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ティレリエン・メア 〜学館の陽は暮れて〜  作者: 西羅晴彦
滅びの魔女と癒しの聖女
552/664

行動開始3

前の投稿分を少し変更しています(ユーナの口調等)。前回分からのつながりに違和感があるようでしたら、前回を読み直していただければと思います。

よろしくお願いします。

不敬罪は帝室関係者の侮辱に対して適用されることが多いのだが、現在のユーナは『皇帝の権威の守護者』を名乗っているため、帝室関係者に当てはまってしまう立場にいる。

そして、たとえ聖堂教会の護衛職であったとしても、クヴァルティス皇帝の威光は届く。つまりは、不敬罪も適用されるということ。

不敬罪は軽くて追放、重ければ死刑と相場が決まっており、赤羽帽子の男が震え上がるのは無理のないことだ。

しかし、口では死刑と言ったが、ユーナもそこまで冷酷ではない。そもそも、不敬罪を口にしたのは、こちらの思惑があってのことだ。

「だがまあ、失言を聞いた人数も少ないし、こちらの質問に誠実に答えてもらえるなら、穏便に済ませることにしても良い。ただ、何があっても次はない、と心得てもらおうか」

「寛大なご判断、感謝いたします。この者も心を入れ替え、職務に励むことでしょう」

とフロリアヌス助祭が謝意を告げれば、当の赤羽帽子の男は何度も首肯してみせる。礼儀的にはダメダメだが、そこに不服や反発の意志は感じられず、十分に反省している様子。

「それでは、監視官殿の質問をお教えいただきたい」

「簡単なこと。昨晩の警備体制を指示したのは、誰か?」

「守衛長です!」

「そうではなく、守衛長に指示した人物のことを訊きたい。推測でも構わないぞ?」

「すっ、ステファノス様だと思います!」

赤羽帽子の男は観念したのか、すぐに答えた。

「ステファノス司祭は警備関係の統括責任者で、保守派です」とフロリアヌス助祭。

「そうか」

保守派と言うことは、オルティクス枢機卿と同じ派閥。

警備の責任者が指示をするのは至極当たり前だが、その責任者がオルティクス枢機卿と繋がっているのであれば、話は少々異なってくる。

「もう一つ、知っていたら答えて貰おう。わが書記であるアンネッテコーウェルの部屋はどこに変更になったのだ?」

「同じ階の奥から2番目の部屋に移っておられます。荷物運びをお手伝いしたので覚えております!」

赤羽帽子の男は、少し気の緩んだ表情でそう答えた。もし、答を知らなかったら不敬罪が適用されるかもしれない立場なので、そんな反応になったのだろう。

「判った。君は誠実に答えてくれたので、失言は水に流そう」

「あ、ありがとうございます!」

護衛職の礼も忘れて、赤羽帽子の男は両膝を床に付き、聖人を拝むような姿勢を取る。

ユーナは、赤羽帽子の男のその反応に少し驚いた。それから、そこまで精神的に追い詰めてしまったのは、悪いことしたかな? と思わないでもない。

しかし、それを表に出すわけにはいかないので、変わらず男性口調のまま、

「今後は使う言葉には気を付けることだ。それと、話す場所もな」

と念を押しておくことにした。

「はい、はい、承知しました! 約束も必ず守りますので!」

赤羽帽子の男は、真面目にそう答えた。

こくり、と頷いてみせると、ユーナはフロリアヌス助祭の方へ振り返る。

「では、わたしたちは行くことにするよ、フロリアヌス助祭」

「承知いたしました。私もご一緒しても?」

「構わないが?」

「では、そうさせていただきます」

ユーナはカリンとフロリアヌス助祭と共に、護衛休憩所を後にする。

せっかくフロリアヌス助祭が同行してくれているので、良い機会とばかりに、ユーナは探りを入れることにした。

「それはそうと、『四聖徒』のカタリノフォラ殿は、どの派閥かご存知か?」

「『保守派』です」

即座に答えるフロリアヌス助祭。その声に逡巡は感じられない。

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