リディアとカリンとアンナ。
今回、都合でいつもより短いです。すみません。
「寮生一人に一部屋が割り当てられるのがルールです。それに、今は広くても荷物が増えれば手狭になっていくものですよ」
と答えたのはアンナ。
アンナらしい、厳しめの台詞なのだが、声音はユーナが聞いたことがないほど優しげで、その所為かリディアも反発することもなく、
「はーい」
と素直に聞き分ける。
アンナは、微妙に表情を緩めて、こくりと頷いた。そんなアンナも見たことが無く、ユーナはアンナとリディアのこの良好すぎる関係に未だに慣れられずにいる。
実はアンナ、2人がリーズ寮に越してくることが決まってから、寮内の手続きや荷馬車の手配を率先して行ってくれた。アンナを2人と引き合わせた時、よく判らないが、リディアと意気投合というか、何か相通じるものがあったらしい。それ以来、アンナはリディアをよく面倒見るし、リディアはアンナに懐いていると言って良い。
理論派で冷静沈着が服を着ているようなアンナと、自由奔放でともすれば我が儘にも見えるリディアが、なぜ? と思うのはユーナだけではなかったはずだ。
カリンもカリンでどうしてか、親友を取られたとか思うこともなく、優しく2人を見守っている様子。まあ、カリンの場合、聖女と言われるような子なので、負の感情とは無縁なのかも知れないが。
1つ、思い付くことがユーナにもある。
実は、アンナとリディアには共通点があるのだ。
それは、背丈。
背が低いアンナと同じくらいにリディアも小さい。もしかすると、そこに通じるものがあるのかも知れない。
しかし、そんなことを口に出して言うのは失礼なので(アンナは素振りには見せないが、背が低いのを気にしているように思える)、ユーナはその考えを頭の隅に追いやった。
そんな経緯でリディア・ガルラントとカリン・カイラスの世話をすることになったユーナ。
世界が世界ならユーナが姉、リディアとカリンが妹としてのお話が展開したかも知れない。しかし2人は年上の少女に憧れるにはまだ幼い。
さて、ユーナは四六時中、リディアとカリンと一緒に居られるわけではないが、時間がある限りは行動を共にすることに決めていた。
というのも、2人は日常生活レベルで、少々不足を感じてしまうからだ。
例えば、食事のマナーとか、買い物の仕方とか。ど田舎の出身なのだから仕方が無いと言えばその通りなのだが、やはりメーゼンブルクで生活していくのであれば、覚えておいた方が良いことが沢山ある。そういう面では、アンナが積極的に手伝ってくれるので、負担としてはだいぶ軽い。
そして、用事さえなければ、ユーナは2人と一緒に居ることが多いので、必然的に、ユーナの友人・知人とも顔を合わせることになるーー。




