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半年間も放置していてすいませんでした。
こううして彼女の存在は、一度目のコンクールによって知れ渡り、そこから数々の賞を総なめしていくことになる。
突然現れたその存在に、各所からは驚きの声が続々と上がり、ついには小さな出版社でインタビュー記事を書かれるまで有名な高校生となっていた。
安岡は教師の仕事に加え、彼女のマネージャーのようなものになっていた。しかし、それを苦に思うはずなどなかった。何しろ安岡は彼女の一番のファンだったからだ。
それが誇らしく、そして彼女の漂わせる不思議な魅力にどんどんと引き込まれていった。
彼女が高校三年生になる頃には、メディアへの露出も増え、ますます梓の活躍の出番は増えていった。
そしてそれから一年。高校を卒業した彼女は、進学はせずにそのまま絵の道に進むことに決めた。そのころにはもう須崎も止めなかったし、何より自分にはこれしかないと分かっていた。
友達ともいえない同級生は皆、進学なり就職なりで騒いでいたが、そうそうに家に引きこもることを選んでいた彼女の心中は妙に穏やかで、毎日静かに絵を描けることが幸せだった。
いままでそれほど勉強してきたわけではないが、やはり学校に行く時間というものは、いざ卒業してみると大きく、自分がその分時間を棒に振っていたのかと思うとぞっとした。
一人の時であれば、思う存分『桜』でいられる。自分で決めたルールであったが、この頃になるともう意識せずとも、人格の入れ替わりははっきりと自然と行われるものになっていた。
外に出れば自然と梓になり、中に入れば自然と桜になる。
次第に自分の中で、この二つの人格が、明確に違う人間になっていることを感じていた。
一歩家から外に出ると、桜は急に眠くなる。そして気がつけば、いつのまにか家の中にいるのだ。
それを彼女と共に、須崎も感じていた。
須崎は元の桜を知っている。そして梓の存在も知る、唯一の人物だった。
それを分かっていても尚、目の前の少女が自分の姿を認知したと単に、がらりと別人になる瞬間は何度見ても恐ろしかった。
それから須崎は、桜には内緒で、梓と病院に行くことにした。
1ヶ月、2ヶ月……と、梓は病院に通い、その間桜は自分が外で何をしているのか分からない恐怖にとらわれていた。
そして、その恐怖が別の恐怖へと変わったのは半年後のこと。
須崎は桜と話がしたいと、なるべく彼女を落ち着かせ、扉を挟んで会話した。
時折、発作的に梓が顔を出すことを抑えながら、須崎の話を聞く彼女は青ざめた。
彼女はそこで初めて知らされたのだ。
自分が『解離性同一性障害』……多重人格障害だということを。
前書きにも書きましたが、半年間放置して申し訳ございませんでした。
無事受験も終わり、ひと段落ついたので新話を上げさせていただきました。
まだ、興味を持っていただいてくだされば幸いです。




