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ティレリエン・メア 〜学館の陽は暮れて〜  作者: 西羅晴彦
滅びの魔女と癒しの聖女
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教皇裁定と聖堂教会の闇3

「謝罪を求めるつもりはない。すでに200年も時が過ぎている。だが、真相を知る権利は、この者にも、その上司たる私にもあるはずだ」

ユーナの言葉をアンナが引き継ぐ。

「さらには、過去の事実が明らかになる過程で、今後のことも自ずと決まってくることになるでしょう。虚偽は口に上らせないのが良いでしょうし、隠蔽は事実だけでなく、命をも隠すことになるでしょう」

温厚なアンナにしてはかなり痛烈な警告と言えるが、フレブスのような人物が相手なら、このくらいも仕方ない。

フレブスもそれをから見れば、小娘のような年齢のアンナの言葉だが、暗喩を使った言い回しは効果があったようだ。

「黙して使命に殉ずるのが結社員のあり得べき姿なのだが、私が何をしてもしなくても、我々が力を削がれることは間違いない。であるなら、すべてを明らかにしてしまっても構うまいよ」

フレブスの答えは、効きようによっては観念したように聞こえるが、彼の表情からはそれを読み取ることができない。むしろ、これから一矢報いようと、企みを持っている顔だった。


(各台詞が説明的で長いので戯曲風にしました)

フレブス:すでに察しているだろうが、我々結社がこの聖堂教会に潜入する切っ掛けとなったのが、皇帝の暗殺事件だ。当時の、いや今も一部のダールバイ人は、クヴァルティスに対して憎悪を抱いているが、それを表に出せずにいる。だから、堰き止められた感情の流れる方向を示してやれば、誘導することなど簡単だったであろうよ。


教皇:当時、暗殺に手を染めたのは、聖堂教会に近い立場にあった者たちだったようだ。彼らは事を起こした後、失踪した。行方は知れていないが、おそらくは……。


フレブス:我々の側で始末したのだろうな。わたしならばそうするからな。……それによって、帝国に対して犯人を曖昧にすることに成功すると共に、ダールバイ人に対しては、暗殺を我々の功績とすることが出来たと言うわけだ。


教皇:その意味で、暗殺事件は、結社が聖堂教会に入り込む契機となったと理解している。しかし結社は、そのまま、聖堂教会を乗っ取ることはせず、結社は重要な地位は占めるものの、決して教皇の座を狙おうとはしなかった。それは今日まで続いている。おそらく、クヴァルティス帝国における隠れ蓑として機能させるためだったのだろう?


フレブス:それも一面では正しい。だが、理由は他にもある。

ダールバイ聖堂教会が完全に結社へと置き換わってしまえば、どれほど隠そうとも帝室の注意を惹きつけることにつながり、ゆくゆくは、ダールバイ聖堂教会そのものが解体される恐れも出てくる。我々としては、それは避けたかったのでね。


ユーナ:それは、どうして?


フレブス:ダールバイ聖堂教会には、秘密がある。帝国に知られれば、聖堂教会自体が存在出来なくなるほどの、ね。そしてその秘密は、我々結社にとっては非情に価値が高いものだったのだよ。

つまり、それを欲する我々結社と、それを隠したい彼ら聖堂教会は、持ちつ持たれつでここまでやってきた、ということだ。


ユーナ:帝国に隠したい秘密、ね。


 どうやら、この話題が、フレブスにとっての一矢のようだ。


口元を歪ませるように笑みを浮かべて、フレブスは教皇を見やる。教皇は表情を強張らせて沈黙を守る。言葉を慎重に選んでいるのだろう。

今の状況は、聖堂教会側にとっては、秘匿する必要があった秘密を、フレブスのせいで帝国側ユーナに漏れてしまっているという、ある意味、危うい状況になっている。

というのも、ダールバイ聖堂教会が帝国の管理下に置かれていることから考えれば、そのような隠し事は、あってはならないことになるからだ。

そして、ユーナも立場上、そんなものが存在するならば、調査をしないわけにはいかない。

結果、ダールバイ聖堂教会は帝国から処罰を受けることになるだろう。秘密の中味によっては、重い物になる可能性もある。

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