第50話 え、パパが勇者!? 虫嫌いで森が壊滅の危機!? 救出したプロを巻き込む過剰防衛パニックー!?
相変わらず、神崎家は「虫」という名の天敵に大苦戦していた。
カサカサと木の葉が揺れる音がするだけで、過剰な防衛本能が火を噴く。
あんな「ひっ……!」
みゆ「……来る……?」
あんな「そこっ! 近寄らないでぇぇ!」
鋭い斬撃が空を切り、無実の巨木をなぎ倒す。
みゆ「……すべて排除対象」
容赦ない魔法が森の地面を焼き払う。
完全に“過剰反応モード”だ。
亮(このままじゃ紅蓮の輪を助けるどころじゃない……)
その時、頭上から必死な叫び声が響いた。
「おーい! 助けてくれー!」
「誰かー! おーい!!」
あんな「敵!?」
みゆ「……撃つ」
見上げると、巨大なトレントが、四人の冒険者を枝でぐるぐる巻きにして吊り上げていた。
亮「あんな、みゆ、ストップ! 魔物じゃない、人だ!」
もっふる「ピィーー!」
二人は寸前のところで攻撃を止めた。
あんな「えっ……あ、本当だ! トレントの枝に人が!」
みゆ「……対象の生存を確認」
吊るされている冒険者たちは、今にもトレントの締め付けで意識を失いそうだ。
あんな「任せて!」
閃光のような一閃がトレントの枝を正確に切り裂き、冒険者たちを救出した。
助け出したのは、D級パーティー《蒼流の連》の面々だった。
リーダーのエリオ、タンクのブロス、魔法使いのフィナ、ヒーラーのアリアが安堵の表情で挨拶してくる。
ブロス「助かりました……魔法は使えないし、正直もうダメかと……」
エリオ「噂の神崎家ですね」
亮「噂? やっぱり、うちの娘たちが美人姉妹だって有名になっちゃった? それとも、もっふるかな?」
あんな「いや、パパ。絶対これまでのやらかしのせいだって……」
みゆ「……妥当な推測」
エリオ「ははは。お二人さんがあんなさんとみゆさんですね? 噂以上の美人だ。しかもC級のトレントを一瞬で倒すなんて、腕前も噂以上だ」
あんな&みゆ「ありがとうございます」
あんな「パパが言ってたことが当たるなんて……」
みゆ「……不吉な予感」
亮「え? どういうこと?」
もっふる「ピィー♪」
その和やかな雰囲気に、死地を彷徨っていた冒険者たちの緊張がふっと解け、全員の間に明るい笑みがこぼれた。
フィナ「二人とも気をつけてよ。エリオは女性には……ね、エリオ!」
エリオ「やめてくれよ……」
ブロス「ここからの脱出方法、分かるのか?」
みゆ「ボスを倒すか、術者を倒す。それ以外は……難しい」
またガサガサと茂みが揺れた。
あんな&みゆ「キャーーー!!」
反射的に魔法と剣気が乱射される。
亮「伏せてーー!!」
蒼流の連のメンバーは驚き、慌てて地面に伏せた。
フィナ「急にどうしたの!?」
亮「実は、二人とも大の虫嫌いで……」
エリオ「あ、あそこまで!?まあ、女の子だし仕方ないか」
アリア「私たちも虫は嫌いだけど……でも凄いわね。この状況でこれだけ魔法が使えるなんて、噂以上の魔導士だわ」
ブロスが自身の盾を叩き、胸を張った。
ブロス「安心しろ。タンクの俺がいる限り、しっかり守ってやる!」
エリオ「任せろ。可愛いお嬢さんたちは俺たちの後ろに」
あんな「わあ、ありがとうございます!」
みゆ「……戦力補強。感謝します」
もっふる「ピィー♪」
フィナ「あら? 私たちは?」
ブロス「もちろん、お前たちも守る」
アリア「頼もしいわね」
亮「よし、では出発だーー!」
あんな「パパの号令係、復活だね!」
みゆ「……元気だけが取り柄」
亮の根拠のない自信に満ちた号令が響くと、張り詰めていた重苦しい空気は完全に消え去り、初対面のパーティーとは思えないほどの一体感が一行を包み込んだ。
タンクのブロスと剣士エリオを先頭に、左右をフィナとアリアが固め、その中央にあんなとみゆを保護するように配置。
そして最後尾のしんがりを亮ともっふるが歩く陣形で進み出す。
エリオ「この森、奥に行くほどヤバい感じがします!」
ブロス「魔物が……指示されてるような気配がありまして」
フィナ「ブロス、気にしすぎよ」
ブロス「あと亮さん、気をつけてくださいね。しんがりは後ろから狙われることもありますので」
亮「え、そうなの? ま、なんとかなるでしょー!」
あんな「もっふるがいるから大丈夫!」
みゆ「問題ない」
もっふる「ピィー♪」
だがこの時、森の影が「意志」を持って蠢き始めていることに、まだ誰も気づいていなかった。
こうして――
娘たちが「虫パニック」で後ろに隠れるという珍しい陣形で、不気味な森の深部へと進んでいく。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
プロの冒険者との共闘という、少しだけそれっぽい雰囲気を醸し出していた。
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次回、第51話 え、パパが勇者!? 地獄の蜘蛛大群で娘たち放心、全滅寸前の大混乱ー!?
史上最大のピンチは、覚醒の合図。亮パパ、その拳に想いを込めろ!




