孤児院へ
一週間後。
ユーナを孤児院に連れて行くために現れたのは女性だった。ユーナはてっきりアレクス司祭が来るのだと思っていたが、想像が外れた。何でも、司祭は仕事で忙しいために時間が空けられなかったとその女性が説明した。
カヤはこの日、ユーナを見送りに出てくれた。
ウドたちは仕事があるので来ることは出来ない。その代わりユーナの方から出向いて挨拶をしてきたので、お別れ自体はしっかりと出来ている。
「元気で」とカヤ。
「6年後に孤児院を出たら、会いに来るね?」
「まあ、期待しないで待っておくよ」
「うん」
女性に連れられたユーナは、貧民地区を出て中央広場の方へ出た。そこから広場を横断して街の反対側の外れに向かう。その地区は宗教地区と呼ばれ、聖堂が多く集まり、聖職者も多く住む場所だ。その一角に、孤児院はあった。
「ここが今日からあなたが住む場所です」
ユーナを連れてきた女性ーー道中、彼女はロッテと名乗ったーーがそう言って示した建物は、古く薄汚れていた。
と言っても、ユーナが居た貧民地区の比べればかなり立派だ。何しろ、石造建築なのだ。木造の掘っ立て小屋とは比べものにならない。
中に入ると、2人の大人と数人の子供が出迎えてくれる。
「こんにちは」とまず挨拶してくれたのは、真っ白になった髪をまとめ上げた、笑顔が優しげな老婦人で、彼女はマルガレタと名乗り、孤児院の管理をしていると説明した。
次いで挨拶してくれたのは、中年の細身の男性。目つきがまるで睨んでいるかのようにキツい。視力が弱いのかも知れないとユーナは見て取った。眼鏡は市民にとって手が届くようなものではないので、視力が弱くても裸眼で生活している人は多い。彼はクリストフと名乗った。
子供たちはユーナよりも幼い5、6人が居合わせていたが、自己紹介は後回しになった。実際にはこの4倍がここで生活しているらしい。
子供たちはユーナの赤髪をみて、無邪気に珍しがったり触りたがったりした。
幼い割には世間擦れしているユーナから見て、大人からも子供からも妙な雰囲気は感じ取れなかった。
つまり、新人をこき使ってやろうとか、いじめてやろうとか。そう言う負の感情をぶつけてくる人物がこの場には居ないということ。そもそも新人を歓迎しようと考える人たちに、歪んだ性格の持ち主は少ないだろう。
とは言え、彼らが奥に秘めている感情までは捉えることは出来ない訳だが。
ちなみにユーナをここまで連れてきたロッテは、この孤児院で育った後、手伝いとして残ったのだそうだ。18歳と言うことだが、実年齢より老けて見える上に、がりがりに痩せていた。
他の大人や子供がひどく痩せているようには見えないので、満足に食事が提供されないとか、そう言うことではなく、ロッテ個人の問題と思われた。
『ユーナとルーとファイラッド ーー孤児院編ーー』(最終章の後に記載)に続きます。




