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ティレリエン・メア 〜学館の陽は暮れて〜  作者: 西羅晴彦
滅びの魔女と癒しの聖女
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当事者不在の破門宣告

「教皇に会います」とユーナ。

「どうぞ」とフラグランティアは入口を譲り、「ここで防いでおりますので」と付け加えた。

部屋は執務室のようで、装飾で金やら大理石でゴテゴテに飾り付けられた執務机の他、ビロード生地のソファや、これも過剰装飾な本棚、設置式の暖炉などがある。右に目を向ければ、奥の方の礼拝堂に繋がっていた。

そんな室内の執務室の中で、ソーテール教皇は執務机に向かって座り、まんじりともせず、じっと虚空を睨みつけている。その表情は、現実から目を背けるような惚けた顔ではなく、逆に、全てを理解し、全てを自身の心の内に呑み込む覚悟を持ったものの顔だった。

ユーナの姿を認めると、教皇は立ち上がる。

「リーズ監視官殿。今回は誠に、感謝の念に堪えない……」

申し訳なさそうに教皇は、謝意を告げる。フラグランティアが守った形になるので、それは当然の対応と言える。

「ご無事で何よりでした。ところで、この聖騎士達は、やはり……?」

ユーナが回答を仕向けると、さすがに隠しおおすことは不可能と理解しているのか、教皇は躊躇いも見せずに答える。

「察しの通り『保守派』、いや、もう有り体に言って構わんだろう。『結社』がけしかけたのだろうと思う」

まさか、ここまで直接手を下すとは思わなかったが、と教皇は付け加えた。

それだけの台詞で、ユーナとしても十分に状況は理解できる。実際、推測の答え合わせをしたに過ぎない。

「では、猊下はどのようになさるつもりですか? 我々としては、猊下と手を携えることは吝かではないと考えています」

「ご配慮に感謝を申し上げる。監視官殿が協力してくださるというなら、今この時こそが、神々が意図された好機なのであろう。我々は本来の我々に戻るために浄化の道に進まねばならない」

「つまり、『闇を払う』と?」

「闇、か……。言い得て妙なのが口惜しくはあるが、監視官殿の言葉通りだ」

「では、どのように? 我々としては、敵だったとしてもこれ以上の犠牲は出したくはありません」

「そのように考えていただけるのであれば、打つ策は1つきり。……『保守派』の首魁を捕らえる!」

「炎聖ペトロニウス、ですね」

「いかにも。リーズ監視官には我が宣言の証人となっていただきたい。……教皇ソーテールの名において、今、この時を以て、『炎聖』ペトロニウス、本名フレブス・クレールの資格を剥奪の上、破門とする。枢機卿ゲオルギウス・フォン・オルティクス及び大司祭ハインリヒ・ノイマンを破門とする」

「確かに、聞き届けました」とユーナ。

教皇の破門宣告の内容からすると、ペトロニウスの本名はフレブス・クレールと言うのだろう。

オルティクスと言うのは、ユーナも会っている、聖女認定団を率いた保守派。

ハインリヒ・ノイマンについては、なんとなく聞き覚えがあったが、ユーナはアンナに耳打ちされてようやく思いだした。

カリンの身を引き渡すよう要求してきた聖女認定官とか言う肩書きの男だ。奇妙な同行者を連れていたことを思いだす。まるで躾のなっていない子供のような男。

今思い起こしてみるに、あの同行者-ーヨハネスと言っていたがーーは、もしかしてハインリヒの使役鬼だったのでは?

その考えで、何となく納得が行ってしまう。

まあ、それも彼を捕らえれば自ずと判ることだ。

「では、その2人の捕縛と行きましょうか。ゼロティピア?」

ユーナが呼ぶと、「御前に」という言葉と同時にゼロティピアが跪いた姿勢で姿を現す。索敵ならば風の精霊がもっとも適任だ。

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