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 その国はぐるり周囲を峻厳な山脈に囲まれている。冬にもなると雪山から吹き付ける風は冷たく厳しく。毎年、体力のない子供年寄りから大勢が、病にかかり命を落としていた。


 猟師のカナラは腕の立つ猟師だったが。妻は娘のカザを生んですぐ、冬の寒さで産後の肥立ちを悪くしてしまい、先立ってしまった。残されたカザも病気がちで、この冬にまた倒れている。

 年々、カザの病は深刻になっていた。このままでは今年に生き残れても、来年は分からない。だがカナラはどうすれば良いのか、藁にもすがりたい心持ちだった。


 そんな折にちょうど、上手で知られる旅の薬師、マオシが村にやってくる。カナラはマオシに娘の病を看てもらうことにした。

 やはり結果は思わしくなかった。何とか今年、来年の冬ならば越せるかもしれない。だが大人になるのは厳しいという。


 カナラは伏して頼み込んだ。

 町の市場で風聞を耳にしたがある。ある薬師が、万病を治すことのできる薬を持っていると。その薬師とは、あなたのことではないか。どんな大金が必要でも構わない。命にかけて、絶対に支払ってみせる。だから、その薬を譲ってくれ。どうか娘の病を治してくれないものか。

 マオシはしばらく困ったように悩んだ後、行李から小箱を出して見せた。中には、奇妙なものが入っている。乾燥させてあるが、芋虫から草が生えているのだ。


「これは冬虫夏草といってな、肺病の特効薬となるのだ」

「おお、そいつを使えば娘の病も治るのか」

 噂に聞いたことはあったが、見たのは初めてだった。

「冬虫夏草も館ひとつ建つくらいには高価だがな。しかしコイツで娘さんは助からん」

「だったら、どの薬ならば娘が助かるというのだ」

「ない。冬虫夏草も珍しいが手に入らないわけではない。問題の薬は手元にないのだ」

 マオシは冬虫夏草の入った小箱をしまってしまう。

「冬の寒さが最も厳しくなる、そう、ちょうど今頃。冬虫夏草は虫に寄生して生えるが。雪山の奥深く。寒さに寄生して咲く花がある。それこそ氷柱華草ひょうちゅうかそう。万病を治す妙薬だ」


「生える場所は分かっているのだな。では早速……」

「だが厳しい道行きとなるぞ。実際、氷柱華草を求めて命を落とす者も多い。ゆえに入手は至難なのだ」

「命と引き替えに娘の命が助かるのならば本望だ。俺が行こう。山歩きならば慣れている」


 マオシは危ないからと一度は引き留めたが、カナラの頑固さに折れることにした。

「だが氷柱華草は暖かさに弱い。火の気も、調理したメシも持って行ってはならないぞ。つまりお前は、ただでさえ厳しい冬山を、暖も取らず進むことになる」

 聞かされてもカナラの決意が揺るぐことはない。そしてマオシに丸薬を飲まされた。これを飲めば氷柱華草が発見しやすくなるという。

 また氷柱華草の生える場所に当てはあるといって、地図も渡された。

 かくしてカナラは娘の面倒を村人に頼み、霊薬を探しに旅立った。

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