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ティレリエン・メア 〜学館の陽は暮れて〜  作者: 西羅晴彦
水と炎と決別と。
629/664

ヘンリエッテの思惑

月曜の分です

最近投降のタイミングが乱れてしまっていてすみません。

ユーナはツェツィーリエの病気が何なのかを、まだ知らないでいる。聞くのが何となく恐いから、というのが理由ではあるが、逆にアルアの温泉で療養になるのなら、それほど深刻なものではないだろうとも思っている。

だが、ツェツィーリエと出会ってすでに数年になるが、彼女の病気が快癒した様子は無く、むしろ悪化しているように思える。

ユーナは、そのことが不安だった。

そのため、ツェツィーリエの負担になるようなことは、極力したくない。それがお見舞いであったとしても。


アンナが、携えていた籠をユーナに渡してきた。そこには小さな花束と、その下に隠した手紙が入っている。手紙の内容は大したものではない。自分の近況と、ツェツィーリエの快復を願っているといったもの。

こんな物でも、ツェツィーリエとの関係を繋ぎとめられればいい。心の片隅でユーナはそんなことを思う。

「つまらない物ですが、こちらをお納めください」

「ありがとう。良い香りね」

ツェツィーリエは秋に咲く花の香りを胸いっぱいに吸い込み、長く伏せる部屋の中で、季節を感じ取ったようだ。

花が消え失せる冬の前に、渡すことができて良かった。花束に使った花は、華やかさや香り高さなど特に奇をてらったものはなく、ただ、この時期のリーズ邸の庭に咲いていた花だった。

「それでは、そろそろ失礼いたします」

「ええ、今日は来てくれてありがとう。よろしければ、また遊びにいらして? まだ、もう少しアルア市で療養になるでしょうから」

笑顔で言うツェツィーリエ。

「母上……」

呆れたように呟くレオンハルト。

母子の会話は、当たり前のようで、どこか悲しさを感じさせた。


さて、アンナの将来を考えれば、彼女は学館に入るべき。

これは決定事項だ。

そのために、ユーナができることと、すべきこと。

これが問題となる。

ただ、自分だけて決めて良い事柄ではない。

ユーナは、養父ザツィオンに手紙を出すことにした。重要な内容なので、ほんとは直接、会って話したいところだが、アルアの社交はこれからが本番なので、今からこの街を離れると言うわけにはいかない。


手紙にはレオンハルトに言われたことを含めて書いた。

アンナのこと。

自分のこと。

そして、できれば、自分も学館に行きたいと思っていること。


手紙を出すのと入れ替わりのように、ザツィオンからの手紙が届く。

内容はヘンリエッテ・バウタウバー男爵家令嬢との関わり方について。

ユーナがヘンリエッテとの知己を得たことを、手紙で報告したことへの返答だった。わざわざ報告したのは、彼女が『術門貴族』に属するからだ。

手紙の中身を要約すると、

『リーズが武門だからといって、それに即した友人付き合いをする必要は無い』

『術門貴族との関係は、今後のリーズのあり方を考える上で必要になるだろう』

と言った感じで、ヘンリエッテとの友人関係については了承してくれたと理解して良さそうだ。

そうなると、バウタウバー男爵家が継承するという能力、『持力を見る能力』を借りて、『領主の庭』を探索することができる……。


作者註(一応)

読者には以下のことを思い出しておいていただきたい。

『領主の庭』の最奥を見た記憶を失っているユーナにとっては、『領主の庭』に対処することは目下の重要課題である。

しかし実際には『ティケ』を名乗る『世界の管理者』とその眷族の活躍で、当面の危険は避けることができている。

そして、『ティケ』は、辻褄が合わなくなる場合を考えて、アンナとレオンハルトの記憶は残している。

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