第52話 え、パパが勇者!? 女王蜘蛛の猛攻で絶体絶命!? 糸がパパを避けて大混乱ー!?
紅蓮の輪と蒼流の連――二つのパーティが力を合わせ、女王蜘蛛グラントの猛攻を必死に防いでいた。
ガルドとブロスのタンク二人が盾を並べ、必死に糸の直撃を防ぐ。
レオン、セリナ、エリオの剣士三人は、四方八方から押し寄せる小蜘蛛を必死に斬り払っていた。
魔法が封じられた魔法使いたちは杖で必死に払い落とす。
だが、押し返せない。
数が多すぎる。
糸が多すぎる。
その後ろで――
あんなとみゆは、完全に放心状態だった。
二人の瞳は焦点を失い、震える指先は力を入れることすらできない。
そんな中、もっふるが小さく震えながら、一歩前に出た。
もっふる「ピィー……」
逃げない。
震えている。
それでも、大好きな家族を守るために前へ。
亮はその小さな背中を見つめた。
亮「……そうだな。逃げるためじゃない。全員で、生きて帰るため、だ!」
亮はゆっくりと地面に視線を落とした。
戦場は――
糸だらけ。
荒らされた森。
踏み荒らされた土。
仲間たちの足跡と、必死の抵抗の痕跡。
亮は、静かに一歩前へ出た。
亮「……ここから先は、俺の家族に触るな」
その声は大きくない。
怒鳴り声でもない。
ただ静かで、揺るぎなく、温かかった。
だが――
その瞬間、空気が変わった。
ブロス「……今の、踏ん張れたぞ?」
レオン「小蜘蛛の攻撃……少し弱まった?」
あんな「……あたたかい。懐かしい感じ……」
みゆ「……守られてる……」
二人の肩の震えが止まり、
張り詰めていた心がふっと軽くなる。
放心状態から、ゆっくりと意識が戻っていく。
その時だった。
グラントが、動きを止めた。
苛立ちを見せるように、太い糸を吐き出す。
狙いは、目の前の獲物――亮だ。
糸は亮に届かない。
確かにそこにいるはずなのに、糸は意志を持っているかのように亮を避け、空を切った。
グラントは脚を踏み出す。
巨体を生かして一歩、前へ。
――踏み込めない。
見えない壁があるわけではない。
魔法の障壁も感じない。
押し返されてもいない。
それでも、それ以上、前に出られなかった。
グラントの複眼が揺れる。
獲物を屈服させるための、絶対的な威圧を放つ。
だが、その圧は――
ある一線を越えた瞬間、霧のように散った。
届かない。
拒まれた。
グラントは本能で理解する。
――ここから先は、踏み込むべきではない。
ほんの一瞬。
呼吸ひとつ分にも満たない、僅かな躊躇。
だがそれは、戦場においては致命的な“間”だった。
ガルド「今だーー!! 全員でかかれ!!」
ガルドとブロスが盾で道を切り開き、レオン、セリナ、エリオの三人の剣士が一斉に切り込む。
歴戦の猛者たちの動きは鋭く、一瞬の隙を逃さない。
動きの鈍った女王蜘蛛に、彼らの刃が深く、確実に吸い込まれていった。
断末魔と共に、巨大な女王蜘蛛が崩れ落ちる。
沈黙が訪れる。
ただ、誰も、何が起きたのかを、はっきりとは理解できていなかった。
亮「……みんな、怪我はないかな?」
亮はいつもの穏やかな笑顔に戻り、もっふるを抱き上げた。
もっふる「ピィー♪」
こうして――
亮が無意識に放った「パパの守護」によって、絶望的な戦いは幕を閉じた。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
誰も真実に気づかないまま、奇妙な勝利の余韻に包まれていました。
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