第73話 え、パパが勇者!? 神崎家に新たな家族が加入!? 「美人三姉妹」爆誕で、あんなとみゆのツッコミが追いつかないー!?
宿屋『天秤亭』の朝
焼きたてのパンの香りが漂う中、部屋の扉がノックされた。
コンコン。
オルド「亮さん、おはようございます。実は例の『温泉』の件で、商人ギルドの連中がどうしても直接お話したいと……。一度、顔を出していただけませんか?」
亮「温泉は領主さんにも伝えたけど、権利とかならいらないよ」
あんな「そうそう。温泉はのんびりするところだし」
みゆ「温泉は休息の場。利権を争う場所ではありません」
ベアトリス「師匠のお父様に余計な負担をかけるわけにはいきませんわ! 私が行って、ビシッと言ってまいりますわ!」
亮「いやいや、大丈夫だから。むしろ混乱すると思う」
あんな「うん、問題になりそう」
そのとき、オルドさんがベアトリスを見て目を丸くした。
オルド「ベアトリス様!? なぜここに?」
ベアトリス「昨日、あんなさんとみゆさんに弟子入りしたのですわ!」
オルド「そうだったのですね……良い方を師匠にしましたね」
ベアトリス「でしょう!? 私、誇りに思っていますわ!」
亮「まあ、オルドさんの顔を立てて行ってくるよ」
あんな「わたしたちも行くよ。パパだけだと心配だから」
みゆ「……心配。監視役、同行」
ベアトリス「では、私もご一緒しますわ!」
もっふる「ピィー!」
オルド「分かりました。ではご案内します」
商人ギルドの重厚な扉をくぐると、帳簿の音と商人たちの声が響いていた。
ギルド長・バッカスが、机越しに亮たちを迎える。
バッカス「早速本題に入りましょう。ミルナ村の温泉ですが……亮さんは権利をいらないとか?」
亮「はい、いりません。掘ったのは俺ですけど、土地は村のものですし」
バッカス「本気か? 莫大な権利になりますよ? 温泉宿でも、商業施設でも、何でも持てますが……?」
亮「いらないです」
オルド「バッカスさん、亮さんはこういう人なんですよ。信じられないかもしれませんが、本心です」
ベアトリス「師匠のお父様がいらないとおっしゃっているのですわ。それ以上、何を求めるのですの?」
バッカス「ベ、ベアトリスお嬢様!? い、いえ、不満はありません!」
ベアトリス「でしたら、話は終わりですわね?」
亮「まあまあ、二人とも。じゃあ……権利として、今後、神崎家は入泉料を無料にしてください」
あんな「それいいね!」
みゆ「タダ、嬉しい」
バッカス「永久無料権……? 本気ですか? 温泉街の売上の数%を握るだけで、一生遊んで暮らせるのですよ?」
亮「いや、お金より家族で気兼ねなく温泉に入れる方が価値あるでしょ。もっふるも泳げるしね!」
もっふる「ピィー!」
バッカス「(……何という無欲。利権という鎖に縛られず、ただ家族の幸福のみを追求する……。この男、やはりタダ者ではないな)」
バッカス「分かりました。後ほど、神崎家全員分の『永久無料使用権』を発行いたします」
亮「ありがとうございます! よーし、これでまた一つ楽しみが増えたな。宿屋に戻ろうか」
部屋に戻ると、ベアトリスが亮の前でぴしりと姿勢を正した。
ベアトリス「師匠のお父様! 私……合格ですの?」
亮「合格?」
ベアトリス「今日の立ち振る舞い……そして、これからも皆様の旅に同行することですわ!」
亮「もちろん合格だよ」
ベアトリス「ありがとうございます!!」
あんな「え、いいの?また即答で!」
みゆ「即答はいつものこと」
もっふる「ピィー!」
亮「よし! 今日からベアトリスちゃんも俺の娘だ! あんな、みゆ、今日から『美人三姉妹』として売り出していくぞー!」
あんな「勝手に売り出さないで! そもそも『美人三姉妹』って、恥ずかしすぎるから!」
みゆ「……拒絶。パパのネーミングセンスゼロ」
ベアトリス「美人三姉妹!光栄ですわ!」
亮「これからは、パパと呼びなさい」
ベアトリス「はいですわ、パパ!」
もっふる「ピィー♪」
ベアトリス「もっふるちゃんも、よろしくお願いしますわね」
もっふる「ピィー♪」
あんなとみゆは顔を見合わせ、どこか嬉しそうに笑った。
「もう、パパなんだから……」
こうして――
神崎家に新たな家族(?)が加わった。
領主の娘、ベアトリス。
彼女の加わった「美人三姉妹」と一人の無自覚勇者、そして一匹の獣魔、
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が、
新しい絆と共に、静かに、そしてより賑やかに続いていく。
宿屋の怪音調査で「スローライフ」がまたもや崩壊!?
地下で見つけた謎の穴に、パパが開始一秒で「奇跡の落とし穴」を披露!
救出を後回しにされた穴の底で、亮は三姉妹の華麗な連携を見届けることに……!?
次回、第74話 え、パパが勇者!? 地下迷宮(ただの穴)で絶体絶命!? 古典的な落とし穴に一秒でハマって放置されるパパー!?




