第63話 え、パパが勇者!? 「ちょっと様子見るだけ」が破滅の呪文!? 信頼度ゼロの即決で平和な村から緊急出動ー!?
リーネ村の宴もひと段落し、焚き火の明かりが落ち着いた頃。
村長が湯飲みを手に、ぽつりとつぶやいた。
村長「いやぁ……今年は雨が少なくてねぇ」
亮は湯飲みの水を飲んで、少し落ち着いた声で言った。
亮「おお、こっちの世界でもそういう年があるんですねぇ」
あんな「日本でもあったよね、そういうの」
みゆ「気候変動は異世界でも発生。興味深い」
村長「まあ、うちの村はまだ良いんだが……交流のあるミルナ村は、ちょっと深刻らしくてな」
亮「ミルナ村?」
村長「ここから半日ほどの村だよ。水源が細くなって、畑が枯れかけてるらしい」
あんな「えっ、それ大丈夫なのですか?」
村長「いやいや、そんな深刻な話じゃないよ。ちょっと困ってる程度だ。向こうの村長も『まあ、そのうち雨が降るだろう』って笑ってたしな」
みゆ「……世間話レベル」
亮「なるほどねぇ。そういうこともあるんだなぁ」
もっふる「ピィー」
――しかし。
あんなとみゆは、亮の横顔を見て察していた。
あんな(……パパ、絶対行く気だ)
みゆ(……行動フラグ、点灯)
亮「……ねぇ、あんな、みゆ」
あんな「うん、言うと思った」
みゆ「行くんだね」
亮「ちょっと様子見に行くだけ! ほんとに“ついで”!」
あんな「はいはい、パパらしいよ」
みゆ「……即決はパパのスキル」
もっふる「ピィー♪」
亮「よし! 明日、ミルナ村に寄ってみよう!」
焚き火がぱちりと弾け、宴はそのまま夜更けまで続いた。
村人たちの笑い声、杯を交わす音、子どもたちのはしゃぐ声。
温かな空気に包まれながら、神崎家は静かに星空を見上げていた。
あんな「……パパ、無理はしないでね」
亮「分かってるって。ほんとに"見てくるだけ"だから」
みゆ「……その言葉、信頼度ゼロ」
もっふる「ピィー」
亮「ひどっ!」
笑いながら、三人ともっふるは焚き火の温もりを背に、宿へと戻っていった。
――そして翌朝。
鳥の声が響き、村はもう働き始めていた。
空は青く澄み渡り、どこか清々しい朝の空気が村全体を包んでいた。
亮「ふぁ〜……おはよー! すっきりしたー!」
村の宿屋から出てきた亮は、大きく伸びをしながら朝の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。
あんな「ほんとに二日酔いしないんだね……」
みゆ「体質、謎」
もっふる「ピィ♪」
村人たちが次々と声をかけてくる。
村人A「亮さん、おはようございます!」
村人B「朝食、置いときましたよ!」
村の女性「はい、あんなさん。焼きたてのパンですよ」
あんな「ありがとうございます!」
子ども「みゆちゃん、今日もジュースあるよ!」
みゆ「……継続支援、感謝」
もっふるは朝から子どもたちに囲まれていた。
子どもたち「もっふる様ー!」「今日も撫でさせてー!」
もっふる「ピィー♪」
村の朝食は素朴だが、どれも優しい味わいだった。
焼きたてのパン、野菜のスープ、干し肉、そして村特製のハチミツ。
亮「うっま! このパン、外カリカリで中ふわふわだな!」
あんな「このスープもいい。体に染みる感じ」
みゆ「……栄養バランスも良好」
もっふる「ピィー♪」
村長もやってきて、軽く挨拶する。
村長「今日はいい天気だ。旅の続きも気をつけてな!」
亮「はい! お世話になりました!」
村長「ミルナ村に寄るんだろ? 道は分かるかい?」
亮「えっと……まあ、なんとか!」
あんな「パパ、絶対迷うから地図見せてもらおう」
みゆ「方向音痴の自覚、ゼロ」
村長は笑いながら、簡単な地図を描いてくれた。
村長「この道をまっすぐ行けば、半日でつく。途中に小川があるから、そこで休憩するといい」
亮「ありがとうございます!」
荷物をまとめて村の入口へ向かうと、村人たちが総出で見送りに来ていた。
村人A「また来てくださいね!」
村人B「道中気をつけて!」
村の女性「あんなさん、みゆさん、お元気で!」
子ども「もっふる様ー! また来てねー!」
もっふる「ピィー♪」
亮「みんなありがとうー!」
あんな「また絶対来ます!」
みゆ「お世話になりました」
村人たちが手を振る中、神崎家ともっふるはリーネ村を後にした。
振り返ると、村全体が朝日に照らされて輝いている。
あんな「いつ来てもいい村だよね!」
みゆ「うん。居心地が良かった」
亮「また来よう。今度は米を炊いてやるからな!」
あんな「パパ、それ本気で言ってる?」
みゆ「……本気だね」
もっふる「ピィー♪」
笑いながら、家族は道を歩き始めた。
村を出てしばらく歩くと、周囲は緑豊かな森と草原が広がっていた。
風が心地よく吹き抜け、鳥のさえずりが響く。
亮「いやー、気持ちいいなー!」
あんな「うん、こういう景色、癒やされる」
みゆ「空気もきれい」
もっふる「ピィー♪」
しばらく歩くと、村長が言っていた小川が見えてきた。
透き通った水が流れ、周囲には木陰が広がっている。
亮「よし、ここで休憩しよう!」
あんな「そうだね。水も汲んでおこう」
みゆ「適切な判断」
もっふる「ピィー♪」
三人は木陰に座り、持ってきたパンを食べながらひと息ついた。
もっふるは小川の水を飲んで、満足そうに鳴く。
亮「……ミルナ村、どうなってるかなぁ」
あんな「パパ、やっぱり気になってたんだ」
みゆ「……予想通り」
亮「だって、困ってるって聞いたら、ほっとけないだろ?」
あんな「うん、分かってる。それがパパだもんね」
みゆ「……でも、無理は禁止」
亮「分かってるって!」
もっふる「ピィー♪」
休憩を終え、再び道を歩き出す。
太陽はまだ高く、空は青く澄んでいた。
あんな「……なんか、冒険してるって感じだね」
みゆ「うん。悪くない」
亮「よし、ミルナ村まであと少しだ!」
もっふる「ピィー♪」
こうして――
神崎家は“ほんのついで”のつもりで、ミルナ村の小さな異変へと足を踏み入れるのであった。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が
雲ひとつない青空の下、無自覚な救済へと加速していく!
水不足の村に救世主(?)降臨! 娘の冷静な神業に対し、パパが手にしたのは……怪しすぎる二本の棒!?
「ちょっと探すだけ」のはずが、大地を揺るがす未曾有の事態へ!
立ち昇る謎の湯気と硫黄の匂い、そして地面に跪く村人たちの叫びとは!?
次回、第64話 え、パパが勇者!? 水不足の村で温泉噴火!? ダウジング暴走で村中が拝み始める大パニックー!?
地質学の常識が崩壊する、神崎家の「やりすぎ」伝説を目撃せよ!




