第57話 え、パパが勇者!? ただのウサギ退治にギルドが震撼!? 報酬3倍の裏に潜む隠密部隊の包囲網ー!?
王都冒険者ギルド。
朝のざわめきはいつも通りで、掲示板には無数の依頼書が並んでいた。
亮「よし。今日は軽めのやつな。スローライフ優先」
あんな「その宣言、昨日も聞いたけど」
みゆ「でも今日はギルドだし、雑用で終わる」
もっふる「ピィー♪」
亮は掲示板を眺め、端のほうに貼られた紙を一枚はがす。
亮「お、これこれ。畑荒らしのウサギ退治。近郊、半日。平和!」
リーナ「……あ、それですね」
受付カウンターの向こうで、リーナが一瞬だけ言葉を選び、神妙な顔をした。
亮「これ、ウサギ退治だよね?」
リーナ「ええ、そうなんですけど……念のためでして」
あんな「“念のため”って何? 嫌な予感しかしないんだけど」
依頼書を確認すると、確かに内容は簡素だった。
〈近郊の畑を荒らす魔獣の排除〉
〈可能であれば原因の確認〉
〈安全確保を最優先〉
亮「ほら、普通じゃん?」
あんな「……不自然だよ。普通のウサギ退治に『原因の確認』や『安全確保を最優先』なんて念押しは不要でしょ。なんかリスクを隠してる感じがして、わざとらしいんだよね」
みゆ「……同感。条件が曖昧で、現場の裁量が広すぎ」
リーナ「えっと……依頼主さんが、とても慎重で……」
亮「慎重なのはいいことだ!」
あんな「報酬、見て」
亮「……?」
亮は依頼書の下段に目を落とす。
亮「……高くない?」
リーナ「はい。いつもの三倍ほどで」
亮「ウサギだよ?」
リーナ「“念のため”です」
もっふる「ピィ?」
亮「まあいいや。畑も守れるし、依頼主も喜ぶし。受けます!」
リーナ「かしこまりました」
ペンが走り、受諾の印が押される。
その瞬間、ギルド内の空気が――ほんの少しだけ、和らいだ。
あんな「……今、空気変わった?」
みゆ「うん」
もっふる「ピィー」
近郊の畑。
日差しは穏やかで、土の匂いが心地よい。
亮「ほら、のどかー」
あんな「……静かすぎない?」
みゆ「足跡は多い。でも、姿がない」
もっふる「ピィ……」
畑の端、作物が倒れている場所に近づく。
噛み跡は確かに小さい。
だが――
あんな「これ、ウサギ?」
みゆ「……歯形は似てる。でも、間隔が広い」
亮「大きめのウサギ?」
その時、草むらが揺れた。
亮「来た来た!」
現れたのは、確かにウサギだった。
一匹。
普通サイズ。
耳がぴくりと動く。
亮「な? 普通だろ」
あんな「……一匹?」
みゆ「……増援の気配、なし」
もっふる「ピィ?」
亮が一歩踏み出す。
ウサギは逃げない。
じっと、こちらを見ている。
亮「……逃げないウサギ、珍しいな」
あんな「パパ、後ろ」
振り返ると、別の畑でも草が揺れている。
さらに、奥でも。
そして、反対側でも。
みゆ「……点在。配置がいい」
亮「配置?」
草むらから、次々とウサギが姿を現す。
数は多い。
だが、どれも普通のウサギだ。
亮「……増えたね?」
あんな「数が」
みゆ「連携してる」
もっふる「ピィー!」
亮は剣を抜かない。
代わりに、深呼吸を一つ。
亮「よし。畑を守るぞ。追い払うだけでいい」
あんな「了解」
みゆ「……制御する」
家族は動く。
畑を壊さず、踏み荒らさず。
ウサギたちは、まるで“役目を終えた”かのように散っていく。
数分後。
畑には静けさが戻った。
亮「ほら、平和!」
あんな「……“念のため”って、こういうこと?」
みゆ「期待値が、最初から私たち向け」
もっふる「ピィ……」
遠くで、誰かが安堵の息をつく気配がした。
亮「まあいいや! 依頼完了!」
神崎家は、何事もなかったように帰路につく。
だが――
“何も起きなかった”という事実だけが、確実に次の期待を積み上げていた。
こうして――
雑用のはずの依頼は、妙な手応えだけを残して終わった。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
静かに“次は何が来るのか”を匂わせていく。
宿泊代金はそのままなのに、客室の広さがまさかの2倍!? 逃げ場なしの豪華すぎる違和感に、神崎家の常識が崩壊する!
次回、第58話 え、パパが勇者!? 宿泊料金据え置きで部屋が倍増!? 逃げ場なしの豪華すぎる違和感に家族全員パニックー!?
もはやサービスという名の過剰接待、この異常事態をパパはどう切り抜ける!?




