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ティレリエン・メア 〜学館の陽は暮れて〜  作者: 西羅晴彦
滅びの魔女と癒しの聖女
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人ならざる者たちの攻防2 〜 状況把握会議2

残った鬼達が怯んだように後退る。しかし、瞬間移動のように消え、またフラグランティアが現れた時には、鬼がさらに餌食になっていた。

「フラグランティア様、なんだか楽しそうですわね」

ゼロティピアもクリュオも加勢するつもりは全くない。その必要がないからだ。それに、そんなことをして不興を買うのも御免被る。

「楽しそう、というより、憂さ晴らしに興じておられるようにお見受けします」とクリュオ。

「憂さ晴らし……二角鬼と三角鬼では、相手にならないでしょうに」

「ですから、憂さ晴らし」

「……そうですわね」

フラグランティアはどうやら戦闘狂なところがあるようなので、相手が弱者であっても闘わないよりはマシなのかもしれない。

フラグランティアの実力なら4体の鬼族程度、一撃で瞬殺できる。それをやらずに1体1体に手を下しているのは、やはりそう言うことなのだろう。

ゼロティピアとクリュオがそんな話をしている内に、敵の個体は灰すら残さず焼滅し尽くしていた。

「終わりだ」

そう言って、ふう、とため息をつく様は少しは満足したように見える。

「明日も来るでしょうし、その時はお願いしても?」

「来るならば、滅ぼすだけだ」

その返答が、ほんとに戦闘狂っぽくて、ゼロティピアはふっと笑ってしまう。

「なにかおかしなことでもあったか?」

「いえ、なんでもございませんわよ?」

「ならば良いが……どれほど些細なことでも、気になることであれば必ず報告するように」

「もちろんでございます」

こんなやり取りをしている3人だが、いかに強くとも、いや強いからこその慢心があったことは残念ながら否定できないだろう。


翌日、ユーナは自室でアンナと打ち合わせをしていた。

「教皇が率いるという『改革派』とは良い関係を築けた方が良いと思ってるんだけど、どう?」

改革派と繋がりを持てれば、他の派閥と共闘できるし、派閥争いを乗り越えることができれば、改革派が聖堂本部を牛耳ることになる。そうなれば、旧習に囚われない彼らが自分たちでダールバイ教聖堂教会を改革し、新たな形に生まれ変わらせてくれるに違いない。改革後の聖堂教会がどのような形を取るのかは今の段階では判らないが、少なくとも現在の状態よりは余程良い。

「良い考えだと思います。ただ問題は、改革派がラルトバルド侯爵令嬢の言う『闇の集団』と関係していた場合にどうするか、ですね」

「やっぱり、その線も否定できないかな?」

「断定するには情報が不足しています」

「そうだよね……」

『闇の集団』ーーたぶん、カムネリア秘密結社ではないかと、ユーナもアンナも推測しているが、まだ確定的ではないので、あえてぼかした言葉を用いているーーと教皇が繋がっている可能性は、現時点では完全に否定することは出来ない。アンナの言うとおり、情報が少なすぎるのが原因だ。

だがその一方で、その確率はかなり低いんじゃないかとユーナは思っている。

というのも、『改革派』と『闇の集団』って、相反する印象が強いのだ。ソーテール教皇の人となりは未だ不明だが、会議の時に見せた彼の言動と表情は、悪人とか闇にはほど遠いように見えた。

ただ、それは単なる人物観察の結果に過ぎず、計画を練るためには足りないのだ。

「教皇に探りを入れられると良いんだけど」

「フロリアヌス助祭はどうでしょう?」

「彼はどの派閥?」

「『改革派』かと」

「でも、オルティクス枢機卿の配下よね? オルティクスは保守派じゃないの?」

そんなことをアンナと話し合っていた昼下がり、教皇の使いを名乗る衛士から手紙を受け取った。

内容は、明日のお茶会への出席依頼だった。

これは幸先が良い。

アンナにその手紙を見せると、彼女も同じ意見のようだ。

「先方もこちらと繋がりを得ようとしているのかも知れません。ここは出席するのが良いでしょう」

「わかった。じゃあ、明日の聖女教育の付き添い、アンナにお願いしてもいい?」

「わかりました」

そんな訳で翌日は、ユーナは教皇とのお茶会、アンナはカリンの付き添いに分かれることになった。

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