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外道アサシンのスキル接合無双  作者: 曇りクモ


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第一話:転生者の観察眼

「一人一職」。


それが、この世界の神が定めた絶対にして唯一の理だ。

十五歳の「授かりの儀」にて天から降る【職業】と【固有スキル】。それは人生そのものであり、覆すことのできない残酷な宿命だった。

王国騎士団長を父に持つ名門、バルトフェルト家の長男として生まれた俺、カイルにとって、その儀式は栄光への確定した階段であるはずだった。だが、祭壇の水晶に触れた瞬間、脳内に響いた神の声が、俺の運命を無慈悲に切り裂いた。

【メイン職業:アサシン】

【固有スキル:接ぎ木】

「……っ!?」

一瞬、心臓が止まったかと思った。

【アサシン】。それは正面突破を尊ぶ騎士の国において、日陰者に甘んじる「不遇職」の代名詞だ。それどころか、「魔王が人間に内戦を起こさせるために作った、呪われた職」として、人々から忌み嫌われている存在ですらあった。

「報告せよ、カイル! 貴公が授かったのは……『騎士』か? それとも『剣士』か!」

父ガイアスの期待に満ちた声が聖堂に響く。俺は震える唇を噛み切りながら、真実を告げるしかなかった。

「……アサシン。そして、スキルは、『接ぎ木』です」

静寂。

それは数秒の後、怒号と嘲笑の嵐へと変わった。

「アサシンだと!? バルトフェルトの血筋から、コソ泥の職が出たというのか!」

「おまけに固有スキルは『接ぎ木』? 農民の派生スキルじゃないか。騎士の家に庭師が生まれたか!」

父の顔から一切の感情が消えた。彼は立ち上がると、ゴミを見るような目で俺を睨みつけ、冷酷に宣告した。

「バルトフェルトに、影を歩く鼠は不要だ。……即刻、この家から失せろ。二度とその汚らわしい面を見せるな!」

その日のうちに、俺は着の身着のままで屋敷を放り出された。

雨の降る森の入り口で、俺は一人、錆びた短剣一本を手に立ち尽くす。

だが、暗闇の中で俺の瞳に灯ったのは、絶望ではなく、確信に満ちた熱だった。

(……バカめ。このスキルの本当の恐ろしさを、誰も分かっていない)

俺には、前世……日本での記憶がある。

この世界の住人にとって【接ぎ木】は、単に植物の枝を繋ぐだけの退屈な農業技術だ。だが、俺の視界に映る【接ぎ木】の詳細ログは、全く別の「正解」を提示していた。

「……ステータス・オープン」

呟きと共に、半透明のウィンドウが宙に浮かぶ。

そこには、漆黒のアサシンのスキルツリーが描かれていた。だが、その周囲には、本来なら他人が一生かかっても触れることのできない他職の「未就職ツリー」が、半透明の枝として無数に漂っている。

この世界のシステムにおいて、能力の成長は『スキルツリー(技能の樹)』という形式で規定されている。

ならば――植物の枝を接合するように、他の職業の強力なスキルを自分のツリーに「挿し木」できるのではないか?

俺は森の奥で、自身の意識を深く沈めた。

狙うのは、格闘職【モンク】のツリーだ。

モンクは、武器や防具を一切装備できないという絶大な「制約」がある代わりに、単体でのスキル増幅率が全職業で最も高い。本来、剣や鎧を身につける騎士の家系には最も不向きな職だが、今の俺には関係ない。

(俺の台木はあくまで『アサシン』だ。モンクのスキルを『枝』として接合してしまえば、モンク職としての装備制限を受けることなく、その強力な補正だけを掠め取れる……!)

「……【接ぎ木】、発動」

俺の指先から黄金の魔力が伸び、半透明のモンクツリーから二本の「枝」をもぎ取った。それを、俺のアサシンツリーにある空白の切り込みへと強引に押し込み、魔力で縫い合わせていく。

(パキィィィィン!)

脳内で硬質な結晶が砕けるような音が響いた。同時に、全身の血管が沸騰するような爆発的な力が流れ込んでくる。

『固有スキル【接ぎ木】により、以下のスキルを習得・接合しました』

【気脈の循環】(モンク/パッシブ): 「気」が常に体内を巡り、攻防ともに爆発的に増強。

【気脈の咆哮】(モンク/パッシブ): 4回攻撃ごとに「気」による追加ダメージを自動発生。

「……あはは、これ、ヤバすぎるだろ」

試しに、短剣を握ったまま目の前の巨岩に向かって腕を振るう。

アサシンの超高速の連撃。一、二、三――そして四撃目。

(ドォォォォン!)

短剣の本来の威力を遥かに凌駕する衝撃波が、巨岩を内側から粉砕した。

アサシンの「武器による神速の斬撃」と、モンクの「素手前提の超増幅補正」。

本来なら決して共存しないはずの二つの力が、俺の中で完璧に融合していた。武器を装備したままモンクの爆発力を放つ。これこそが、世界の理をバグらせる俺だけの戦闘スタイルだ。

「不遇職? 役立たず? ……笑わせるな」

俺は砕けた岩の破片を眺めながら、昏い笑みを浮かべた。

俺を追放した父も、騎士たちも、まだ知らない。

この世界そのものが、俺にとっては自分のツリーを太らせるための「苗床」に過ぎないということを。

「一人一職の限界、俺が根こそぎ書き換えてやる」

雨が上がり、月光が差し込む。

最強の「継ぎ接ぎのアサシン」による、理不尽なまでの無双劇が、今ここから幕を開けた。

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