表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ティレリエン・メア 〜学館の陽は暮れて〜  作者: 西羅晴彦
滅びの魔女と癒しの聖女
535/664

教皇とのお茶会3 〜 アンナの聖女教育参観

「そうお思いになる根拠はどこに?」

「そなたは知らぬやも知れんが、カリン・カイラスを守る者の存在が根拠となる。使徒とは 一対の存在であることが多いのだ。

使命を帯びて顕現する者、

そして、その者を守護する者。

この2人が同時に現れる。そして2人ともが『聖人』以上の格を持つのだよ」

「なるほど」

カリンの対の存在と言われれば、思い付くのはあの少女だが、あれが守護者と言われても、あの所業を目にした後では、肯定しがたいものがある。

だが、まあ、教皇がそう言うからには、彼女がそうなのだろう。と思いつつも一応、確認せずにはいられない。

「……その対とは、リディア・ガルラントをのこと言っておられますか?」

「それは、おいおいと判ることであろうよ」

教皇はそう言ってはぐらかした。

「前回の会合では、カリンは『四聖徒』の1人に、という意見もあったと思いますが、それでもカリンは『至聖人』なのですか?」

「我々はそう理解している。カリンを『四聖徒』にしたい者どもは、いわば『目の見えぬ者が見えていると称している』ようなものだ」

いきなり、抽象的なことを言われた気がするが、思いだしてみれば、『神命記』の一節にそんな言葉があったはず。

確か、こんな聖句だった。


心の目で見えぬ者が、見えていると称しても、

心の目で見える者には見えておらぬと判る。

しかし、心の目で見えぬ者は、それを見ることは無い。


ユーナは思い出した句に自信が持てないが、その不安を表に出す必要も無いので、表面上は平然を装う。

それにしても、教皇も聖職者だけに、説教臭い言い方をするものだ。

ここは敬意を払い、彼の流儀に従うべきだろう。


「なるほど。『欲に目の眩む者は真実を見ない』、と言うことでしょうか」

ユーナも『神命記』の別の章から引用してみる。

「良く諳んじておられる」

と、教皇は満足そうに頷いてくれるが、ユーナが諳んじたのはカムネリア教の『神命記』の一節。たまたまダールバイ教にも同じ文があったのはラッキーだった。


「では最後にもう一つ、お聞かせください」

「良いとも」

おそらくは養父ザツィオンとそれほど変わりない年齢(つまりは、おっさん)だろうに、教皇は含みの感じられない笑みでそう応じた。

「何故それを、わたくしにお話になるのですか?」

「そなたの疑問はもっともなことだが……期待しているから、という答えでは、いけないかな?」

「……期待、ですか。猊下のそれに添えるかは正直なところ判りません。わたくしはわたくしに課せられた使命を果たすだけですから」

「それで構わない。そなたの思うとおりに。そうすれば、自ずと我が期待にも応えてくれることになるだろうよ」

「わかりました……では、そのように」

「うむ」

どうやら、教皇猊下とは利害の一致を見たと思って良さそうだと、ユーナは理解する。

お茶会に参加した目的は十分に果たせた、と思って大丈夫だろう。その証拠に、別れ際に教皇はこう言った。

「今日は有意義な会話が出来て僥倖であった」



一方、その頃のカリンとアンナは。

風の聖人カタリノフォラから、神話とも歴史ともつかない話を聞かされていた。

ちなみにだが、

古すぎて、事実かどうか、今となっては検証のしようもない出来事とその登場人物を神話。

検証する資料などが残されており、事実と判る出来事とその登場人物を歴史。

と呼ぶことには読者も異論ないであろう。

もちろん、時代が新しくても、資料が少なく事実かどうかの判断ができない場合もあるのだが、それならばそれで、『詳細は更なる研究の余地あり』と後世の学者に託すのが正しいやり方と言える。しかし、えてして学者という輩は、自らの思想に則って事実を決めたがるもので、自分の主義主張に合うように事実を解釈してしまうことがある。

その意味でカタリノフォラは、その思考が学者のそれに酷似していた。少なくとも、アンナの目にはそう見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ