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妖獣使いとは突然に

第2話でございます。

今回も読んでいただけたら幸いです

第二話

~妖獣使いは突然に~


「ふぅ……案外人間界のお茶もいけるわね」

人の家で呑気にお茶を飲む赤毛でロングの幼女。決して誘拐してきた訳ではない。むしろ進んで俺の家に来たぐらいだ

「改めて紹介するわ。私の名前は《ビエラ・トレイフス》17歳。趣味は長いものを振り回す事。好きな食べ物は麺類全般。ただし蕎麦は嫌い。嫌いな食べ物はない。けど、蕎麦は嫌い。将来の夢は最強の霊獣使いになることよ。以上だわ」

淡々と自己紹介をするビエラ。歳は偶然なのか俺と同じで驚いたが、その割には体型が幼稚すぎる

「さぁ、私は自己紹介したからあんたもしなさい」

どうしてそんなに偉そうに言われなくちゃいけないのか

俺はそんな疑問を抱きながらだるそうに話す

「俺は《神谷 翔介》趣味も特技も将来の夢も特にない」

「短っ!なにその自己紹介!真面目に教えなさいよ!」

机をバンバンと叩くビエラ

「そう怒るな。1日だけ泊めてやるんだからそんなに詳しく知らなくてもいいだろう?」

妙に親しくなると別れ際に駄々をこねられるのは厄介だしな。それにこの幼女とは、なるべく早くおさらばしたい

「ぐぬぬ、まぁいいわ!どうせ今日だけだしね!」

そう言うと机を叩くのを辞めて頬を膨らますビエラ。普通に可愛い

「唐突だけど翔介、あんた《霊獣》って知ってる?」

「いや?聞いたことないが?」

いきなり呼び捨てかよ と心の中で突っ込みつつ俺はビエラにそう告げた

「えっと、霊獣 別名:神獣 は瑞祥とされる神聖・霊妙な獣の事。まぁ、神様の獣みたいな感じかしらね……」

「ちょっと待てビエラ」

「何よ?まだ話終わってないんだけど?」

「真面目に話してるところ申し訳無いんだが、一体お前は何を言ってるんだ?」

「何って、私の自己紹介よ?翔介もさっきの《燃える鳥》の事が気になってると思って?」

「それは気にはなっていたが……」

確かに知りたかったのは事実だ。けど、この話を聞いて得でもあるのか?


「話を聞くだけはタダよ。それで、さっきの火の鳥は私の霊獣なの。名前は《ガルダ》。インド神話に出てくる霊獣で種族は神鳥……って言っても、分かんないよね?」

「まぁ…な」

そして俺は一つの不審感を持つ

「それじゃあ、どうしてお前はここにいるんだ?そんなにすごい力なんて、こんな所になんて使わないだろ?」

俺がその質問を投げかけると、ビエラはほぼ無いに近い胸を張りながら自慢げにこう言った

「よくぞ聞いてくれましたよ、神谷 翔介!霊獣使いの私がここにいる理由はそう!人間界にいる妖怪を人間達から守り、そして!その妖怪達から出てくる経験値を集めて強くなるために来たのよ!!」

ビエラは寒々しい天井に槍を掲げながら鼻息をもらす。

「いや、何の自慢だよ!!」

「え!?すごくない?妖怪倒して経験値集めたら強くなれるんだよ!その中でも私ビエラ様は霊獣使いの中でも三本の指に入る名家の一族で……」

「知らねぇよ!名家だろうが何だろうが俺からしたら分かんねぇよ!」

「それはそうね……ごめんごめん」

テヘッと頭をコツりと叩くビエラ


俺はそれにイラッとして強いげんこつをビエラに喰らわせる


「痛っ!!な、なにひゅるのよ!!」

動揺して噛んだビエラ。俺はそのまま親指を立てて

「ビエラげんこつとはこういうものだ。自分で叩くのではない人が叩く事がげんこつの役割だ!」

「あんたなに訳分からない事言ってるのよ!!」

「そう!それが今の俺の気持ちだよ!」

「なによ……それ……」

頭を撫でながらシュンとするビエラはどこか可愛げのある顔をしていたが、今の俺はそんな萌にめげること無い強い心を持っていた

「とりあえずね、私は妖怪を始末しながらも経験値を集めて自分の技を習得・強化が目的なのよ。強くなるためにこの世界に来ただけなのよ?」

涙目で言われると流石に良心が傷つく。

俺は親指を立てるのをやめて真っ直ぐビエラの目を見た

「なぁビエラ、経験値集めて何をするんだ?この世界を征服する気なのか?」

「こんな1晩あったら征服出来るような世界はいらないわ。経験値を集めてる理由は……ま、時が来たら話すわ。今言った所で信用してくれなさそうだし」

実際の所、霊獣を生で見ても俺はあまり信じてはいない。霊獣と言う言葉を初めて知ったようなものだしな。

「そこで、翔介には私の経験値集めのお手伝いしてもらうから!」

満面の笑みでとても過酷な事を発するビエラ。少し頭を強く叩き過ぎたのかもしれない

「は?俺も手伝うの!?」

「当たり前じゃないの、私はあんたの命の恩人だし」

「待て待て待て待て!!俺は紛れもない一般人で普通の高校生!そんな俺に生死を分けた対決に参加しろと!?冗談にも程があるぞ鬼畜幼女!」

「鬼畜幼女ってなによ!別に妖怪と対決まで参加させないわよ。足でまといになるだけだからね」

「それじゃ、何を手伝うんだ……?」

「えっと……それはね……」

もじもじとして顔を赤くほんのり染めるビエラ。可愛いが、なんだかイラッとする。

「ただね、私が妖怪との対決から帰ってきたときに、疲れた体を癒して欲しいなぁって」

「断る!!」


俺は命の恩人とも言える幼女を押し入れに入れてやった


「ちょっと!なんで押入れに入れる訳!?出しなさいよ!」

がたがたと震える押し入れの戸を必死で抑える。歳は同じとはいえ力の差は一目瞭然だ。1人ぐらい抑える事なんてたやすい

「絶対出すか!お前みたいなのはこうするのが一番だ!ただでさえ俺のこの部屋に泊めるのでも嫌なのにお前が帰ってきてなんで癒さなきゃならんのだ!俺はメイドか!」

そう言い放つと突然中から動きが止まる

「どうした?なんか言わねぇか?」

「…………」

音が聞こえない。押入れの中で大声だしたから窒息仕掛けてるのか?それか油断させて開けさせるのが目的か?まぁその手には乗らない。だが気になったので、そっと戸に耳を当てた

「…………」

耳を澄ませても吐息1つ聞こえない。俺は戸に耳を当てたまま襖に手をかけて開けようとすると

「――実力行使!」

「ひぃいいいいっ!!」

俺の鼻頭ギリギリに槍が襖を貫いて出てきた。そのまま襖を蹴破りビエラは出てきて

「こうなったら実力行使よ!あんたがひれ伏すまで私は槍を振り回す!」

「やめろ!こんな狭い部屋で槍を振り回すな!!」

「うるさい!いいから私にひれ伏しなさーー」

その直後、ビエラの槍が吊るしてあった電気を根本から切りそのままビエラの頭上に落ちる

「いたぁい……げんこつと……同じところ当たった……」

頭を抑えながらかがみ込む

「こんな狭い部屋で槍を振り回すからだ」

「な、なんでこの電気は最新式じゃないのよ!」

「俺に言うなよ。大家じゃないんだからさ」

俺はそういいながらスタンドライトを照らす。こっちはLEDだからこれだけでも部屋は充分明るい

「まぁ、恨むんなら実力行使をしようとした自分を恨むんだな」

一向に動かないビエラ。それほど痛かったのだろう

「だって……今日だけ泊めて貰っても……明日から私……どこで生活したらいいか……分からないから……」

そう言うとLEDの光に反射しながら水滴が滴り落ちていく

流石に俺も、強情だと反省した。

「まぁ……俺も悪かったよ……。色々強く言いすぎた…。お、俺の家で良ければ……しばらくいてもいいから……な?」

「…………」

「お、おい……流石になんか言えよ?」

俺はそう言った、するとビエラは

「ふひひひひひひっ」

君の悪い奇声を上げていた。この時俺は思った


ハメられた


「ありがとう、神谷 翔介君!これからよろしくね!」

すると彼女は再び満面の笑みを見せる

「お、おう……よろしく」

俺はその笑顔の前にしてそれしか言えなかった



眠い


なんだかんだで昨日は三時に寝てしまった。俺は寝ずに学校へと足を進める。ビエラには部屋で暴れる事を禁止し、外に出る時は周りの目に気おつけろと口うるさく言った

「ふぁあああああ」

朝の通学路。上ヶ丘の生徒だけが通る道。だが人が少ない。それは何故か

「完全に遅刻だな」

遠くの方ではおそらく高校であろう一時間目開始のチャイムが鳴って、俺以外は誰もいなかった。俺はゆっくり学校へと進んでいく。

「えっとら神谷さん……ですか?」

すると、後ろから男の声がした。振り返ると同じ制服は着ていたものの見知らぬ顔だった。一年生か?

「誰だ?お前?」

「僕は今日から上ヶ丘に転校してきたんです」

転校生と名乗る少年は爽やかな笑顔を見せる

「転校初日に遅刻なんて大丈夫なのか?」

「ここに来てまだ日が浅くてですね、もう道に迷ってしまいましてね」

そう言うと微笑みかけて話す。俺は結構人柄の良い男だなと思った。女子にも人気がありそうだ。

「俺も学校に行くところだよ。ついてこいよ」

「ありがとうございます!助かります」

そう言うと再び歩みを進めていく。男はニコニコと暖かい表情をしながら着いてくる。

「そういえば、神谷さんは部活とか入ってますか?」

唐突な質問を飛ばしてくる。

「帰宅部だよ。放課後の自由な時間に体動かしたくはないからな」

「そうなんですね、僕は前の高校で剣道やってましてね……」

そう言って俺の後ろで声の大きな独り言のように喋っている。正直うるさい上興味もないのだがまぁいい暇つぶしにはなる。

「…それでね、なんと県大会で優勝したんですよ!神谷さん!すごくないですか!」

「確かにすごいな、なぁ所でさぁ」

「なんです?」

「どうして、俺の名前知ってるんだ?」

「うぇっ!?」

俺はこいつに会ってから自己紹介していないからな。名前を知ってるのは普通に怪しい

「その様子怪しいな?誰かに頼まれて俺に接触しているのか?」

「な、何を言ってるんですかぁ……困るなぁ神谷さんは……」

俺は相手をじっと見つめた。相手は汗を流していたが、その汗は一瞬にして氷ついていたのを確認した

「冗談だよ、ほらハンカチ」

「あ、ありがとうございます」

そう言うと少年は汗を拭く仕草をした。しかし、汗は氷ついているので吸い付いてなくその場にとどまっていた

「ねぇ、汗とれてないよ?」

「えっ!?あ、あれれ〜どうしてかな〜」

わざとらしい

俺は確実にこいつは「妖怪」だと思った。恐らくものを凍らす妖怪なんだろう

それが分かっているのに、その時の俺はとても落ち着いていて恐怖心も何もなかった

「もう、正体明かしたら?」

「う、うるせぇんだよ!ーー」

突然の怒鳴り声、それが響くと同時に周りの物がパキパキと音を立てて凍りはじめ

「はぁはぁはぁ……人間風情が……舐めた口聞かやがって!!」

「おいおい、いきなり怒ることはないだろ?」

「黙れ!ぶっ殺してやる……貴様だけは確実にな!」

本当に人が変わったかのように怒鳴り散らしては相手の背後から何か蛇のようなものが出てきて

「お、おい……なんだよそれ……」

「怖気づいたか人間が!出てこい!《妖獣:氷龍》よ!!」

「よ、妖獣?」

相手からひんやりとした空気が流れ込む。

温度差のせいなのか、少し霧が出てきて視界が狭くなり

「そうだよ!俺には妖獣が使える!妖怪よりも強く!霊獣使いと対等の力を持つ妖獣がな!」

霧の向こうから声がするが、相手の様子が全くわからない。すると霧の向こうから赤く光る何かが視界に入り

「見よ!これが俺の妖獣だ!」

相手が叫ぶと一瞬にして霧が風により晴れた

「なっ……《氷の龍》!?」

「そう、これが俺の妖獣:氷龍だ。あらゆる物体を凍らせるだけではなく、氷を自由自在に形成できる。その上溶けにくく、触ると瞬間冷凍だ。どうだ!これでも俺に勝負を挑むか!?」

正直、ここに来て恐怖心が来て今すぐ逃げ出したいのです

「や、やってやるぜ!」

だが俺は、その場の流れで上着をを脱ぎ捨てて勝負を挑んだ

「ふっ、その覚悟だけは認めてやろう。だが、死ぬのは確実だがな?」

俺はその言葉に寒気が起きた

これがあいつの能力か!?

多分違うと思うがと、自分の心の中で変な葛藤をして

「やってやるよ、来いよ妖獣使い!」

俺は近くに立ててあった木製の看板を引き抜いた

「よかろう……《氷刀》(ひょうとう)」

相手の手のひらに日本刀サイズの刀が現れる

「うぇっ!?まじで!!」

思わず声が出てしまった

「いくぞ!神谷 翔介!!」

こ、こうなったら……

「逃げる!!」


第二話 〜妖獣使いは突然に〜

どうでしたか?

楽しんでいただけたら幸いです

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