第十話:召喚士の「枝」と無限の等価共有
世界樹の聖域から帰還した俺は、宿の一室で自身のスキルツリーを広げていた。手元には、ギルド報酬で買い占めた「スキルの書」が積まれている。
(……アサシンの『幹』は十分に太くなった。今なら、より異質な『枝』を接いでも耐えられるはずだ)
俺が今回目をつけたのは、未就職ツリーの中でも極めて特殊な【召喚士】だ。通常、召喚士は己の魔力を分け与えることで召喚獣を使役する。魔力供給の限界から、どれほどの手練れでも同時に操れるのは数体のみが限度とされる職だ。
だが、俺の狙いはその常識の外側にあった。
「【接ぎ木】発動。召喚士のツリーより『枝』を奪い、俺のアサシンツリーに接合する」
『パッシブスキル【等価共有】および【吸命の絆】を接合しました』
このスキルの本来の用途は、数体の召喚獣のステータスを自分に加算し、その与ダメージで自分を回復するものだ。だが、俺はこれを「数百万単位で増殖する胞子」に適用する。
検証のため、俺は魔境の奥地で、岩山ほどもある巨大な大蛇「グランド・サーペント」と対峙した。まずは【隠密】で気配を消し、無音で必殺の距離へ踏み込む。だが――。
(ガァッ!!)
突如、魔獣が背後の俺を目掛けて巨大な尾を叩きつけてきた。俺は【聖域の盾】を展開し、衝撃を無効化しながら距離を取る。
(……なぜだ。魔力も気配も完全に断ったはずだぞ)
大蛇のピット器官が赤く脈動している。
「なるほど、赤外線センサーか。俺の『体温』を直接捉えたな」
俺の【隠密】が初めて破られた瞬間だった。だが、俺はニヤリと口角を上げる。
「見えているなら、その感知速度を置き去りにするまでだ。――【等価共有】、接続!」
俺は一気に間詰め、短剣を振るう。強化版【影の叡智】により、一振りで4ヒットの斬撃が刻まれ、その傷口へ数百万の胞子を流し込んだ。
『【等価共有】発動。配下(胞子)の全ステータス20%を本体へ加算します』
魔獣の体内で胞子が自己増殖を開始した瞬間、俺の肉体に爆発的な力が逆流してきた。一体ごとは微々たる加算だが、「数体」を前提としたスキルに「数百万」の配下を接続したのだ。計算外の暴力的なまでのバフが、俺の筋力も反応速度も、リアルタイムで無限に上昇させていく。
熱で見えているのなら、その熱を捉えきれないほどの「神速」で圧倒してやる。




