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008 契約成立。モンスターの傭兵三人とコボルトの村へ

4/20に007話を書き直してます。切りは同じなのでお暇な方は前話から。

数日無理したせいで体調が悪くまた冗長な文章に……うう。

なお、ウイルス検出ソフトで検出されないアドウェアとマルウェアが計100個超えでした(苦笑)

アド・マルそれぞれ専用特化のソフトを使ってのやっとのPC復帰で御座る。

皆さんも常々気を付けなされ……。PCの速度が早うなった。

 異世界に転移した際に発生したちょっとしたアクシデント。それを収めて仕切りなおした私たちは、原因の一つでもある車を放置する訳にはいかない理由からその場、表通りから外れた家と家の隙間に出来た空き地で車座になっていた。

 もちろんプルプルさんは私の横で、何故かちょっと不機嫌そうにぷるぷるしている。


「それでは改めまして、近衛仲弥です。どうぞよろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いしますコノエナカヤさん」

「うおー、これほんとに凄えなあ~、どうなってんだあ~?」

「よろしくだぁ、ナカヤ~」


 初めて顔を合わせる者が二人と名乗りをしていない人が一人。そこで改めて自己紹介をしたわけであるが、肝心の初対面名しらずのゴブリンは私の背後に鎮座している車に興味津々で聞いていない。

 しかし私も基本ニートとは言え青年実業家。つまりは人を扱う立場の人間である。人の話を聞かない者をそのままにするなど言語道断なので、パン!と一つ柏手を打って注目を集めた。


「うおっ?! な、なんだあ?」

「なんだじゃありません! ゼツエイさん、依頼者の話はちゃんと聞いて下さい」

「ゼツエー、まじめにするだあ~」

「あ~悪い悪い。珍しい物を見てホブゴブリンの血が騒いじまったぜ。アンタがコノエナカヤさんだな? オレはホブゴブリンのゼツエイ・キグン。話はアーシェから聞いてるから何時でも村を出れるぜ!」


 おっと、正気を取り戻せば話の速い人みたいだ。何処か愛嬌のあるゴブリン顔でキリッとしたら、軽戦士風の装備も相まって如何にもファンタジー世界の傭兵らしく見える。

 しかし話の詰め合わせと依頼に対する手付は必要だろう。私はモンスター三人組にしばらく待ってもらえるように伝えて立ち上がると、車のカーゴルームから一抱えほどもあるプラスチック製の箱を三つ取り出して三人に手渡した。


「依頼金という訳ではありませんが、手付として御受取り下さい。正式な依頼料に関しては事が片付き次第に現物支給か、少々お時間を頂いての金銭払いをさせて頂きますので」

「わ、有難うございますコノエナカヤさん。あれ? ずいぶん変わった箱ですね。なんの素材だろ?……と、そうではなくて。コホン。コノエナカヤさん、依頼料の事なのですが、二人と話し合ったところ現物支給で構わないとの事です。護衛依頼と言う事で一人一日10000ゴルド。依頼終了までにかかった日数分を相応の価値がある物でお支払いください。……それでよろしいでしょうか?」

「構いません。物は依頼した仕事を終えられるまでに用意しますので、なにかご希望があればその時までに申し付けて下さい」


 良かった。とりあえずは交渉成立だ。10000ゴルドがどれほどの金額かは解らないが、流石に違法な金額は提示されていないだろう。後はこの世界で価値が有りそうな物、換金できそうな物を地球側から持って来れば依頼料に関しては問題ないはずだ。


「ではこちらから改めて依頼内容の確認をさせて頂きます。アーシェさんたちにお願いするのはコボルトの村に向かうまでの半日間と、ゴブリンの村から訪れる傭兵団が到着するまでのコボルトの村の警備です。警備の方は今追加された内容となりますがよろしいでしょうか?」

「ああん? おいおい兄ちゃん、いやコノエナカヤさんよ。警備に関しては問題ねえけどコボルトの村まで馬車を使って急いでも2、3日、普通に行きゃあ7日ほどかかるぜ。半日って寝ぼけてんのか?」

「ちょっとゼツエイさん、依頼主に対して口が過ぎますよ! ……でもコノエナカヤさん、私も半日は無理だと思いますけど、なにか方法があるのですか? 昨日、そして先ほどみたいに……」


 ――ぷるぷぷるる、ぷるぷるー!

 プルプルさんがこのゴブリンむかつくー!と怒っているが、ゼツエイさんの言う事は最もだろう。正直、口も態度も悪いのが私も気に障るが、風来坊の傭兵にそれを言っても仕方があるまい。私は取りあえずゼツエイさんにではなく、昨夕の地球への転移を目撃したせいか探るような目を向けてくるアーシェさんに説明する。


「移動時間は皆さんが今目にしているこれ、車があれば半日もかからずに移動できます。その辺りの事は口で説明しても理解しづらいでしょうから、早速これに乗り込んで移動しましょう。細やかな話は移動しながらと言う事で」

「はあん? ほー、へー、こりゃあやっぱり馬車かなんかかよ。へへっ、良いぜ。話は後でしようや!」

「もうゼツエイさん! 本当にすみません、コノエナカヤさん」

「あはは、取りあえずアーシェさんとクルオさんも行きましょうか」

「はーゼツエイはほんとしかたねえなあ。すまんこったなあ、ナカヤー」


 一足早く車に張り付いたゼツエイさんに続き、私はため息を吐くアーシェさんとクルオさんを促して立ち上がる。振り返って見れば扉の開け方が解らないゼツエイさんがウロチョロとしていた。まあ私が扉に鍵をかけているので当然だが。

 しかしそこで突然悪戯心が湧き立った私は、ゼツエイさんが運転席側の扉に近づいた所でキーレスセンサーのスイッチを入れた。


「うおわっ?! ななんだあ!?」

「ひゃっ?」

「うん?」


 ピピッと自然には決してない機械音と、ガチャッと扉の鍵が外れる重い音にゼツエイさんが驚いて跳び上がる。

 ククッ、悪戯成功。自分でも子供っぽいとは思うが、私はやられたらやりかえす人間なので少しスッキリとした。アーシェさんも一緒に驚いてしまったのは申し訳なく思うけれど。

 しかしそうなると小首を傾げただけのクルオさんは豪胆だな。何となく鈍いだけの気もするが。


「さ、行きましょうか」


 カーゴルームにアーシェさんたちが持ってきた結構な量の旅道具をカーゴルームに何とか乗せ、後部座席にゼツエイさんとクルオさん、助手席には申し訳ないがアーシェさんにプルプルを膝に抱かせて乗ってもらった。

 私が購入したオンオフ両用車がコンパクトな事もあるが、傭兵である三人が見つけている装備品もあって余裕が無かったせいである。

 特に体が大きくて頭が天井に着いているクルオさんの装備品、ドデカい棍棒や私が渡した箱もあってその横に座って居るゼツエイさんが若干狭苦しそうにしているが。私はちょこっと根に持つタイプなので見て見ぬふりをした。


    ◆


「わはははは! なんだこれ! なんだこれ!」

「馬車よりずっとはやい!!」

「あわわわ……」


 ゴブリンの村中に在る馬車道を経由して外に出てから少々の時間が過ぎ、私たちはコボルトの村に向けて草原を疾走していた。明るい声を上げるのは、窓を全開にして体を乗りだすゼツエイさんとアーシェさんである。

 当然と言うか何と言うか、結構な大きさがあるゴブリンの村から出る際には沢山の村人から好奇の目や声をかけられるなどちょっとした騒ぎもあったが、今それを気にしていても仕方が無いので気にしない事にした。

 魔法があったり化け物みたいな獣が居たりするんだから車の一つや二つ問題は無いよね? 無いと良いなあ……。


「ひええ~、は、はやいんだなあ~」


 おっと一人大きな体を縮ませるクルオさんにフォローが必要だな。興奮して車の事を聞いてこない他二人から質問攻めにされない内に話しかけておこう。


「クルオさん大丈夫ですか?」

「お、おお、だだだいじょうぶだあ~」


 ――ぷるぷるぷ……

 うん。大丈夫じゃ無いね。どうやらクルオさんは車の速度に慣れない様だ。此処は気を紛らわせる方向として……そう言えば手付で渡した物の説明をしていないな。丁度良い。


「クルオさん、さっき渡した箱を開けてみて下さい。少し出っ張ってる所にはまっている取っ掛かりを下から引っかけるようにすれば蓋が開きますから」

「ん、おお。……おう、あいた、あいたどー。しっかしかわったはこだなあ」


 プラスチック製の箱と言う恐らく異世界では珍しいであろう素材の箱にクルオさんが目を瞬かせ、大きな手でゴソゴソと中身を漁った。

 うん。どうやら予想通り気を紛らわせる事が出来た様だ。なにせそのプラスチック箱は緊急避難セット。それも私の会社と取引がある警備会社から貰った本格的な物で、地球人が見ても興味深い物なのだから。

 中身は栄養的にはと付くが一週間分の保存食と水に、毛布や少量の栄養剤や風邪薬に傷薬。そしてハンドライトや手回し式充電器にハンドスコップなどの道具も入っている。


「んお~? ナカヤ、これくいもんだよなぁ? どうやってくうんだぁ」


 そう言ってクルオさんが差しだして来るのは、私からすれば結構な大きさの缶詰だ。運転中なので横目でそれを確認すると、パンの絵が書かれている事を確認できた。


「パンの缶詰ですね。上下の平たい所のどちらかにプルタブ、指を引っかける所があるのでそれを一度起こしてから反対側に引っ張って下さい」

「これがパン? ……ん、おー。あいたあいた。おお、こりゃたしかにパンだ!」

「パンを包んでる油紙をめくって食べてみて下さい。けっこう美味しいですよ」


 オーガ、じゃなかった。オークのクルオさんは粗雑な見た目からは想像できないくらいに器用なようだ。私の一方的な説明を聞いただけで缶詰のプルタブをぶっとい指で器用に開け、大事そうな手つきで油紙をめくって中に入っていたパンを一口で食べた。

 おいおい。それ大人の一食分のパンだぞ。小さな子供なら一日かかって食べる量を一口かよ。


「んおお?! っんまあ! うんまいなあコレ!?」

「なんだなんだ! ビックリすんだろクルオ! つーかなに食べてんだお前?」

「きゃっ。どうしたんですかクルオさん」

「おめえ、おめえらもくってみるだあ! うんめえぞお!」


 クルオさん的には目が飛び出るほどに美味しかったのか、牙の生えた凶悪な顔を歪めてゼツエイさんとアーシェさんに緊急避難セットを開けるように促した。

 多分私たちの話を話半分程度には聞いていたのだろう、二人はほんの少々苦労しながらもプラスチックの箱を開け、急かすクルオさんに教えられて缶詰からパンを取り出してパクリと食べた。

 そして見開かれる目。二人は驚きの表情を浮かべながらガツガツとパンを貪った。


「うめえ! なんだこりゃ美味すぎる!」

「ふわあ、甘い美味しい甘い甘い」

「おれももういっこくうだ!」


 な、何事だ? ゼツエイさんはともかくアーシェさんまで一心不乱にパンを食べている。

 確かにその緊急避難セットはお高いだけあってパンの缶詰も良い物だし、保存食用に油を多く使用した味の濃い高カロリー食品ではあるが、そこまで夢中になるものなのだろうか?

 ひょっとしてこの世界と言うか、モンスターの社会では料理関係が未発達なのかもしれない。

 今思い起こせばコボルトさんたちも飢餓状態にあったとは言え走り回るほどに喜んでいたし、何より私をこの世界に連れて来てくれるプルプルさん自体も食べ物を理由に家の子になった訳だし。

 ――ぷるぷるー

 え、自分も何か食べたいと? プルプルさんや、君はほんの一時間と少し前に試に開けてみた緊急避難セットの中身を殆ど一人で食べたよね。

 ――ぷぷ!

 あーはいはい。それじゃあこれでも食べてなさい。今私は運転中で手が離せないからね。

 ――ぷるっぷー!

 私は食発(誤字ではない)されたプルプルさんに腰のポーチから取り出した携帯食料レーションを袋ごと渡した。

 するとプルプルは一つの袋に二つの小袋で収まっているそれを体内に取り込み、体の中で器用に、本当に器用に袋を開けて中身だけを残すと運転席と助手席の間のコンソールボードに吐き出した。

 こ、こいつ、ドンドン多芸になって行くな。

 ああ、何か今更だけど私は異世界で一体なにをやっているのだろうか? 想像では気軽にのんびり旅をする予定だったのに獣に襲われ飢餓状態のコボルトの村を発見し、救助を求めてゴブリンの村に向かえば化け物虎に襲われ、救われた先に辿り着いたゴブリンの村では三人のモンスターの傭兵を護衛に雇ってコボルト村にとんぼ返り。

 人生とはままならない物。それを身を持って知る私としても頭を抱える状況である。


「でもまあそれも良いか」


 ――ぷる?

 地球で突然意味も無くプルプルと出会ってほんの数日。わずかそれだけで波乱万丈の人生となった私は、それまでに感じた事の無い充足感を得ていた。


仲弥のモンスターメモ


ホブゴブリン(暫定)

普通のゴブリンよりも一回り大きくより人間に近い。でも顔つきなんかはまだまだモンスター。

未確認だがどうやら普通のゴブリンよりも内向きな性格で魔法が得意らしい……。しかしゼツエイはその正反対に見えるのはどうしてだろうか。

お約束と言うかゴブリンはモンスター社会最多数のモンスターだそうだ。


ハイオーク(超暫定)

他にオークを見た事が無いので比べようが無い。

取りあえず猪や豚のようなオークでは無く、古式ゆかしいいわゆるゴブリンと同存在的なオークのようだ。

その割には大人と子供以上に違う体の大きさや鬼のような顔つきなどかなりの相違があるのが不思議。


ゴブリナ

山岳に住まう女性だけの少数モンスター。一応ゴブリンであるがケモミミ以外は人間の女性にしか見えない。

身体能力と大地の精霊術に優れるシャーマンであり、総数は少ないが特異性と弱点の無い万能性でモンスターの中では中堅の存在だとか。

お年頃になると修業を兼ねて婿探しの旅に出るらしい。


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