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パパ、またやらかしてる! 〜50歳天然パパ、娘2人ともっふるで挑む最強Fランク家族の無自覚無双スローライフ〜  作者: Kou
第五章 混迷編〜噂と敬語の嵐を抜けて、目指すはお米の桃源郷(!?)〜

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第58話 え、パパが勇者!? 宿泊料金据え置きで部屋が倍増!? 逃げ場なしの豪華すぎる違和感に家族全員パニックー!?

夕暮れ時。 神崎家は、いつもの宿へと戻ってきた。


亮「ふぅ〜……今日も何も起きなかったな!」


あんな「その言葉、逆に怖いからやめて」


みゆ「ですが、依頼も完了しましたし、今日は本当に静寂」


もっふる「ピィー♪」


宿の扉を開けると、いつも通りの光景が広がっている。

受付、階段、年季の入った木の床。 見慣れたはずの空間――のはずだった。


亮「……あれ?」


階段を上り、いつもの部屋の前に立つ。扉の位置は同じ。番号も同じ。


亮「……でも」


扉を開けた瞬間、亮は立ち止まった。


亮「……ここ、前より広くないか?」


部屋は確かに“いつもの部屋”の面影を残していた。

ベッド、机、椅子。配置も似ている。

だが、空間が決定的に違う。

横にも、奥にも、ありえないほどの余白がある。


あんな「……広い。というか、隣の部屋と繋げた?」


みゆ「……分析。天井高、および床面積が昨夜より35%拡張されています」


もっふる「ピィ!」


亮は部屋の中を歩き回り、壁に手を当てる。


亮「……まさか、壁が動いたのか?」


あんな「宿が勝手に、魔法か何かで改築するわけないでしょ!」


みゆ「……ですが、物理的に昨夜より広大です。空間歪曲の形跡すら感じます」


机の上には、以前はなかった精巧な細工の花瓶がある。

窓際には、ゆったりとした小さなソファ。

そして――


あんな「……ちょっと、ベッドが豪華になって増えてる!」


亮「本当だ。豪華だ」


みゆ「もっふる用ベット?」


もっふる「ピィー♪」


亮は頭を抱えた。


亮「……誰か、説明してくれ」


そこへ、タイミングを見計らったような控えめなノック音。


宿主「失礼いたします」


扉を開けると、宿主が以前よりも深い角度で一礼した。


宿主「本日はご利用ありがとうございます。お戻りをお待ちしておりました」


亮「えっと……あの」


亮は、困惑気味に部屋の奥を指さす。


亮「この部屋、昨日の夜と全然違いません?」


宿主「いえ。以前と同じ“扱い”でございます」


あんな「その『扱い』って言い方がすごく引っかかるんだけど!」


みゆ「……『扱い』という単語を選択した時点で、事実上の改変を認めています」


宿主は、にこやかに微笑んだまま言葉を続ける。


宿主「最近はお客様のご活躍もありまして、王都のギルドからも特段の……いえ。ですので、より快適にお過ごしいただけるよう、少々手を加えさせていただきました」


亮「……頼んでないんだけどなぁ」


宿主「ええ。存じております。これは私共の、ささやかな誠意でございます」


その笑顔に宿る「誠意」という言葉が、今の亮には妙に重かった。


あんな「……一応聞くけど、宿泊料金は?」


宿主「もちろん、以前と同じで結構です」


みゆ「……経営学的に見て、完全な赤字。それはそれで問題」


もっふる「ピィ……」


宿主は、もう一度丁寧に頭を下げる。


宿主「何かございましたら、いつでもお申し付けください。それでは、ごゆっくり」

そう言って、音もなく静かに扉を閉めた。


亮「……なあ」


あんな「うん」


みゆ「……はい」


亮「俺たち、今日何かしたっけ?」


あんな「してない。ウサギを追い払っただけだよ」


みゆ「同じく。統計的に見て、ここまで厚遇される理由は存在しない」


もっふる「ピィ!」


部屋の中央に立ち、四人は周囲を見回す。

広くなった空間。

明らかにグレードの上がった備品。

“快適”という名の、逃げ場のない違和感。


亮「……スローライフって、もっとこう……」


あんな「質素で、誰にも邪魔されない感じ?」


みゆ「……自然体。他者からの過干渉が排除された状態を指すはずです」


もっふる「ピィー」


亮は新調されたふかふかのベッドに腰を下ろし、見慣れない高い天井を見上げた。


亮「なんかさ……」


言葉を探し、少し考える。


亮「世界のほうが、俺たちの先に回り込んで、勝手にレッドカーペットを敷いてる気がしないか?」


あんな「してる。それも、めちゃくちゃ力いっぱいにね」


みゆ「……同感。パパが望む『普通』の定義が、この世界では既に崩壊」


もっふる「ピィ……」


誰かが配慮している。誰かが、勝手に整えている。

神崎家の知らないところで、神崎家を「勇者一行」として完成させようとする大きな流れが動き出していた。


亮「……まあ、ぐっすり寝れるならいいか!」


あんな「切り替え早っ! 少しは危機感持ってよ!」


みゆ「……それがパパ。適応能力だけは、測定不能の領域」


もっふる「ピィー♪」


灯りを落とす。 広くなった部屋に、重みのある静けさが満ちていく。

神崎家の日常は、確かに続いている。

けれど――

“普通の扱い”から、少しずつ、けれど確実に外れ始めていることだけは、もう誤魔化せなくなっていた。


こうして――

何もしていないはずなのに、寝る場所さえも豪華に塗り替えられていく。

ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、

静かに、けれど逃れられない“変化”に包まれていく。


「嵐の前の静けさ」は神崎家には通用しない!? 街全体がパパに気を遣う異常事態のなか、本人は「お米が食べたい」と旅行を強行?

無自覚なパパの気まぐれが、次なるトラブル(サバイバル)の幕を勝手に開ける!?


次回、第59話 え、パパが勇者!? まだ何も始まってない……よね?

目的地にお米がある確率0%!?絶望的な予測をよそに、勘違いスローライフはどうなる!


あんな「……ねえパパ、枕の下に『王宮主催パーティーの招待状』が入ってるんだけど……これも宿のサービスかな?」

みゆ「……今回の事象における不条理指数は極めて高めです。皆様からの観測データ(感想)……お待ちしています。励みになります」


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