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ティレリエン・メア 〜学館の陽は暮れて〜  作者: 西羅晴彦
水と炎と決別と。
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潜入、神代遺跡2

ユーナ達がそんな会話をしているうちに、ドロテアが、「準備完了しました」と告げた。

「では、私が先に降りて露払い致しますので、皆様はお嬢様の後に、順次降りてきてください。あ、ドロテアは最後になりますので」

と、メグは順番を指示するも、何の躊躇いもなくドロテアの梯子に足をかけ、するとすると降りていった。

次は指示通りに、ティケが、そしてカールとリーゼ、ユーナ、アンナ、最後にレオンハルトが降りる。

ユーナとしては、はしごになったドロテアがどうやって降りてくるのか、気になったが、また絶句させられることは確実なので、敢えて注視することは避けることにした。

それにしても、ドロテアの能力は、あきらかに人間のものではない。だが、魔物とも違う。ユーナがツェツィーリエの魔術講義で知った限り、魔物というのは、人間が居れば襲い掛かってくるもの。

ドロテアにそんな動きは微塵も無いし、特異な能力を除けば、立場と場を弁えた有能そうなメイドにしか見えない。

レオンハルトもアンナも、その考えは同じようで、ドロテアの能力について特に騒ぐようなことはしない。いや、もしかすると、触れてはいけない領域と理解しているのかも知れないが。

「300年は生きている精霊の王の配下なんだから、あれくらいは、当然なんだろう……」

レオンハルトがそんなことを呟く。

それはユーナに言って聞かせるというより、自分を納得させるための言葉だった。


大穴を降りきった先には、暗く先が見通せない。そこに、

「点灯します」

とドロテアが告げると、2つの明かりが、ドロテアの頭上に灯る。

カンテラではとても作り出せないほどの強い光。しかも、その光はふよふよと宙に浮いているように見える。

ユーレイか? でも、ユーレイってこんなに光るもんなの?

ユーナはユーレイを見たことがないので想像の域を出ないが、それにしてもこんな、太陽のようにまぶしく光るはずがない。ユーレイなら光るにしても、もっと淡いく光るものなのでは?

だとしたら、これはなに?

想像すら出来ない。

……。

やめよう。

ユーナはその先の思考を止めることにする。


到底理解できない存在や事象に遭遇したとき、人は、その対象を無視して距離を置くか、否定し、時には攻撃するといった対応を取ることがある。自分の常識が壊れないようにするための自衛的対応とも言える。

しかし、ユーナがいま置かれた状況では、その2つともやって良いことではない。

というのも、ドロテアと、彼女が作り出す不可解な事象に頼らなければ、この場所では命に関わるからだ。

その意味でユーナがこの状況で取りうる対応は、ドロテアにはあまり深く関わらないようにするくらいが関の山だろう。

ユーナとしては勿論そのつもりだ。

だがアンナとレオンハルトは、ドロテアに興味を持ちながらも、近付きがたい、そんな風に思っているようだった。


さて、ドロテアの謎の行動で動転したせいで、周囲の確認が疎かになってしまった訳だが、ユーナはここでようやく、周りの様子に目を向けた。

ドロテアのはしごで降りてくる途中で気付いたが、大穴の壁面は、人工のものと言うには造りが稚拙で岩肌が露出し、ごつごつとしていた。それは下に降りたって以降に続く横穴も同じで、強いて例えるなら、廃鉱山の坑道の雰囲気がある。

そんな横穴を進むこと数分で、今度は前方に滑らかな表面の壁が出現する。

ただしその下の部分は、ハンマーか何かで壊されたような穴が開いていた。

以前、遭遇した粘性生物は、おそらくこの穴から出てきたのだろう。

それはつまり、この穴さえ無ければ、粘性生物は外に出てくることは無かったと言うことであり、さらに言えば、あの生物は密閉された地下空間に居たことになるーー他に出入り口が無ければ、の話だが。

「あの、」とユーナは思ったことを口にする。

「この穴、後から開けられたものみたいですし、埋めてしまえば、面倒なことは全部解決するのでは?」

例えば、盗掘のために開けられた穴という可能性もある。もともと、密閉されていたのなら、元の状態に戻しても、何の問題もないはず。そして、穴を塞げば、もう中の物が出てくることも無い。

その疑問に答えてくれたのは、まず、ティケだった。

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