスと一緒にディトーのところへ保管庫の鍵を借りに行くと、昨日と同じく、すでに開いていると告げられた。

「鍵を借りていったのは、ルツィア・リッツジェルドさんですか?」と訊くと、

「知り合いか?」と答えが返った。

「いえ。昨日、初めて会いました」

「大人しくて良い子だろう? 兄とは大違いだ」

「そうですね」

ユーナは笑いそうになるのをこらえる。

「クリスティーネとは馬が合うんじないか。ちなみにお前さんは兄の方と合いそうだけどな」

ディトーの余計な一言にユーナは「うぐっ」と唸って、ディトーを睨んだ。

「ほらほら、そう言うところが似てるって言うんだ」

ディトーが人の悪い笑顔を作る。

「あんなのと一緒にしないで下さい!」

「あー、はいはい。すまんかったね」とディトーから気のない謝罪が返った。

「ルツィアさんもトゥネスク教官が指名して『課題』に取り組んでいるんでしょうか?」とクリス。

「いや、あの子を指名したのは、エイディオルのはずだ」とディトー。

エイディオルとは、学館に3人いる『赤色師』の一人。まだ若い青年で、元はもう一人の『赤色師』であるジルの弟子兼秘書をしていたらしい。それが半年前に昇進したのだそうだ。

「ということは、ジル教官指名の館生もいるってことですか?」

「いや、聞いてない」

「そうですか」

現在、課題に取り組んでいるのは、ユーナとクリスの他はルツィアだけと言うことだ。

競い合う種類の課題ではないので、仲間は多いほど良い。

ルツィアがユーナの知るルーなのかどうかはともかくとしても、彼女ともっと距離を詰めようとユーナは思った。


教官棟の別棟に赴くと、『赤色保管庫』の入口が発闇していた。発現はかなり大きい。おそらく中にいるルツィアが『番外の緋』を使っているのだろう。

この時になってユーナに、ふと疑問が湧いた。

ユーナとクリスは、互いに互いの発光(発闇)を確認しながら進めている。発光の強度を確かめるには2人がかりでやる以外に方法がないからだ。

しかしルツィアは、たった一人で作業を進めているはず。どうやって強度を確認しているのだろうか?

クエスチョンマークが頭の上に浮かんだユーナは、保管庫の中をのぞき見た。

答えは、至極簡単なものだった。

中からは2人の声が聞こえてくる。

1つはルツィアのもの。

そして、もう1つは男のものだ。おそらく、その男がルツィアの課題仲間なのだろう。

男の方にも挨拶をしておいた方が、後々都合が良いだろう。そう考えたユーナは2人の方へ歩み寄る。そして、

「こんにちは、ルツィアさん」

と、にこやかに挨拶した直後、

「うげっ⁈」

と、蛙のような声を出して後ずさった。

「どうして、あんたが……」

目前の男の存在そのものを非難するように、ユーナは小さく呟いた。

「あえて答えるならば、妹を助けるのは兄の務めだからだ。そのために『赤色探し』に取り組んでいる」

イヤと言うほど自信に満ち溢れたハイバリトンの声が答えた。

お判りとは思うが、一応、紹介しておこう。

それはレオンハルト・リッツジェルドだった。


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