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タンポポの牙は紫色に舞う  作者: 卯月樹
4. タンポポとライオン
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1

 雨の振る中、私は庭に繰り出す。

 自分の中から湧き上がる恐怖を抑え、何とか自我を保ち、雨でぐちゃぐちゃになった花壇を目指す。

 花壇の中はもう泥になっていて、数々の花は地に倒れてしまっている。

 その中に一つ。まっすぐに立ったまま黄色く主張する花がある。

 タンポポの花は存外丈夫な花だそうだ。

 雨の中でさえ、アスファルトの上でさえ咲き。年をまたいで咲き続ける。

 足元で諂いながら、害もなくそこに笑い続けるのだ。

 タンポポの花を地面から引き抜き、家の中に戻る。

 小さな瓶にそれを入れ、キャンパスの前におく。

 私は独りで生きていく。もうお前に怯えるのはこりごりだ。

 せめてもの供養として、お前の好きなこの絵と一緒に私の傍から消えてくれ。

 そう心の中で繰り返しながら、黄色の絵の具を手にとる。

 地面から離れたタンポポは、それでも尚、瓶の中で生きようとしていて、その憎らしさがやはり梓に似ているような気がした。


 意識はふわふわと浮かぶ。

 その浮遊感は、夢の中のようだ。それでもはっきりとしている意識で今の状態が分かる。

 桜が表に出ているのだ。

 紫を追い出してしまってから、おそらく数日がたった。

 私は依然として外には出れずに、この意識のプールの中で沈んでいる。

 きっとこれは私に与えられた罰なんだろう。

 たかが、二人目の人格がでしゃばったから。あまつさえ紫を利用しようとしたのだから。

 ここは一つ、祈る神もいないが、懺悔したいと思う。そうすれば綺麗にここから消えてなくなれるような気がするから。

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