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ティレリエン・メア 〜学館の陽は暮れて〜  作者: 西羅晴彦
水と炎と決別と。
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潜入、神代遺跡

前回水曜日分はスキップとさせてください。

彼女は、自然体で微笑みながら、

「私はメガロシュネと申します。メグとお呼びください。皆様、どうぞ、お見知り置きくださいませ」と、ユーナ達に挨拶をして、それから、ティケの方に向き直り、

「お嬢様、全てお聞きしました、万事、このメガロシュネにお任せください!」

鼻息が聞こえてきそうな、意気込みのに満ちた発言をする。ユーナが介在する余地は無さそうだった。

「うん、お願い」

「はいっ! (ユーナの方へ振り返り)では、参りましょうか皆様。私が先導いたしますわ」

「……」

「もともと大穴まで行くつもりだったんだし、その中を確認できるなら、なお良し……と考えて良いんじゃないか?」

沈黙するユーナに、フォローのつもりなのか、レオンハルトはそんなことを言ってくる。

しかし、彼の口元は、緩みそうになるのを抑えているように見える。つまりは、彼もこの状況を喜んででいるということであり、何が嬉しいのか、ユーナには共感できるものではない。

だがまあ、一万歩譲って、レオンハルトの言うことにも一理はある。

確認のためにアンナを見ると、

「あの三方(さんかた)が同行するなら、大丈夫と思います。皆さん、隠していることがあるようですから」

ユーナは頷きを返す。

ティケ、ドロテア、メグが、普通じゃないことは、やはりアンナも気付いているようだ。

「判りました。よろしくおねがいします」

ユーナは観念することにした。


建物の廃墟と思われる壁に開いた、以前は入り口だったであろう四角い穴から、中に入る。中と言っても、天井は落ちているので、外変わりない。

ただ、前回訪れたときと同じように、中には本棚などの家具たらしい残骸と、ガラスの破片が散乱している。

そこからさらに奥へ、陥没した床を超えたり、崩れてできた瓦礫の山を登ったりしながら先へ進む。

そうして、大穴に到達する。

相変わらず、その穴からは生暖かく生臭い空気が流れ出てきている。穴の縁に立っているだけで背筋がぞわぞわするのも変わらずだ。

ここまで来て、ユーナは、はたと思い至ったのだが。

中に入ると言っていたが、どうやって入るんだろうか。

飛び降りるには穴の底は深すぎる。

ティケたちなら、苦もなく飛び込めそうな気もするが、こちらは普通の人間なのだ。


ユーナがそんなことを考えていると、案の定と言うべきか、ティケが大穴の縁に立って飛び込もうとする。

「お嬢様、お待ちくださいませ。今回はお連れの方々がいらっしゃるのですよ!」

メグがそれを静止した。

「えー?」

ティケは不服そうだが、ここはメグに感謝すべきだろう。

メグは、唇を尖らせるティケを置いて、

「ドロテア、お願いできるかしら」

と促す。

「はしごで良いですか?」

「もちろんです」

「承諾しました」

と言う会話が続いたが、メイドさんのドロテアは、縄ばしごのような物は所持していない。

どうするんだろうと、ユーナが興味を持って見ていると、ドロテアは右手を、無造作に、大穴の方へ伸ばした。

すると、その手の形が崩れていく。崩れると言っても、細胞が壊れるような崩れ方ではなく、まず指が節ごとに黒い立方体に変わり、手のひらも複数の立方体に変化していき、しまいには右腕すべてが沢山の黒い立方体になってしまう。

そうして出現したたくさんの立方体が、意志があるかのように動き、互いにくっ付き、ある物は紐状に、またある物は踏み桟(足をかける部分)に変わり、縄ばしごに変化した部分から大穴の中に降ろされていく。もちろん、ドロテアの右肩とは繋がったままだ。

そして今度は左腕が変化する。ドロテアが不意に左手を彼女の後方の地面へ向けたと思うと、いきなり伸び、手の部分が地面に突き刺さる。

その光景を、ユーナもアンナも、おそらくはレオンハルトも絶句して見ていたわけだが、

「これも魔術ってヤツなんですかね?」

ははは、と乾いた笑いと共にカールがそんなことを呟く。

「いや、これは魔術ではない。何なのかは皆目見当も付かないが……」

とレオンハルト。それにアンナが同意する。

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