第76話 え、パパが勇者!? 「美人三姉妹」でいざ出発!? グラーディオの皆様に別れを告げて、目指すはタダ風呂・温泉地ー!?
宿屋『天秤亭』の朝、亮は少し重い頭を押さえながら目を覚ました。
亮「……うぅ、昨日、ちょっと飲みすぎたかなぁ」
あんな「あんなに宿のご主人と意気投合してたら、そうなるわよ」
みゆ「……いつものこと。交流スキルだけはカンスト」
ベアトリス「とても楽しかったですわ! 飲みっぷり、豪快で素敵でしたわ!」
そんな和やかな朝食の席に、控えめな声がかかった。
「失礼します。神崎様でしょうか?」
見れば、見覚えのない商人たちが数人、丁寧に頭を下げて立っていた。
亮「はい、そうですが……?」
「この度は、本当にありがとうございました!」
亮「えーと、はい。どういたしまして……?」
困惑する亮を余所に、宿の外からも次々とお礼を言いに人々がやってくる。
亮「な、何がどうなっているの? 」
そこへ、商人ギルド長のバッカスが、満足げな笑みを浮かべて現れた。
バッカス「今回もお手柄でしたな! 亮殿!」
亮「ギルド長。これ、どういうことですか?」
バッカス「みんな、地下からの不気味な物音にはほとほと困り果てておったのだ。冒険者ギルドに依頼を出そうとしていた矢先に、あんたが解決してくれた。しかも、盗まれた食糧まで全部取り返してくれたそうじゃないか」
亮「そうだったのですね。でもわざわざ、それを伝えにギルド長が?」
バッカス「それだけではない。例の温泉の『永久無料使用権』が完成したのでな。これを渡しに来るついでだ。改めて礼を言わせてもらう」
亮「……いや、今回は本当に俺、何もしてないんですよ」
バッカス「はっはっは! またまたご謙遜を。さすが『王都の英雄』は器が違いますな!」
あんな「……本当に穴に入っていただけなんだけどね。活躍したのは、ベアトリスともっふるよ」
みゆ「……事実」
ベアトリス「そんなことはどうでもいいのですわ! 解決したのはパパのおかげですわ!」
もっふる「ピィー♪」
亮は手渡されたピカピカの証明書を眺め、ぱっと顔を輝かせた。
亮「よーし! 温泉がタダで入れることだし、ミルナ村に温泉に入りに行こう!」
あんな「賛成! 」
みゆ「……賛成」
ベアトリス「温泉……! 本でしか読んだことがありませんわ。入ってみたいですわ!」
もっふる「ピィー♪」
あんな「ところで、お米の情報は?」
みゆ「……検索結果、ゼロ。収穫なし」
ベアトリス「お米……? 伝説の聖遺物か何かですの?」
亮「温泉でスローライフだー!」
もっふる「ピィー♪」
一行はグラーディオを発つ前に、領主の館へと挨拶に向かった。
セルディオ「亮さん、娘をよろしくお願いします。……神崎殿なら、何も心配はしておりません」
エレナ「わがままな娘ですが、厳しくしてくださいね」
アルフォンス「お姉様、行ってらっしゃい! 亮さん、次は僕も連れていってくださいね!」
ベアトリス「お父様、お母様、アルフォンス……行ってきますわ!」
続いて訪れたオルドの店でも、温かい見送りが待っていた。
亮「オルドさん、色々とお世話になりました」
オルド「こちらこそ。またグラーディオに寄ることがあれば、ぜひ顔を出してください。いつでも歓迎しますよ」
あんな&みゆ「お世話になりました!」
もっふる「ピィー♪」
城門へと続く道。
神崎家が歩くたびに、あちこちから穏やかな声が飛ぶ。
「ありがとう、亮さん!」
「今度はうちの店に寄ってくれよ!」
「助かったぞー!」
それはまるで、温かなパレードのようだった。
城門をくぐり、街道へ出たところで亮が振り返る。
亮「いやー、ここも本当に良い街だったな!」
あんな「そうだね……」
みゆ「……騒がしいけど、悪くない」
ベアトリス「でしょ♪ 私が育った、誇らしい街ですわ!」
もっふる「ピィー!」
あんなはふと亮を見て、言いかけてやめた。
(いつも出る時は大騒ぎになるわよね……。パパのあの無自覚な善意って、一体何なんだろう?)
あんな「スローライフ、お米、勇者……パパはどう思ってるんだろうね」
みゆ「……お姉ちゃん。たぶん、何も考えてない確率98%」
あんな「……それがパパの良いところなのかしらね」
みゆ「……さあ。私にも解析不能」
亮「さあ! 温泉で、今度こそ最高の心静かなスローライフだー!」
あんな「あはは。今度の宣言は何分もつのかな?」
みゆ「……定番の、即終了を予測」
ベアトリス「そうなのですの? 楽しみですわ!」
もっふる「ピィー♪」
神崎家の一行と、新しい家族・ベアトリスの笑い声が、どこまでも続く街道に穏やかに響き渡っていっ
た。
――そして、その空のさらに遥か。
女神は、穏やかな微笑みを浮かべていた。
ふふ……あの家族は、欲にまみれた街さえも、自分たちの色に染めてしまうのですね。
あなたが蒔いた『自分に嘘をつかない』という種は、この街の商人たちの心に、金貨よりも重い『誇り』を思い出させたようですよ。
力に頼らず、ただ家族でいることが、世界を優しく導く魔法なのかもしれません。
さて……次はどんな日々を紡ぐのでしょう。
米の香りが導く新たな出会いが、あの家族を待っているのでしょうか。
光が揺れ、風がそっと道を照らす。その微笑みは、どこまでも優しかった。
こうして――
商業都市グラーディオでの日々を終え、一行は温泉へと向かう。
ベアトリスという、真面目すぎて「やらかす」新たな仲間を迎え、
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が、
今度こそ実現すると信じたい、湯煙の向こう側へと進んでいく。
亮「商都編、完走だー!応援が増えると、勇者ポイントも増える気がするんだよなぁ……ありがとう!」
あんな「物語、まだまだ続きますよ!? よかったらブックマークで一緒に歩いてくださいね」
みゆ「次章の波乱確率、上昇中。観測を続けてください」
ベアトリス「これからも三姉妹の応援、お願いしますですわ」
もっふる「ピィー♪」
あんな「私たち三姉妹の外伝を一つ挟んで次章にいきます」
みゆ「普段とは違う」
あんな「私たちを」
ベアトリス「読んでくださいですわ」
もっふる「ピィー♪」




