第十四話:招かれざる令嬢
大樹海深部、未踏域「深緑層」。
カイルは巨木の枝に潜み、冷徹な瞳で獲物を見定めていた。視界の先には、巨大な岩石の身体に魔導回路を模した地衣類を纏うゴーレム、【古樹の守護者】。
カイルの目的は、あの巨体が有する自己修復スキルを「剪定」し、自身のツリーへと接ぎ木することだった。
(魔力核が露出するまで、あと数分……。そこを叩けば、最小限の手間で収穫できる)
カイルが「収穫」の準備を整えた、その瞬間だった。
「――目障りよ。道を明けなさい」
凛とした声が響いた直後、空から純白の極光が降り注ぐ。それはカイルが数時間をかけて追い詰めた【古樹の守護者】を、その魔力核ごと一撃で粉微塵に消し飛ばした。
爆風に髪を揺らしながら、カイルは地面へと着地する。その瞳には、かつてないほどの不快感が宿っていた。
「……何をする。僕の素材を台無しにしたな」
「あら、ネズミが一匹隠れていたのね」
硝煙の中から現れたのは、豪華な馬車を従え、傲然と立つ紅蓮の髪の女性――セレナ・ド・ヴァランティーヌ公爵令嬢。
「その顔……バルトフェルトの出来損ないが父を返り討ちにしたと聞いて、退屈しのぎに来てみれば。存外、鋭い眼をするのね」
カイルは初対面の「生贄の相手」を【熱探知】で魔力に帯びた熱を瞬時に解析した。
(異常な魔力量だ。騎士団長とは比較にならない。だが――)
カイルは自身のスキルツリーを「影操作系」へとリビルドし、掌から【常闇の胞子】を放つ。黒い粒子がセレナの魔力に触れ、彼女の機動力を削ぎ落とすのを確認し、彼は冷徹に言い放った。
「……セレナ・ド・ヴァランティーヌ。悪名は聞いているが、僕の収穫を奪った責任は、その身で払ってもらうぞ」
「あら、私を使いこなせると思っているのね? 面白いわ。期待に応えてあげましょう。その代わり――役に立たなければ、貴様を次の私の『生贄』にしてあげるわ」




