第80話 え、パパが勇者!? 平穏終了で村が猿の惑星化!? 住民パニックなのにパパは『話せばわかる』と豪語して大混乱ー!?
温泉宿での朝、窓から差し込む光は穏やかで、村を包む空気はどこまでも澄んでいた。
あんな「……信じられない。三日もスローライフが続くなんて、初めてじゃない?」
みゆ「……奇跡。確率論的には、そろそろ何かが起きる時間」
ベアトリス「お姉様方、贅沢な悩みですわ。でも……正直、少しだけ暇を持て余しておりますわ」
もっふる「ピィー♪」
あんなは窓の外を見ながら、ふと思い出したように言った。
あんな「最近また、猿が増えたね。屋根の上とか、普通に歩いてるし」
みゆ「……温泉と、そして井戸水。この村の『水』に秘密がある可能性。調べる価値があり」
まずは温泉を調べてみることにした。
宿の浴場へと向かうと、朝の湯はまだ誰も使っておらず、静かに湯気を立ちのぼらせていた。
みゆが静かに手をかざし、温泉の成分を分析する。
みゆ「……鑑定」
淡い光が湯面をなでるように広がり、すぐに消えた。
みゆ「温泉には疲労回復と怪我の治癒効果。それなりに高品質な回復泉。……あと、精神安定効果も微量あり」
あんな「精神安定?」
みゆ「入ると気分が落ち着く。長湯したくなるやつ」
あんな「ただの温泉じゃないんだね」
ベアトリス「どうりで毎朝気持ちいいはずですわ!」
もっふる「ピィー♪」
さらには村の共有井戸まで足を運んだ。
桶を借りて水を汲み、みゆがふたたび手をかざす
みゆ「……鑑定。飲料水としての効果は標準的だけど……癒しの効果があり」
あんな「お水まで特別なら、お猿さんも居着いちゃうよね」
みゆ「猿は本能的に、この両方を求めて集まっているのだと推測されます」
ベアトリス「お猿さん、賢いですわ!」
もっふる「ピィー♪」
三人ともっふるが部屋に戻ると、ちょうど廊下から明るい声が響いてきた。
亮「いい湯だったぞー! 今日もお猿さんいっぱいだったー!」
あんな「パパ……」
みゆ「……原因の一端」
ベアトリス「パパ、人気者ですわ!」
もっふる「ピィー♪」
亮「もっふるも一緒に入ればよかったのにな!」
もっふる「ピィー♪」
あんな「……猿が集まる理由、分かったよ、パパ」
亮「え? なんで?」
みゆ「温泉には回復効果があって、猿はそれを本能的に感じ取ってる」
あんな「パパが毎朝楽しそうにしてるから、猿が安全だと思って近づいてる、とも考えられる」
亮「俺のせい?」
あんな「半分くらいは、そう」
亮「……なんかちょっとだけ責任感じるな」
もっふる「ピィー……」
宿屋の主人エルドが、少し困った顔で近づいてきた。
エルド「亮さん、ちょっと村長のお宅までよろしいでしょうか?」
亮「村長さんのお宅はついこの間行ったよ?」
あんな「パパ、今度は何?」
みゆ「……定番の呼び出し」
ベアトリス「何があったのですの?」
もっふる「ピィー!」
亮「お猿さんと温泉入って、お酒飲んだだけだよ?」
あんな「それが原因じゃないといいけど……」
みゆ「……ほぼそれ」
亮「え、本当に俺のせい?」
エルドは苦笑いしながら、もう一度「どうぞ」と手で示した。
村の通りに出ると、その風景は一変していた。
三日前より明らかに猿の数が増えている。
猿たちの姿が明らかに増え、人の生活圏にまで入り込んでいる。
村人「ドロボー!!」
一匹の猿が、果物を手に持って屋根の上を逃げていく。
あんな「猿の被害、増えてきてるね」
みゆ「……野生との共存は難易度高い」
あんな「だよねぇ……」
ベアトリス「猿は追っ払って差し上げますわ!」
亮「過激なのはやめておこうね」
あんな「でも、このままだと問題になりそうだよ」
亮「猿も急に温泉ができたり、村が大きくなってびっくりしてるんだと思うよ」
ベアトリスが振り返り、少し首をかしげた。
ベアトリス「パパ……猿の気持ち、分かるのですの?」
亮「なんとなくね。来てみたら居心地よかった、みたいな感じかな。俺も……来たとき、そんな感じだったし」
あんな「……パパと猿を同列にしていいのかは置いといて」
みゆ「ニュアンスは分かる」
村長宅に着くと、マーレイ村長が苦渋の表情で一行を待っていた。
エルド「村長、神崎家の皆さんをお連れしました」
マーレイ「皆さん、ありがとうございます」
亮「マーレイさん、何かあったのですか?」
マーレイ「皆さん、ありがとうございます。……実は、猿が増えて、住民も観光客も困っておるのだよ。
聞くところによると、亮さんは温泉で猿と仲良くしているらしいな。何か良い知恵はないかと……このままでは討伐依頼を出さねばならん」
亮「分かりました! 任せてください!」
あんな「パパ……大丈夫なの? 引き受けて」
みゆ「……パパの即決病、再発」
ベアトリス「困っている人は助ける、ですわね!」
亮「そう! 困っている人は助ける! お猿さんも話せば分かってくれるよ、大丈夫だよー!」
マーレイ「……話せば分かるとは、どういう意味ですかな?」
あんな「文字通りです。パパは本気でそう思ってます」
みゆ「成功率についてはノーコメント」
マーレイ「……亮さんなら、案外なんとかしてしまいそうな気もしてな」
エルド「……私も、なぜかそう思います」
亮は胸を張った。
亮「まかせてください!」
ベアトリス「パパなら大丈夫ですわ!」
亮「よーし! お猿さんとの話し合い作戦、開始だー!」
もっふる「ピィー♪」
こうして――
三日間の平穏は、猿たちの引き起こす小さな騒乱によって、あっけなく幕を閉じた。
野生の群れと「対話」で解決しようという、
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が、
今日もまた、誰も予想しなかった方向に転がっていく――。
突如として訪れた、種族の存亡を賭けた「重大局面」!
なんと、パパが五メートルの巨獣と岩山でサシの密談を開始!?
百匹の猿に包囲された絶体絶命の危機が、パパの「適当な約束」で歴史的和解へ!?
次回、第82話 え、パパが勇者!? 適当ダウジングで散歩してたら温泉湧いた!? 気がついたら群れの頂点・猿の王に就任してるー!?
前代未聞の「猿専用・露天風呂」大工事! パパ、今度は猿の王様になっちゃうの!?




