第8話 え、パパが勇者!? ゴブリン退治でまさかの展開ー!?
森の奥へ進むにつれ、空気がどんどん冷たくなっていった。光の届かない木々の間を、濃い霧のような気配が漂っている。
みゆが足を止め、地面にしゃがみ込む。指先で湿った土を撫でながら、眉をひそめた。
みゆ「……足跡。小さいけど、数が多い。ゴブリンね」
あんな「やっぱり……。」
亮「ゴブリンって、そんなに危ないのか?」
みゆ「単体なら大したことない。でも、群れで動くのが厄介」
亮「なるほど……つまり、群れじゃなきゃ――」
その時、周囲の空気が張りつめた。風が止み、木の影から黄色い目がいくつも光る。
あんな「……来たわね」
次の瞬間、土煙とともに、緑色の影が一斉に飛び出した。ゴブリンたちが、錆びた短剣や棍棒を振りかざしながら突進してくる。
亮「うおっ!? い、いきなり!?」
と、その時、あんなの体が自然に動いた。
一瞬でゴブリンの前へ――。
剣を抜く音が、鋭く空気を裂いた。
ヒュッ――!
目にも留まらぬ剣閃。
次の瞬間、数体のゴブリンが一斉に吹き飛んでいた。
亮「……え? 今、何した!?」
あんな「よく分からないけど、剣を振っただけよ」
その背後で、今度はみゆが静かに片手を上げる。
みゆ「カルキュレイト・フレア(演算炎)」
ボウッ――!炎がほとばしり、瞬時に敵の群れを包み込む。
わずか数秒。焦げた匂いとともに、森の静寂が戻っていた。
亮「な、なぁ……二人とも、強すぎない!?」
あんな「……ここまでとは思わなかった。これが女神様の加護なのね」
みゆ「正直、私もびっくり…。理論的に言えば、圧倒的魔力出力差ってこと」
亮「言葉が難しくて、もっとダメージ受ける……って、パパの出番は?」
あんな&みゆ「ないねーー」
あんな「でも……よかった。みんな無事で」
みゆ「思ったより危なくなかったね。ゴブリンくらいなら、私たちで十分対処できるね」
(二人は顔を見合わせて微笑んだ)
もっふる「ピィ♪」 (どや顔)
家族は少しずつ“異世界で生きる力”を実感し始めていた。
――その時だった。
地面が「ズズン……」と低く鳴る。
大地そのものが唸っているような、重い震えが足元から伝わる。
あんな「……今の、何?」
みゆ「……重い。巨人が歩いてるみたい」
木々の奥から、巨体がゆっくりと姿を現した。通常のゴブリンの倍以上はある体格。肩には丸太のような棍棒。赤黒い皮膚に、鈍い金属光沢を放つ瞳。
亮「な、なんだあれ!?」
みゆ「〈鑑定〉――!」
光が走り、みゆの瞳に数値が浮かぶ。そして、静かに息をのんだ。
みゆ「……ゴブリンキング。ランク、B」
あんな「Bランク!? そんなの、私たちが相手できるレベルじゃないでしょ!」
亮「え、Bって……強いやつ?」
みゆ「上から三番目です、パパ」
亮「うわ、そんな強いのか……でもまぁ、加護もあるし? なんとかなる気がする!」
あんな「その“気がする”が一番危ないのよ!」
みゆ「理論的根拠ゼロですね」
亮「いやー、なんかいけそうな気がしてきた!」
あんな&みゆ「してこなくていいっ!」
あんな「とは言え、何とかしないとね、みゆ」
みゆ「そうよね。この辺りのゴブリンたちを操ってた原因、たぶんこいつ。ゴブリンキング、群れを束ねる“王”よ」
ゴブリンキングが、喉の奥から低く唸り声をあげる。
それは威嚇でも警告でもない――怒りそのものの咆哮だった。
グワァアアアアッ!!!
その声に応じて、森の奥でまた無数の影がざわめく。新たなゴブリンの群れが、闇の中から姿を現す。
あんな「……呼んだわね」
みゆ「包囲される前に、仕留める」
亮「よし……! なら、俺も行くぞ! “お米の祝福”発動!」
あんな「それ何の役に立つの?」
みゆ「精神安定効果……たぶん」
亮「いいんだよ! 気合いが力を呼ぶんだ!」
もっふる「ピィ!」 (まるで“任せろ”と言うように小さな羽をばたつかせる)
こうして――
神崎家ともっふるは、静寂の森で“ゴブリンの王”と対峙することになった。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、またしても波乱の予感。
第9話 え、パパが勇者!? 森の王を一撃でー!? 勇者覚醒!!




