第66話 え、パパが勇者!? 商業都市で恩返しの波乱!? 再会の商人と囲む温かい食卓!?
ミルナ村を出発して数日。
神崎家は、見渡す限りの地平線へと続く街道を歩いていた。
背後には、水と温泉が湧き、笑顔を取り戻した村が小さくなっていく。
あんな「……結局、また最後は『神様さようならー!』の大合唱だったね」
みゆ「……肯定。親愛度、計測不能。伝説化確定」
亮「いやー、でもいい村だったなぁ! 温泉、今度来た時にはゆっくり入りたいよなー!」
あんな「パパが温泉出した張本人なんだから、遠慮せず入ればよかったじゃない」
みゆ「……却下。パパの入浴は、新たな信仰対象を生むリスク大」
亮「そんな大げさな! ……お、見えてきたぞ!」
前方には、王都の優雅さとはまた違う、重厚な石造りの外壁に囲まれた巨大な街が姿を現していた。
王国第三の都市・グラーディオ。
主要街道が交差する交通の要所であり、物資と情報が絶え間なく流れ込む、この地方最大の商業都市である。
亮「おおーっ! でっかいなぁ! 」
みゆ「推定人口、王都の半分程度。活気があります」
あんな「商業都市ならではの感じだね」
もっふる「ピィー♪」
街の巨大な門に近づくと、そこには多くの旅人や商人たちが行き交う、心躍るような賑わいが待っていた。
すると、門の前で検問の手続きをしていた一人の男が、亮の姿を見て目を見開いた。
商人「――ん? ……あ、あああああーっ!! もしかして、亮さんじゃないか!?」
亮「えっ? ……えーっと、どなたでしたっけ?」
あんな「パパ! 馬車がぬかるみにはまって困ってた商人の……えーっと」
みゆ「……王都に初めて向かった時に困ってた人」
男は、転ぶような勢いで駆け寄ってくると、亮の両手をがっしりと握りしめた。
オルド「やっぱり亮さんだ! 探したんですよ! 改めまして、私はオルド・グレインズです」
亮「俺は神崎亮! 二人は娘のあんなとみゆ。そしてこいつがもっふる! お米の国から来た男だ!」
あんな「だから! その自己紹介やめてって! 」
みゆ「……このパターン、デジャヴ」
オルド「……お米の国……? いやー、噂通りのお方だー! あの時はろくに挨拶もしないで失礼しました。本当にありがとうございました!みゆお嬢さんの魔法と、亮さんの……ええと、あの気合(?)のおかげで、私の商売は首の皮一枚繋がったんです!」
亮「ああ! あの時の! 奇遇ですねぇ、オルドさん!」
オルド「奇遇なんてものじゃない! これは運命だ! 私はこの街、グラーディオでお店を開いているのです。さあさあ、立ち話も何ですから、街の中へ! 滞在中のことは全て私に任せてください!」
あんな「えっ、でも……」
みゆ「恩人扱い、確定」
もっふる「ピィー♪」
オルドに連れられ、活気あふれる大通りを進む。
彼は歩きながらも、すれ違う商人や衛兵たちと手際よく挨拶を交わしていく。
その明るい振る舞いには、この街で築いてきた確かな信頼が滲み出ていた。
オルド「ここが私の家であり、お店です。……エルミナ! リシェル、ノアス! 命の恩人が来てくれたぞ!」
家に入ると、穏やかな微笑みを浮かべた女性エルミナと、二人の子供たちが顔を出した。 リシェルとノアスの兄妹は、亮の後ろに隠れていたもっふるを見つけるなり、目を輝かせた。
子供たち「わあ、もふもふだー!」「お父さん、この人たちが助けてくれた人?」
エルミナ「まあ、ようこそお越しくださいました。夫から毎日、皆様がいかに立派な方々か聞かされておりましたのよ。……今夜は腕によりをかけて準備しますね」
亮「ここまで歓迎されるようなことしたかな?」
あんな「あ、ありがとうございます! なんだか、すごく歓迎されちゃって……」
みゆ「……家族構成、良好。信頼できる環境と判断」
オルド「今日はゆっくりしていってください! あの時のお礼も兼ねまして、明日はゆっくり市場を案内しますよ!」
亮「いい街だなぁ。しばらくここで、のんびりさせてもらおうか」
あんな「うん、パパ。ここならお米の情報もありそうだね」
その後、一行は一応の挨拶として街の冒険者ギルドへ向かった。
亮「こんにちはー! Fランク冒険者の神崎です、挨拶に伺いました!」
受付嬢「――! あ、神崎亮様ですね。ようこそグラーディオへ。当ギルドでの手続きは全て完了しております。どうぞ、ご自由にお過ごしください」
亮「えっ、もう終わったの? 手際いいなぁ!」
あんな「さすが商業都市、仕事が早いね」
みゆ「……効率的。……ですが、受付嬢の視線が、未知の生物を見るようなそれです」
亮たちが「いいギルドだなぁ」と去った後。
受付の奥では、ギルド長が王都から届いた「秘密裏の連絡書」を握りしめ、冷や汗を拭っていた。
『――神崎亮、およびその家族を絶対に刺激するな。彼らの行動は全て“善意のついで”である。丁重に、かつ慎重に、何も起きないよう見守るべし――』
ギルド長「……これか。王都を震撼させたという“無自覚な勇者”は……。頼むから、うちの街を物理的に変えるようなことだけはしないでくれよ……」
そんなギルド側の戦々恐々とした空気など知る由もなく、神崎家はオルド一家の温かいもてなしに包まれていた。
夜になると、エルミナの手料理が食卓に並んだ。
亮「うおおお! うまそう!」
あんな「わあ、すごい量……!」
みゆ「栄養バランス、完璧」
もっふる「ピィー♪」
子供たち「もっふる、一緒に食べよー!」
もっふる「ピィー♪」
オルド「さあさあ、遠慮なく食べてください! これもあの時のお礼です!」
エルミナ「ふふ、たくさん召し上がってくださいね」
亮「いただきます!」
温かな食卓を囲み、笑い声が響く。
商業都市での最初の夜は、穏やかに、温かく過ぎていった。
こうして――
神崎家は、かつて助けた商人の全面バックアップを受け、商業都市での生活をスタートさせた!?
新しい街の心地よい賑わいと、温かい家庭の料理が、家族を癒していく。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が
商人の街で、のんびり情報収集モードへと突入する?
「あえて力を隠している」
領主様が導き出した、パパ=超弩級の聖人説!?
ただ温泉を掘り当てただけの無自覚なやらかしが、権力者の目には「世界の均衡を保つ隠密作戦」に見えていた!
勘違いが加速し、国家レベルの警戒態勢(?)が敷かれる……。
次回、第67話 え、パパが勇者!? 領主様が勝手に大混乱!? ただの温泉掘りが国家級の隠密作戦に誤解されたー!?
パパがご飯を食べている間に、都市の歴史が勝手に書き換わっていく!




