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005 ゴブリンの村と美しきゴブリナ

現在PCがウイルスに感染中。処理に時間がかかるので見直しをせずに投稿です。すこし冗長な言い回しになってるのはお見逃しくだされ~。

「……あ?」


 なんかゴワゴワする。それに腹が重たい。

 前振りも無しに突然覚醒した意識。あまりにもハッキリと目覚め過ぎたせいで逆に不快な感覚に襲われた私は、渇いた雑巾のように固くゴワゴワとしている物を被ってい寝ている事を理解した。

 なんで私はこんな汚い物を被って寝ているんだ?と掛け布団的なナニかを取り払って起き上がろうとしたが、腹に何か重い物が乗っかっているせいで起き上がれず、ポスンと背中を寝台に落とした。

 ――ぷるーん!


「ふぼぉわ?!」


 ちょ、苦しい窒息する。どうやら腹の重しはプルプルだったようだ。私がめくった掛け布団の中から気合の入った眉毛の草餅型スライムが飛び出て来て顔に張り付いた。

 にゅぷる~んと張り付いたプルプルを剥がし取り、上半身を寝台の上で起こす。

 ふむ。まったく見覚えの無い部屋だな。と如何にも西洋風ファンタジー物の安宿っぽい部屋を観察していると、部屋の扉を開いて誰かが入って来た。


「おきられましたか」

「え、ええ。お手間を……おかけ、した、よう……で」


 お、おおう。これはこれは。私は入室してきた少女を不躾にも凝視してしまった。

 艶のある灰色の髪と澄んだ緑色の瞳。健康的な濃い褐色の肌が十台前半に見える少女を活発に見せているが、幼い顔は柔和でお淑やかな印象が強い。

 これだけを上げれば異国情緒あふれる美少女ですむ話で、ニート(青年実業家)らしく3次元の女性に興味の薄い私が見惚れたりはしないのだが、人と同じ場所に在る大きな耳は獣に似た物で、少女の愛らしさをより際立たせているそれに私の興味は深々だった。


「あ、あの、人間さん?」

「あ、ああ失礼」


 おっといかんいかん。明らかに一回りも違う女の子を凝視するなんて社会人としてあるまじき行為だ。紳士を自称する私とて例外ではないのだ。

 そうして自分を取り戻した私は少々曖昧気味な微笑みを少女へと向け、思考を高速回転させて現状を確認した。

 もちろん最初に思い出すのはあの黒い虎だ。思考はハッキリと目覚めているのでクッキリと思い出せる。ジープを破壊されて絶体絶命になった所で緑色の小人たちによって救われた事を。

 ……あれ? そう言えば怪我をしていたはずだが……。私は寝台の上に起こしている上半身を目と手で確認する。

 今日は探検用に買った迷彩柄の長袖探検服を着ていたのだが、肩口が大きく切り裂かれて破れているだけで肝心の傷が無い。しかし服の切り裂かれた周辺は渇いた血で赤黒く染まっている。


「いつっ?!」


 あたたた。怪我をしていた左肩を動かそうとしたらなんか引きつった感じがする。筋肉痛とも違うもっと固い感じの痛みだ。

 やっぱり怪我をしてるんだよなあと私が傷口が無い左肩を見ると、褐色肌の少女が寝台の縁に腰を下ろして私の左肩に手をあてた。


「じっとしててください。今、癒しますから」

「は、はい」


 う、うぐう。ニート(青年実業家)に美少女のボデータッチは敷居が高すぎる。なんて私が見当違いな事を考えている合間に、褐色肌の少女がブツブツと言い始める。


「大いなる大地の母よ、豊穣の息吹を一握りの癒しの力に変え、傷つきしこの者を治したまえ」

「うくっ?!」


 肩に置かれた少女の手がほんのりと発光する。その手の平から肩の中へと熱が伝わってくると、ズグンと痛みと疼きを与えた。

 しかしそれが数秒続くと痛みも疼きも収まっていく。やがて少女が手を放す頃にもなると、痛みも疼きも完全に消えていた。

 褐色肌の少女は腰かけていた寝台から立ち上がり、回復魔法ですかーそうですかーと呆けている私の髪を掻き分ける。


「頭の傷はもう癒す必要は無さそうですね。肩の傷は深かったのでしばらく違和感が残るでしょうが、無理をせず安静にしていれば2、3日で完治しますからね」

「ありがとうございます、御嬢さん。申し遅れましたが私は近衛仲弥、……旅人?です」


 正直よく解らないが、此処が異世界と言う事は回復魔法がアレでコレして私の傷がソーなったのだろう。そしてこの少女が治癒魔法使い?とかそんな感じで私を癒してくれたのだろうと判断して頭を下げた。

 旅人に?がついているのは完全に口からのでまかせと言うか、まあ決して嘘ではないので仮の身分として口にした。


「いえ、辺境では助け合うのが当然の事。特に貴方の様に見ず知らずのコボルトを助けようとされる心ある御方ならばなおさらのことです。私はゴブリナのアーシェ、非力ながらも傭兵をしております」

「っと、そうでした。失礼、私と一緒にコボルトが一人いたと思うのですがご存知ですか?」


 馬鹿野郎。肝心な事を忘れて女の子に見惚れてんなよ。ぶっ飛ばすぞ、自分。

 しかしゴブリナって近代に創られたある意味最も新しいモンスターだよな。ゴブリンの派生らしいけど、そんな新しいモンスターが異世界に居るとは驚きである。

 ……いや、化け物(モンスター)と言う呼称は失礼か? この辺りはもう少しこの世界を知らないと解らないな。


「はい、お話はタロ、コノエナカヤ様がお連れになっていたコボルトの者から聞いております。その者は援助物資を持った傭兵12名と共にコボルトの村に向かっておりますので、コノエナカヤ様はここでゆっくりと体をお安め下さい」

「そうですか、よかった。続けての質問で恐縮ですが、私が此処に運び込まれてどれ程の時間が経ちましたでしょうか」

「時間?……ええとそうですね。コノエナカヤ様をお連れした時は太陽が傾いた頃でしたけど、今は日が完全に落ちる少し前ですよ」


 ……時間の感覚が随分微妙だな。しかしまあ良かった。一日も経っていないようだ。それを確認した私はズボンのポケットに手を突っ込んで懐中時計を取り出し、針が18時30分ほどである事を確認した。懐中時計だと日数までは解らないからないから先に時間を聞いたのだが、黒い虎に襲われたのが13時ごろだったのでおおよそ5時間ほど気を失っていた事になる。

 流石異世界。5時間も気を失うなんて初めての経験だっての。

 私はポケットに懐中時計を戻すと、大きな目を興味深げにクリクリさせていたアーシェさんに改めて礼を言い、寝台の下に置かれていた私のサバイバルブーツを履く。


「本当に助かりました。申し訳ありませんが今手持ちがありませんのでお礼は後日お支払いたします。私はこれから家に戻ってコボルトの村に行く用意をしてきますので」

「えっ?! 駄目ですよコノエナカヤさん! 今日一日は安静にしてください! 回復魔法も万能じゃないのですから、無理をすれば後遺症が残ってしまいます! それに家に戻ると言っても、もう夜が近いですよ!」


 アーシェさんが困った顔で言って来るが、別に激しい運動をする訳では無いので曖昧な笑みで誤魔化す。地球の家の事もあるしなおさらだ。私はあの黒い虎に買ったばかりのバギーを壊されてしまったので新しい足を買いに行かなければならないのだ。

 ちくしょー! あのクソタイガーめ! 20万もしたバギーが3日でオジャンとかふざけんじゃねえぞおおお!!

 しかし、新しい足を用意してもまた襲われたらシャレにならないな。今度は“車”を買うとして……ふむ、傭兵か。

 私はプルプルを抱き上げた所で、主に私のせいで困った顔をしているアーシェさんを見た。

 愛らしい少女が困った顔をしているのは御馳走で……コホン、そうじゃない。


「アーシェさんって傭兵って言ってましたよね? 今フリー、手は空いていますか?」

「えっ? いえ、私も旅人で長期などの仕事は請け負っていませんから、空いていると言えば空いてます……」

「ならアーシェさん。明日コボルトの村に戻る私の護衛をお願いしたい。生憎今は金銭を所持していないので報酬は現物支給か少し待って貰う事になってしまいますが、できれば後2人ほど紹介いただけると助かるのですが……流石に無理ですかね?」

「え、ええ。私も後続で向かう予定でしたので構いませんよ。報酬は非常事態ですから後払いでも構いませんし、辺境では現物支給の方がありがたい事もありますので紹介も出来ると思いますけど……」


 よし!コボルトと違って言葉の通じる美少女、じゃない傭兵ゲット。もうケダモノに捕まってやるつもりは無いが、もしもの時は逃げるための知恵を借りられるだろう。

 うん、見た所私の荷物はプルプルだけのようだ。リュックなんかは途中で放り投げたしバギーは壊れたしな。私はプルプルを抱いたまま部屋を出ると、後から心配気についてくるアーシェさんに再度明日の事をお願いしてから病院、と言うか寄合所みたいな家を出る。

 そして立ち止まった。


「ご、ゴブリンだらけだな、プルプル」


 ――ぷるるん

 そうですよね、当たり前ですよね。気を失っている間に運び込まれたから解らないけど、多分ゴブリンの村ですものね。

 外に出た私が見たのは村の中を行き交う大勢のゴブリンたちだ。見た目からして西部の開拓村っぽいコボルトの村とは違いゴブリンの村はそれなりに大きく、町と言っても差し障りの無い文化的な造りであった。

 聞こえてくる喧噪は少し甲高い独特の声で、あの黒い虎に襲われた時に聞こえた声はゴブリンの物であったと今更ながらに気づいた。

 歩いているゴブリンたちは農民風や村人風、そして狩人や戦士風と言った多種多様な格好をしている。中にはゴブリン以外のモンスターも混じっているが、今はそれを気にする暇は無い。

 私は出てきた寄合所の後ろへと回り、人気が無いのと十分な広さの空き地がある事を確認してプルプルと共に地球に戻った。

 その途中、私を気にして追ってきたアーシェさんが転移する私たちを見て驚いた顔をしていたが、気にしない気にしない。

 なにせ明日はもっと驚かせる事になるのだから。あんなに危険な目にあっても、私がこんなに素敵な異世界に来なくなると言う選択肢は無い。ならばやる事は一つ。車を買いにカーディーラーに直行である。


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