第68話 え、パパが勇者!? 商業都市で新生活スタートだー!?
神崎家に新たな家族!?どうなるの新章?
王都での騒乱を(無自覚に)収めた神崎家一行が次に降り立つのは、活気あふれる商業都市グラーディオ!
「今度こそ静かなスローライフを」
と願うパパですが、商人の論理が支配するこの街で、パパの「規格外な無欲さ」がとんでもない波紋を呼ぶことに!?
さらには、出会うはずのない「新たな出会い」が、神崎家の家族構成まで変えてしまう予感……?
パパの親バカが加速し、あんなとみゆのツッコミが追いつかない、激動の商都編が開幕します!
神崎家のドタバタ異世界スローライフ(?)、
新章もぜひ楽しんで読んでいただけたら嬉しいです!
昨夜、商業都市グラーディオへと足を踏み入れた神崎家ともっふるは、オルドさんの自宅で心尽くしの歓迎を受けた。
温かい食卓と、家族の笑顔。旅の疲れが一気に溶けていくような、そんな夜だった。
そして翌朝――。
街は、朝日とともにすでに動き始めていた。
王都の洗練された賑わいとは違う、もっと生々しく、もっと力強い"商売の音"が響いている。
「安いよ安いよ! 今日の相場はこっちだー!」
腹の底に響くような競り声が、通りのあちこちから飛び交っていた。
亮「すげぇ......朝からこんなに活気あるんだな」
あんな「王都とは違うね。なんか、こう......勢いがある」
みゆ「商業都市特有の"動き続ける空気"。止まると損をする街」
もっふる「ピィ♪」
人の声が幾重にも重なり、足音が絶えず行き交っている。
そんな賑やかな通りの中、オルドさんが手を振って駆け寄ってきた。
オルド「亮さん、こちらですよ! 私が自信を持っておすすめする宿屋『天秤亭』です!」
指し示されたのは、立派な木彫りの看板が掲げられた三階建ての宿。
外観は質素だが、手入れが行き届き、扉の前には朝の掃除を終えたばかりのような清潔な香りが漂っていた。
宿屋の主人「おお、オルドさん! お待ちしておりましたよ!」
カウンターの奥から、宿の主人が弾かれたように飛び出してくる。
宿屋の主人「こちらの皆様が、例の......? お噂は伺っております! オルドさんの紹介とあれば、最高のおもてなしをさせていただきますよ。さあさあ、中へ!」
亮「え、噂......?」
あんな「ちょっとパパ、また無自覚に伝説作ってない? 王都のギルドマスターに変な報告書でも送られたんじゃないの?」
みゆ「否定不可。パパの特異点は隠蔽不可能。王都からの情報伝達速度、予測値を20%超過」
もっふる「ピィー♪」
宿屋の主人は背筋をピンと伸ばし、案内を始めた。
宿屋の主人「この『天秤亭』は創業五十年、商人の方々に愛されてきた老舗でございます。食事は朝夕ともに付き、お部屋も清潔を心がけております」
亮「おお〜、五十年! 歴史ある宿なんですね!」
宿屋の主人「はい。私で二代目でございまして......おっと、これ以上は話しすぎですね。まずはお部屋へどうぞ」
階段を上り、三階の奥の部屋へ案内される。
扉を開けると、清潔な白い壁と、窓から差し込む柔らかな光が迎えてくれた。
亮「おおっ、いい部屋じゃん!」
あんな「広いね! ベッドも三つあって大きい!」
みゆ「......窓からの視界良好。通りが見渡せる。防犯上も問題なし」
もっふる「ピィ♪」
宿屋の主人「こちらが鍵でございます。何かご不便がございましたら、いつでもお声がけください」
亮「ありがとうございます! よろしくお願いします!」
あんな&みゆ「ありがとうございます」
もっふる「ピィー♪」
宿屋の主人が退室すると、あんなは窓辺に寄って外を見下ろした。
あんな「すごいね......朝から人がいっぱい」
通りには商人や買い物客が行き交い、露店が次々と準備されていく。
荷車が通り過ぎ、その後ろから子どもたちが笑い声をあげながら走っていく。
みゆ「商業都市の朝は早い。統計上、王都より二時間早く活動開始」
亮「へぇ〜、そんなに違うのか」
みゆ「効率最優先の街。面白い」
しばらく窓の外を眺めていると、コンコン、とドアがノックされた。
オルド「亮さん、少しよろしいですか?」
亮「おお、オルドさん! どうぞどうぞ!」
扉を開けると、オルドさんが手に紙の束を持って立っていた。
オルド「実は、この街のことを少しでも知っていただこうと思いまして......簡単な地図と、商店街の案内を持ってまいりました」
あんな「わあ、ありがとうございます!」
みゆ「助かります」
オルド「この街は商業が中心ですので、食材や道具は比較的安く手に入ります。ただし......」
亮「ただし?」
オルド「......値切り交渉は基本です。言い値で買うと"カモ"扱いされますよ」
あんな「えっ......」
みゆ「商売の街。当然の文化」
亮「なるほど......でも俺、交渉とか苦手なんだよなぁ」
オルドは苦笑しながら頷いた。
オルド「最初は難しいかもしれませんが......そのうち慣れますよ。それに、あんなさんとみゆさんがいれば大丈夫でしょう」
あんな「......頑張ります」
みゆ「交渉スキル、習得課題として追加」
もっふる「ピィ♪」
オルドさんが帰った後、家族は部屋でひと息ついた。
亮「......いい街だなぁ。オルドさんもいるし、ここならのんびりできそうだ」
王都での騒がしい勘違いや、道中でのハプニング。
いろいろあったけれど、この穏やかな空気なら、今度こそ平穏なスローライフが送れる気がする。
あんな「楽しみ! 宿代もオルドさんが『命の恩人ですから!』って格安にしてくれたし、パパ、良かったね」
亮「ほんとだよ〜。オルドさん、いい人すぎる......ただ、命の恩人って大げさなんだけどな」
あんな「そうだよね、荷馬車の車輪がぬかるみにはまっていたのを助けただけなのにね」
みゆ「荷馬車の中の荷物が重要だったのかも」
亮「なるほどー」
あんな「その可能性もあるかもね」
みゆ「詮索不要」
亮「はい」
みゆは部屋を一周見渡し、窓の外の通りまで確認してから言った。
みゆ「......確認。普通の部屋」
あんな「普通が一番だよ!」
みゆ「拠点としての合理性は98%。お米の情報、期待」
亮「お、おう......なんか頼もしいな。みゆがそう言うなら、ここが一番いい場所なんだろうな」
もっふる「ピィ♪」
あんな「パパ、のんびりはいいけど、また勝手に伝説にならないでよ」
亮「あはは、分かってるって。今回は目立たずに、家族でスローライフが目標だからね」
あんな「はいはい。そのためには、まずはこの街のルールを覚えないとね!」
みゆ「それが一番不安」
もっふる「ピィー!」
その日の午後。
オルドさんの案内で、神崎家ともっふるは商店街を歩いていた。
露店が立ち並び、野菜、果物、香辛料、布地、武器、道具......ありとあらゆるものが売られている。
亮「すげぇ......なんでもあるんだな!」
オルド「ええ。この街は"交易の要"ですから。北の山岳地帯、南の港町、東の王都、西の辺境......すべての物資がここを通ります」
みゆ「物流の中心。合理的」
オルド「ただし、偽物も多いのでご注意を。特に魔石や薬草は、見極めが必要です」
あんな「......そういうのって、鑑定できるんですか?」
オルド「ええ。商人ギルドに鑑定士がおります。有料ですが、確実です」
みゆ「鑑定スキル、私も使えます」
オルド「......え? みゆさん、鑑定スキルをお持ちなんですか?」
みゆ「はい」
オルド「......それは......すごい」
あんな「便利だよね」
亮「うちの娘、天才なんですよ〜!その上美人姉妹!」
あんな「パパ、今はその親バカいらないから!」
オルド「......はは、確かに。それなら、偽物を掴まされる心配はありませんね。ただ、鑑定スキルのこと
は、あまり人には言わないほうが良いかもしれません……」
みゆ「分かりました」
商店街をひと通り案内し終えると、オルドさんが笑顔で言った。
オルド「これで、この街での生活も少しは楽になるはずです」
亮「本当に色々とありがとうございます!」
あんな「オルドさんのおかげです」
オルド「いえいえ、では、また何かございましたらお声がけください」
宿に戻ると、夕食の時間だった。
食堂には他の宿泊客もおり、笑い声と話し声が途切れない。
宿屋の主人「さあさあ、どうぞお召し上がりください!」
亮「うおおお! うまそう!」
あんな「いただきます!」
みゆ「栄養バランス良好」
もっふる「ピィ♪」
温かいスープ、焼きたてのパン、柔らかい肉......。
どれも素朴だが、心がほっとする味だった。
亮「......うん、やっぱりいい街だ」
あんな「うん。ここなら、のんびりできそう」
みゆ「定住候補として評価可能」
もっふる「ピィ♪」
こうして――
商業都市グラーディオでの新生活が始まった神崎家ともっふる。
オルドさんの温かい支援と、街の活気に包まれながら、
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が、
新たな舞台で静かに動き出す――!
到着早々の揉め事に、パパがまさかの介入!?
契約書より「自分に嘘をつかない」という亮の純粋すぎる一言が、商業都市の常識を塗り替える!
呆れる娘たちを余所に、家族をじっと値踏みする謎の視線が動き出す……!?
次回、第69話 え、パパが勇者!? 契約書より「自分に嘘つかない」理論で商業都市のルールを書き換えたー!?
パパの真っ直ぐな言葉が、新たな波乱を呼び起こす!
【神崎家のひととき】
亮「あんな、みゆ。この世界って夜空の星がすごく綺麗だよな。……ほら、あそこにある ☆☆☆☆☆ も、いつか全部 ★★★★★ みたいに輝いたらいいなぁ、なんて」
あんな「パパ、ロマンチックなこと言ってるつもりだろうけど、それ評価星の話でしょ。……まあ、皆様にそう思ってもらえるように、私たちがパパのやらかしを止めなきゃね」
みゆ「……肯定。星の輝き(評価)は、旅を続けるための大切な動力源。……観測者の皆様、ブックマークという名の『追跡記録』も、あわせてお願いします」
もっふる「ピィー♪」




