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006 プルプルと地球の街でお買い物

ウイルスとまだ格闘中。大半は片付きましたけど、深い所にいる奴がコロ☆せないー。

なのでまた少し冗長な所が・・・。後で治せるといいけど。

「さてプルプルさん。これから車を買いに行くんだけど、どのくらいの大きさまでなら転移できるか私では判断できないので一緒に行きましょうか。はい、此処に入って」


 ――ぷるん? ぷるぷる……ぷるるん!

 そんな袋、リュックに入るのは嫌だとプルプルは言う。せっかく地球の街に出るのに外が見れなくなるのが嫌だそうだ。

 しかし、ほとんど人間に見えるゴブリナのアーシェさんと違ってスライムのプルプルは見た目が完全にアウト。人目に付かせるには余りにもナマモノすぎる。


「あ~と、それなら途中でペット用の携帯ケージを買うからそこまで我慢してもらえる?」


 ――ぷっぷ? ぷぷぷぷぷー!

 いやいやペット扱いはしてないでしょ? それが一番良い方法なんだから此処は一つたのんますよ。ほら、昨日買い出しのついでに買った特大バウムクーヘンあげるから。

 ――ぷるっぷー!

 プルプルさんはそう言うと、大きなバウムクーヘンの袋を剥がして……え?どうやって剥がしたの?!……丸呑みし、若干縦に長くなった体でリュックの中に入り込んだ。バウムクーヘンは時間をかけて食べるようだ……。


「ま、まあ良い。じゃあ行くか」


 カードの類が嫌いな私は金庫から札束を5つほど取り出してプルプルが入っているリュックの外ポケットに突っ込み、ズッシリと重いリュックを背負って呼んでおいたタクシーを待つため外に出た。

 自転車もあるけれど帰りは速払いした車で帰ってくる予定なのでまたもやタクシーである。

 タクシー嫌いなんだけどね。と、嫌いな物が多すぎる私はどんな車を買おうかと妄想した。


    ◆


「いらっしゃいませ」


 街に出た私は、普段から目をつけていたペット用品店に訪れていた。

 店名は“あにまるちゃんす”。小奇麗でこぢんまりとした店内には普通のペットショップと違って動物は一切おらず、代わりに多種多様なペット用品と広めの受付カウンターが置かれている。

 この店は写真や動画など見せてブリーダーとの仲介を行うと言う変わった業態をしていて、それが以前から私が目をつけていた理由だ。私もこう言った店を事業で興そうかと思って居たのでなおさら興味深い。


「なにかお探しですか?」


 そう言って柔和に微笑む女性店員が近づいてくる。現在の時刻が20時と遅いからか店内に客は居らず、丁度暇をしていたところに私が来たせいだろう。この店がそれなりに流行っているのを知っているので閑古鳥が鳴いているとは思わない。


「ええ、携帯ケージを」

「ポータブルケージですね。わんちゃんですか、ねこちゃんですか。それともうさぎさん?」


 スライムです。なんて言える訳も無い私は、微妙にモゾモゾしている背中のリュックの位置を治して犬ですと言った。プルプルは丸い、つまりは横にも幅が必要なので少し大きくらいが良いだろうとの判断である。

 因みに最後にうさぎと聞いてきたことにちょっとイラッとした。一人暮らしの男がウサギを飼う話は私も聞いた事があるが、どうしてそれを私に聞いたのか問いただしてみたいのを我慢する。


「素材はどうされます? プラスチック製のハードタイプとナイロン製のソフトタイプがありますよ」


 店員さんに見せられたケージを見て、私の考えが足らなかった事を思い知った。

 そうだよな。普通犬猫は縦に長いよな。だったらケージも長細くなるのは当然だ。

 プルプルは形を変えられるのでそれでもいいけど、少しでも楽な方が良いに決まっている。

 私は他になにかないのかキョロキョロと見回しながら店員さんに聞いてみる。


「あーええと、もっと横幅があるのはありませんか?」

「横幅……ケージではないですけど、このサークルと言うのではどうでしょうか?」


 コテンと可愛らしく(私的にはあざとく)小首を傾げた店員さんが折りたたみソフトケージの横の棚から同じような、それでいて一回り大きな物を取り出してきた。

 それを店員さんがテキパキと開いて大きくすると、出来上がったのは円形のテントを小型化したようなソフトケージだった。


「ああ、これこれ。これの中が見えないような奴ってあります?」

「ございますよー。はい、はいっとこれなんかどうですか」


 次に店員さんが組み立てたのは上が黒、土台が茶色のソフトケージだ。入り口やのぞき窓が目の細かい黒いメッシュになっていて、これなら外から中は見えないだろう。この手の物は皆そうなのだろうが、特に天上部分がチャックになっていて中のペットが取り出しやすくなっているのが良い。

 私はそれを即決で買うと、袋は不要と言って店を出た。後は道路から離れた裏手の道に入り、物陰で私の体を盾にして買ったばかりのソフトケージへとプルプルを移動させる。

 存外居心地が良いとプルプルさんはおっしゃっていた。さて、次はカーディーラーだ。時間も押しているし急ごう。


    ◆


「これはどう?」


 ――ぷるぷる

 ……駄目か。

 ペットショップよりも私の住処である廃ビルが存在する郊外に近い中古カーショップ。

 街中では無く郊外に近いからこそ商売っ気が適当なその店で、私はプルプルさん在住のソフトケージを持って広い敷地内の展示品を見て回っていた。

 商売っ気が無さ過ぎてライトが少なく、車の状態とか値段とか見難いのは狙ってやってるのだろうか?

 それはともかくとして私が探しているのはジープだ。なにせ異世界には、少なくとも私が知る場所には舗装された道路が無いのだから、車体が重く車高が低い普通自動車などは使えない。

 そうなれば自然と選ぶ車種は少なくなる。そこで私が目を付けたのがオフロード仕様のジープなのだが、ジープと言うのは基本デカいのでプルプルさんの転移の許容範囲を超えてしまうのだ。


「んお? これってジープ、だよな? しかもカッコいいぞ……」


 百台ほどもある中古車の間を移動していた私の目が一台の車で留まる。その車はパッと見では軽乗用車にも見えるのだが、車体が少々高く面構えも乗用車にしては厳つい。例えるのならジープを軽乗用車にしてみましたって感じだ。

 正直に言ってそれに一目惚れした私は、他の中古車とは違って確りと付けられている説明文やお高目の値段を見る。

 車名はフィ○ットのパンダクロスか。ふむふむ、オンオフ両用のコンパクトカーと私の希望に合った仕様だな。惜しむらくは体色が黄色なのと左ハンドルな所だけど、値段も300万ほどとジープに比べたら若干割安か。

 でも色がなー。こんな目立つ色だと変な、それこそあの黒い虎みたいなのが寄って来そうで怖いが……。


「プルプルさん、これならいける?」


 ――ぷる!

 行けるそうだ。なら決まりだな。とりあえず急ぎだしこれに決めて、後で塗りなおすのも良いか。

 今の時刻は既に21時前。店内から店員のオッサンが苛立たし気に見てるし、さっさとこれを買って帰ろう。

 私は店内に入って愛想の悪い店員に車を買うと言い、目の前に札束を4つ積み重ねてやった。

 もちろん言うまでも無くオッサンの不機嫌顔はニッコリだ。カードだとここまでの笑顔にはならない、やっぱり現ナマの威力は偉大だ。


    ◆


 翌日の朝。私は購入したばかりの車、フィアッ○・パンダクロスのカーゴルームに先日運びきれず放置していた食料品を詰め込んでいた。

 今回はガソリン携帯缶は必要ない。これはフルメーターで600キロほども走れるのでゴブリンの村とコボルトの村の往復も可能だ。

 最高時速も160キロ強。まあペーパードライバーの私は日本の道路の法定速度が精いっぱいであるが、非常時には大変心強い速度である。


「詰め込む物は……詰め込んだな。装備も良し」


 なおかつ今日の私は郊外の廃ビルに住んでいる手前、もちろん自分の私有地であるし柵も有り防犯対策もしているが、もしもの時の備えて死蔵していた各種防犯グッズを装備している。

 探検用の迷彩サバイバルウェアの上からケブラーボディアーマーを装着。もちろん手足も各種防刃製品で保護し、今日の靴は防弾防刃仕様のミリタリーブーツだ。

 腰のベルトには熊避けの唐辛子スプレーを二本と、利くかどうかは解らないが一応既製品のバトンスタンガンを差し、極めつけに刀匠が趣味で造った玉鋼製の兜割を腰後ろに鞘で収めている。

 ……後は好みでは無いがサバイバルナイフを一本、足のベルトに固定しているが。私は光物は嫌いなのでアウトドア以外の目的で使うつもりは無い。


「よし、行くか!」


 ――ぷるーん!

 運転席に乗り込んだ私は右の助手席に勇むプルプルを乗せ、エンジンは回さずにハンドルだけを掴んでプルプルにお願いする。


「ゴー! プルプル!」


 ――ぷぷぷぷ!

 ブルルルルッと何時もより多く震えているプルプルが転移を発動。一体どんな原理でそれを成しているかサッパリな超常現象が車の周囲を歪ませ、車が重いせいか何時もより時間をかけて異世界に転移した。


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