星空の出会い
試しに書いてみたので読んでください
僕は星が好きだ。僕が暗くてもいつもキラキラと光っているから。今もそうだ。僕はまるで宝石を散りばめたような夜空を見上げる。
綺麗だ、その言葉だけが頭に浮かぶ。
多分彼女も同じことを思うだろう。そう、彼女もこれを見ていたら、きっとそう思っただろう。この澱みのない星空を見ていれば。
彼女と会ったのはほんの偶然だった。僕は昔から星が大好きで両親とよく見に行った。父はよく星を見る前に酔いつぶれていました。だから僕はほとんど母と星を見ていた。あれは白鳥座、あれは琴座、あれはさそり座、と知っているかぎりの星座の名前を叫ぶ。母はそんな僕をみてよく微笑んでいた。だから僕は母が大好きだった。
そんな母が死んだのは、僕が中学に上がってからだった。母は僕が欲しがっていた望遠鏡を買いに行った帰り、居眠り運転のトラックにひかれたんだ。母は見つかった時、その望遠鏡を大事そうに抱えていたという。
霊安室で冷たくなった母を見た僕はなんとも言えない気持ちを覚えた。暗くて、まるで胸に大きな穴がぽっかり空いたような、そんな気持ちに僕はなった。
それからの僕はまるで絵に描いたように落ち込んでいた。誰かに声を掛けられても、上の空だった。そして学校が終わると、いつも近くの河川敷に来て川を見ていた。そして僕は川に映る自分の顔を見る。とにかく暗い顔をしていた。そして思う。
何で僕はあの望遠鏡が欲しかったんだろう。
あれを欲しがらなければ、僕が欲しがらなければ、僕が星を好きでなかったら、母は死なずに済んだのに。
家に帰ると、父が居間にいた。父は僕におかえり、と笑いかけてくる。だが僕にとってそれはヘドが出るほど嫌だった。母が死んだってのに、何で笑っていられるんだよ。だから僕はいつもそれを無視してきた。
部屋に戻った僕は、かばんを放り出しベッドに制服のままで寝転がった。そして目をつむって思う。
僕がいなければ、母は死なずに済んだんだ。
どれぐらいの時間が経ったろう。目を覚ますともう外は暗くなっていた。
そして目を覚ました僕の頭の中ではある言葉が回っていた。
死んだらよかった死んだらよかった死んだら死んだら死んだら死んだら死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねシネシネシネシネシネシネ
僕はそのまま家を飛び出した。その言葉を振り切るように。
気づくとそこは家族で一緒に星を見に行った場所だった。今日の空はあの時と同じように綺麗な星たちが輝いていた。そして僕は一歩、また一歩と目の前の崖へと進んでいく。その間にも頭の中では言葉が飛び交う。そして思う。
ここから飛び降りたら、楽になるかな?
そうして僕は手すりに手をかけた。
その時、誰かが僕を後ろに引っ張り込んだ。
見るとそれは僕と同い年くらいの女の子だった。その子は僕に向かって叫んでいた。
ダメだよ、そんなことしちゃ!
すると僕の胸から何かがせり上がってきた。僕はそれに耐えきれず、泣いてしまった。
それから僕はその子と少し話をした。彼女はこの近くに住んでいて、あそこにいたのはたまたまだという。
そして僕はなぜ飛び降りようとしたのかと聞かれた。僕は母の事を彼女に話した。自分のせいで死んだことも。話し終わると僕は少し身構えた。罵倒されるのではないかと、そう思ったからだ。しかし彼女は僕に笑いかけて、そんなことないよと言った。
そしてその後の言葉を僕は今でも忘れない。
だってそんなことしたらお母さんもお父さんも悲しむよ
僕はそれを聞いて、また泣いた。
どこか懐かしくて、優しいその言葉に。暗かった心を洗い流すように。
それから僕たちはちょくちょく会うようになった。彼女と話しているとどこか救われた。
ある日彼女が空を指差して、あの星は何かと、聞いてきた。僕は、あれはいて座だねと答えた。彼女は納得したように頷いた。
それから僕は明るくなった。そんな僕を見た同級生や父さんは安心したように僕に話しかけてきたりしていた。前みたいな事はなくなり、毎日が充実していった。
ある日、いつものように彼女と話していると、彼女は涙を浮かべて言った。
私、明日引っ越すんだ。
僕は、なんでと聞いた。彼女が言うには父親の仕事の関係で、アメリカに行かなければならなくなったらしい。
僕は彼女にハンカチを渡した。彼女はそれで涙を拭うと、僕に渡してきた。しかし僕はそれを彼女の手に握らせた。彼女は戸惑った。
そんな彼女に僕はこう言った。
これを持っていて、また会う時まで
そして僕は走り出した。
あれからもう何年経ったろうか。まだ僕はあの子に会えていない。でも、こうやって星空を見ていると、彼女も、もしかしたらこの星空を見ているのではないか、そう思うのだ。
そして僕は今日も見る。あの時のような星空を。
どうでしたか。
面白かったですか。