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第二話

 帰宅した俺を待っていたのは、妹の、腹が減った。の一言だった。

 俺の家族は4人。俺と、妹と、そして父親と母親。父親は単身赴任中で、たまに帰ってくることはあっても家にいることはまれだ。

 

 気分の晴れないまま、俺は母親と夕食の支度をする。夕食を済ませて部屋に戻ると、携帯が鳴った。石田からだ。

「もしもし」

「もしもし。今日はごめんね。茜にだけは付き合ったこと言いたかったの。応援もしてくれてたし」

「あぁ、うん。大丈夫だよ」

 その後いくらかの他愛のない会話をしたが、俺の頭にはほとんど入ってこなかった。さっきの千尋のことが気になって仕方がなかった。

 なぜあいつは急に怒ったのか。あまりに唐突すぎて意味が分からない。

 もちろん、彼女関連で機嫌が悪かったのは分かるが、あんなに感情的になった千尋は今だかつて見たことがない。いつも飄々と受け流すタイプの彼女からは想像がつかないものだった。

 明日、千尋と顔を合わせ辛いな……。俺はそんなことを漠然と思っていた。


 

 俺の心配をよそに、次の日も、その次の日も、何も起きずに日々が過ぎた。授業を受けて、友達と遊び、石田と話して、部活をして帰る。そんな生活だった。

 千尋は気味が悪いほどにいつも通りだった。いつものように黒さを隠し、内気で大人しい少女を演じている。たまに移動教室や廊下などで目が合うことがあっても、お互いに無視を決め込んでいた。

 そんな毎日を過ごして一ヶ月が経ったころ、俺は部活のキャプテンに選ばれた。

 俺が所属しているのはテニス部。キャプテンに選ばれたということもあり、俺は日々部活に打ち込んでいた。

 学校がある日も、休みの日も、ひたすら部活をやり続ける。なによりもテニスが好きになっていた。千尋のことは気にはなってはいたが、お互いに何もなかった。

 そして、いつのまにか石田とも遊ぶことがなくなっていた。


 俺はその後の大会で勝ち進み、県大会に出場。かなり良い成績を収めた。ある日コーチに呼び出され、選抜のセレクションを受けてみないかと誘われた。二つ返事で出場を決め、なんと見事受かってしまった。

 人生がどんどん輝いていくのが見えた。友達からも褒められ、教師からも一目置かれている。俺は充実感を噛み締めていた。


 そんなある日、俺の耳にある噂が流れてくる。

 「菅山千尋が男と付き合い始めた」そんな内容だった。

 俺は気になり、噂を辿って相手を調べることにした。本人に聞くのは少し気が引けたのだ。

 結果、千尋の相手は俺と同じクラスのバスケ部の佐伯さえきだった。ノリもよく話もおもしろい。男女問わず友人も多い男だ。

 胸にチクリとした痛みが走ったのは気にしないことにした。


 そしてその日、いつも通りの授業中に異変が起きた。俺の右斜め前の席の女子、佐藤が急に泣き出したのだ。

 すすり泣くような声は次第に大きくなり、やがて嗚咽に変わる。生徒たちと教師が唖然とする中、佐藤のむせび泣く声だけが教室に響いた。

 佐藤と仲の良い女子が彼女を保健室に連れて行き、授業は再開した。


 休み時間、どういうことなのかと思い、仲の良い女子三人組に声をかけると、どうやら千尋が絡んでいることが分かった。

 佐藤は佐伯と付き合っていた。しかし、佐伯は千尋に駄目元で告白。そして千尋がそれを承諾したため、その日に佐藤をふったらしい。

 佐伯の知られざる一面に、良い友達だと思っていたことを改めなければいけないと思った。そしてもうひとつ、千尋についても思ったことがある。

 佐伯が付き合ったことによる周囲の反応で再確認させられた。千尋は物凄くもてていたのだ。




 そんな噂が流れてからしばらくあと。

 佐藤のグループによる、千尋への虐めが始まった。




続く

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