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パパ、またやらかしてる! 〜50歳天然パパ、娘2人ともっふるで挑む最強Fランク家族の無自覚無双スローライフ〜  作者: Kou
第七章 商都編〜新生活もパパのペース!? 忖度まみれの商談(?)と爆破だらけの弟子入り志願ー!?〜

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【外伝】三姉妹の誓いと秘密の揚げ菓子! ベアトリスが素顔を見せた特別な休日

グラーディオの朝。

温泉宿の廊下で、ベアトリスは仁王立ちしていた。

鎧ではなく、清潔感のある白いシャツと濃紺のスカートという珍しい私服姿だったが、表情だけは完全に任務モードだった。


ベアトリス「お姉様方! 本日は私が案内役を務めますわ! グラーディオは私の庭も同然。どのような御用命でも完璧にこなしてみせますわ!」


あんな「……ベアトリスちゃん、気合い入ってるね」


みゆ「……私服なのに目が騎士」


もっふる「ピィ……」


ベアトリスはまっすぐに二人を見つめた。


ベアトリス「お二人がグラーディオを離れる前に、せめて一日、地元をご堪能いただきたいですわ。領主

の娘として、これは責務ですわ!」


あんな「そんなに気張らなくても、一緒に歩くだけで楽しいよ」


みゆ「……同意。構えないで」


ベアトリスは胸に手を当て、深く息を吸った。


ベアトリス「承知しましたわ。……では、参りましょう!」


その目は、まだ完全に任務モードだった。

出発直前、宿の入り口で亮が声をかけてきた。


亮「いいなぁ〜! 俺も行きたいぞ!」


あんな「パパはお留守番ね」


みゆ「決定」


亮「えーー! なんでー!」


ベアトリス「パパも一緒にいかがですの!?」


あんな「これは女子の買い物!」


ベアトリス「……では、次の機会ですわ」


亮「それはそれで悪くないな……!」


もっふる「ピィー♪」


あんな「じゃあ行ってきます!」


三人は石畳の大通りへと出た。

グラーディオの朝は明るく、商人の呼び声と足音が行き交い、目に入る色がどれも鮮やかだった。


ベアトリス「まず、こちらの通りは布地と服飾の専門店が立ち並んでおります。グラーディオで最も格式の高い商区ですわ。お二人にふさわしい逸品がきっとございますわ!」


あんな「格式は別にいいけど、かわいいものならぜひ!」


みゆ「素材が良くて動きやすければ十分」


ベアトリス「お任せですわ!」


ベアトリスは先頭をぐいぐいと進んでいく。

その歩き方が、明らかに"視察"の歩き方だった。


あんな(……なんか、ちょっと視察っぽい)


みゆ(……商区の確認を兼ねてる気がする)


一軒目の服屋。

温かみのある木の棚に、色とりどりの生地と仕立て済みの服が並んでいる。

店主が笑顔で迎えようとした瞬間、ベアトリスが先に口を開いた。


ベアトリス「店主! こちらのお二人は、私の尊敬するお姉様方ですわ。最上の品を選り出してくださいますわよね?」


店主「も、もちろんですベアトリス様……!」


あんな「ベアトリスちゃん、普通にお買い物でいいんだよ?」


ベアトリス「普通では不十分ですわ! お姉様方には最上のみがふさわしいですわ!」


みゆ「……最上より、自分が好きなものが欲しい」


ベアトリス「では、お好きなものが最上になるよう、店主に尽くさせますわ!」


店主「……は、はい……!」


あんなは棚に並ぶワンピースをいくつか手に取り、試してみる。

柔らかな水色の一枚が気に入った。


あんな「これにする!」


ベアトリス「お似合いですわ! まさに戦場において敵の士気を完全に打ち砕く美しさですわ!」


あんな「……戦場は関係ないけど、ありがとう」


みゆ「……"士気を打ち砕く"は誉め言葉として正しい?」


ベアトリス「最大限の敬意ですわ!」


みゆはシンプルな紺のジャケットを一枚選んだ。


みゆ「動きやすくて、機能的。これにする」


ベアトリス「さすがお姉様! 補給と機動性を重視した、まさに神の啓示による選択ですわ!」


みゆ「……ジャケットを選んだだけだよ」


次は食べ歩きへ。


ベアトリスが「こちらです!」


と自信満々に連れて行ったのは、広場の端に並ぶ屋台だった。


ベアトリス「グラーディオ名物の揚げ菓子ですわ! 外はサクサク、中はとろりとして……実は私の一番好きな食べ物ですわ」


最後の一言だけ、少し小声だった。


あんな「えっ、ベアトリスちゃんの一番好きなやつ!」


みゆ「……なんか急にかわいくなった」


ベアトリス「か、可愛くなったとはどういう意味ですの!?」


揚げ菓子を三本買って、三人で並んで食べた。


あんな「……あっ、おいしい」


みゆ「……当たり」


ベアトリス「でしょう!? でしょう!?」


ベアトリスがぱっと顔を輝かせた。

さっきまでの任務顔が消えて、ただの十代の女の子の顔になっていた。


あんな(……ああ、こういう顔もするんだ)


みゆ(……素が出てきた)


雑貨通りへ入ると、小さな店が軒を連ねていた。

風に揺れる布飾り、木彫りの人形、色ガラスのアクセサリー。

あんながふと立ち止まり、棚の小瓶を手に取った。


あんな「……これ、もっふるに似てない?」


みゆ「……似てる」


ベアトリス「まさに! もっふるちゃんを瓶に封じたかのような神秘的な品ですわ!」


あんな「封じないで?」


三人がほぼ同時に吹き出した。


あんな「ねえ、色違いで買わない? 旅の記念に」


みゆ「……合理的。形に残る」


ベアトリス「……っ」


ベアトリスが一瞬、静かになった。


ベアトリス「……私も、いいのですの?」


あんな「もちろんだよ。三人で選ぼう」


ベアトリス「……私の分も……」


小さな声だった。

ベアトリスは白い小瓶を選んだ。

あんなは水色、みゆは藍色を選んだ。三つを並べると、色が綺麗に揃った。

ベアトリスは自分の小瓶をしばらく見つめてから、そっと革袋にしまった。


午後は布小物の市場へ。

ベアトリスがまた先頭に立ち、


「こちらの布地は領地産で、品質は保証しますわ」


と店主に説明しながら歩いていく。

あんなが刺繍入りのポーチを見つけて手に取った。


あんな「かわいい。パパへのお土産にしようかな」


ベアトリス「パパへの!? あんなお姉様の家事能力に加え、補給物資の調達まで……まさに完璧な戦略眼ですわ!」


あんな「……ただのお土産だよ」


みゆ「パパ、喜びそう」


みゆは薬草を収める小さな革ポーチを選んだ。


みゆ「仕切りがちゃんとある。機能的」


ベアトリス「素晴らしいですわ!」


みゆ「……だから、ポーチを買っただけだよ」


ベアトリス「いいえですわ!」


夕方、日が傾き始めた頃、三人は広場のベンチに腰を下ろした。

街に灯りが入りはじめ、石畳が橙色に染まっている。


あんな「楽しかったね」


みゆ「……うん」


ベアトリス「……案内役として、不足はありませんでしたでしょうか?」


あんなはベアトリスを見た。

また任務顔に戻りかけていた。


あんな「ベアトリスちゃん、今日ちゃんと楽しめた?」


ベアトリス「え……?」


あんな「案内してもらうのも嬉しかったけど、一緒に歩けたのが一番よかったんだよ。ベアトリスちゃんと三人で」


ベアトリスが少し目を丸くした。


みゆ「……私も」


ベアトリス「……私は、その……お二人のお役に立てればと……」


あんな「十分。というか、もう姉妹だよ」


ベアトリスが口を開こうとして、止まった。

もう一度開こうとして、また止まった。

それから、ようやく。


ベアトリス「……ありがとうございます、わ」


語尾が少しだけ、小さくなっていた。


もっふる「ピィー♪」


三人が同時に振り返ると、荷物袋の陰からもっふるがひょこっと顔を出していた。


あんな「いつから!?」


もっふる「ピィー!」


みゆ「……パパが寄越したのかな」


ベアトリス「も、もっふるちゃん! いつの間に!?」


もっふるはぺたぺたとベンチに上がり、三人の真ん中にちょこんと座った。

金色の羽が夕日を反射して、きらりと光る。


あんな「……なんか、絵みたいだね」


みゆ「……いい景色」


ベアトリス「……この景色……忘れませんわ」


宿に戻ると、入り口で亮が待っていた。


亮「おかえり! 楽しかったか?」


あんな「楽しかった!」


みゆ「……成果あり」


ベアトリス「パパ! 私の案内は完璧でしたわよ!」


亮「おお、さすがベアトリスちゃん!」


ベアトリス「当然ですわ!……あの、パパ、これを」


ベアトリスが革袋から小さな包みを取り出した。


ベアトリス「……市場で見つけた干し果実ですわ。パパが甘いものがお好きかと思いまして……」


亮「え!? 俺に!? ありがとう!」


ベアトリス「……喜んでいただければ、幸いですわ」


あんなとみゆが顔を見合わせた。


あんな(……気を遣ってたんだ、パパのことも)


みゆ(……ちゃんと見てるんだね)


もっふる「ピィー♪」


こうして――

案内役として完璧を目指したベアトリスが、

揚げ菓子を語る時だけ素顔を見せ、

小瓶を選ぶ時だけ少し照れた、

グラーディオでの、ちょっと特別な一日。

ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)に、

また一人、かけがえのない仲間が加わっていく――。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

今回は外伝ということで、パパ不在の三姉妹(?)回を書いてみました。

戦闘も大会も大騒動もなし。

ただの買い物回です。

でも――

こういう何気ない時間こそ、距離が縮まる瞬間なのかなと思いながら書きました。

ベアトリスは憧れ全開、

あんなとみゆはいつも通りだけど、どこか柔らかい。

血の繋がりはなくても、

少しずつ「新しい家族?」のような空気が出来ていけばいいなと。

本編とはまた違う雰囲気、いかがでしたでしょうか?


面白いと思っていただけたら、

ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります!


次回、『ぱぱやら!』

新章突入!

明日朝8時、本編第八章スタートとなります。


これまで以上に楽しんでいただけたら嬉しいです。

絆を深めた一行を待ち受ける、次なる「やらかし」の予感に乞うご期待!


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