第3話:入学・・・?
暫く入学編が続くかも知れません。
アレから1週間が経った。
昨日の晩、鏡夜から『入学手続きがほぼすべて終了した。あとは君が来るだけだよ。』と連絡があった。
そして翌日。俺はここに来てから日課になっているランニングをするために、日の出とともに起きた。
今俺は、ジャージに着替え、寮の前で準備運動をしている所だ。
「んっ、んーーー………よしっいくか!」
俺は準備運動を終わらせ、走り始めた。
・・・・・・・・
今俺は、この大和皇国鎖環連合東京本部附属高校(俗称:黒軍本部附属など)の敷地内を走っている。
この高校は日本で一、二を争うほどのマンモス校らしく、その分敷地面積も大きく、施設も多い。
で、俺はそんな学校の施設等の場所を、フリーランニングで走ってるわけだ。
俺が走り始めて少し経った頃、2階の渡り廊下に鏡夜の姿を見掛けた。
(……こんな朝早くに、一体どうしたんだ?)
なんて軽いことを考えつつ、1階の渡り廊下の壁を蹴り、2階の渡り廊下、鏡夜の歩く先の窓に飛び乗った。
「よっ、おはよーさん。」
と挨拶をかましたら、
「……ハァ……………荊君……なんて所から挨拶しているんだ、君は。せめて窓から降りてからにしろ。」
と返された。
「ハハッ、わりぃわりぃ。よっ、と!」
窓の格子から廊下へと飛び降りた俺は、鏡夜の方に向き直り話を切り出す。
「んで?なにやってんの?こんな朝早くに。」
「あぁ、それは……ふむ。同行させた方が早いか………君。一緒に来てくれ。」
「へ?あぁ、まぁ特に予定もないからいいけど……」
俺達二人は、そこからもう暫く歩き、他の教室とは一回りほど大きい扉の前に立った。
(第三作戦室……?なんで俺をこんな所に……)
鏡夜はその扉の横に一人向かった。
『登録ドッグタグノ提示、及ビ声門認証ヲ行ッテ下サイ。』
という音声とともに、その扉のスキャン用パネルが開いた。
鏡夜は自分の首からドッグタグを取り出しスキャンし、一言。
「司令部三年、御劔鏡夜准尉だ。」
その声と共に、ピー、という機械音と共に、ガシャン、と鍵が開く音がした。
俺はそれを見ながら感心した。
俺の方の世界ではここまでのセキュリティはあまり無かったのに、こっちでは随分と普及しているんだな、と。
「行くぞ、荊君。」
そう言いながら、鏡夜は第三作戦室の中へと入って行った。
「………………」
俺はその扉の、いや、その部屋の中から発せられる威圧感のような物に、少し圧倒されつつも、覚悟を決めて入っていった。
部屋に入って、まず最初に口を開いたのは、鏡夜だった。
「皆、待たせたな。今日の議題の彼を連れてきた。」
「は?議題の彼?……誰が?」
「君が。」
「………俺が来れば終わり、だったんじゃ……?」
「あぁ、そうだよ?あとは、君が来て、君が直接やらなければいけない事しか残っていない。」
(っそだろマジかよ……!!それが何か次第じゃ俺詰むぞ……!?)
そう俺が焦っている最中にも、ブリーフィングは進んでいた。
「で、なんだっけ?コイツの性能がわっかんねぇから、クラス振りができねぇって話だったか?」
と、椅子に座って前後に揺らしている、黒髪の前髪がひと房だけ蒼く、燃えるような緋色の眼を持ち、右眼に眼帯をした青年が言った。
「クラス振りができない……?」
「あぁ、説明してなかったね。」
鏡夜が補足を入れてくれる。
「君のクラスが決まらない理由は、彼が先程言った通り、君の向いているもの、出来ることがわからないという点が上がってるんだよ。」
「ほぉ……なるほど。」
「で、それを見極めるために、君に試験を受けてもらおうって話だったんだ。」
「はぁ。」
「それで、今日はここに各分野のエキスパート達に集まってもらった。」
「……つまり?」
嫌な予感がする。
物凄く、面倒くさい予感が……
「今日一日を使って、ここにいる八人のエキスパート達に君の適性を全て調べ上げて貰おうと思っている。……是非とも、頑張ってくれたまへよ?」
「……今日一日で?」
「今日一日で。」
「…………マジで?」
「マジで。」
コイツ、いい笑顔でサラリと言い放ちやがったァァァーーー!!
今ここに何人集まってると思ってやがる!?八人だぞ八人!!
一人に何時間かかるかもわかりゃしねぇのに!!
それを一日でだァ!?馬鹿じゃねーのかお前ェ!?
イケメンスマイルしてれば済むと思ってんのか!?
ンなわけねぇだろダァホぉ!!!(泣)
………という言葉を全て飲み込んで、先ずは聞いてみる事にした。
「…………出来なかった場合は?」
「ふふっ……勿論、入学は延期、もしくは無しだ。」
「……………………」
絶句した。
(なんつー無茶振りだよ……)
だが、ここに入れなければ行く宛もなく、金もほとんど無いような身の上だ。
戸籍もない。今の俺は何も無いのだ。
(…………だったら、腹括るしかねぇか……)
「……わかった。今日中に終わらせる。皆さん。ご協力、よろしくお願い致します。」
俺は集まっている皆に頭を下げた。
「………コイツぁ驚いたな。お前みてーな奴が、簡単に頭を下げるとはな。」
とは、先程の眼帯の青年から。
「いえ、下げるべき時には下げますよ。」
と、俺は頭を上げつつ半笑いで答える。
「では、決まりだな。まずは狩宮、頼む。」
「うぃーっす、頼まれた。」
と、青年が「よっ、と」と座っていた椅子を飛び越えて、俺の目の前へと来た。
「俺は狩宮 灯姫。とりあえずヨロシク。」
「ハイ、よろしくお願いします。」
「俺は、一応一般部隊の部隊長を任されている。あぁ、一般部隊ってぇのはそのまんま、一番一般的な戦闘部隊だ。」
「ほぉ……」
(確か、部隊は全部で九つあったな……)
白黒両方の学校では、部隊は、戦闘部隊の一般部隊、騎馬兵団、救護班、暗殺部隊、通信部隊、情報収集部隊。内部の司令部、諜報部、そして雑務部の計九つに分かれている。
そして、今ここには雑務部以外の、学校内でも相当の発言権を持つ、部のトップ達が揃っている。
「まぁ、そんな俺がお前をどう試験するか。もう、わかるよな?」
そう言いながら彼──灯姫は、ニヤリと笑った。
「……戦闘力、ですか?」
「そう、単純な戦闘力。俺はお前のそれを測ることになった。」
その言葉が発せられた瞬間、俺はいつでも動けるように身構えた、身構えてしまった。
彼の雰囲気がそうさせたのだ。
彼が発する雰囲気はまさしく──戦闘狂の、それだった。
「──っつっても、まだお前の武器すらもまだわっかんねぇしなぁ……」
彼は頭の後ろをボリボリと掻き、剣呑な雰囲気を雲散させた。
「武器が、わかる……?」
「……?お前、もしかして、武器は自分で選ぶもの、なんて考えてんのか?」
「………違うんですか?」
「ククッ……アッハハ!!ホンットになんにも知らねぇんだなぁ!?」
笑われた!?
「いいか?武器ってのは選ぶもんじゃねぇ………選ばれるもんだ(・・・・・・・)。」
「選ばれる……?まるで、武器に意思があるような言い方ですね。」
「まぁ、あながち間違いじゃあねぇかもな。その表現は。」
………間違いじゃ、無い……?
「とりあえず、移動しながら教えるわ。時間勿体ねぇし。」
と言われ、彼と俺は連れ立って作戦室から出て行った。