第45話 え、パパが勇者!? 「かっこいい鳥さん」ってレベルじゃない!? 娘の超高度魔法を運動会気分で応援する天然パパの無自覚無双ー!?
演武舞台のもう一方では、魔術大会も順調に進んでいた。
司会「次の試合、魔術大会第一回戦・第八試合――ミユ・カンザキ VS リュシア・ノアール!」
あんな「みゆ、あんまりやりすぎちゃダメだよ!」
みゆ「……善処する。次は私。お姉ちゃんが『静』なら、私は『動』でいく」
亮「みゆーー! 楽しんでおいでよー!」
もっふる「ピィ、ピィーー♪」
会場の別区画から地を這うような、みゆ親衛隊の熱狂が沸き起こる。
「みゆ様――! その知的な瞳で、今日も僕たちを計算してーー!」
「知性! 圧倒的知性ーー!」
「みゆちゃーーん!頑張れーー!」
対戦相手のリュシアは、紅蓮の杖を突き出し、勝ち誇った笑みを浮かべた。
リュシア「セリナは油断したようだけど、私は簡単にはいかないわよ。この紅蓮の魔道士リュシアが、その生意気な顔を焼き尽くしてあげるわ!」
みゆ「……」
実況「さぁ、始まりました! こちらも注目の対戦カード、紅蓮の魔道士リュシア・ノアールに対するは、今大会最大の謎! 応援席からは、先程のアンナ選手に負けず劣らずの凄まじい熱気が押し寄せております、ミユ・カンザキだー! 」
審判「――はじめ!」
その合図と同時だった。みゆの体が、陽炎のように一瞬だけ揺らめく。
リュシアが詠唱を開始する。
みゆ「? ……あ、呪文がいるのか」
リュシア「くらえ! 『ファイアボール』!」
放たれた火球がみゆを直撃する、
――誰もがそう思った。
だが、火球はみゆの体をすり抜け、背後の石床を派手に爆破しただけだった。
実況「お、おーっと!? 外れた! 至近距離、ほぼ無防備な相手に対し、リュシア選手の魔法が大きく逸れました! 」
リュシア「なに!? なんで当たらないのよ!」
焦ったリュシアが、二発、三発と連続で火球を放つが、やはり全てが虚空を切り裂いていく。
「おい、どこ狙ってんだー!?」
「全然当たってねぇぞー!」
「緊張してんのかー!?」
実況「スタジアムには怒号のようなヤジが渦巻いています! 完全に自分を見失っているかー!?」
貴賓席のライオネルが眉をひそめた。
ライオネル「ん……? 何か変なのでは?」
王立魔術師団・師団長マルティナ・アーヴェントが、舞台を凝視しながら答える。
マルティナ「流石ですね、ライオネル殿。……あの娘、開始の合図と同時に防御魔法を展開しています。しかも無詠唱で」
ライオネル「何だと?」
マルティナ「屈折です。光を操り、自身の存在する『座標』を狂わせている。敵が『ここだ』と思って放った攻撃をすべて虚空へと誘導し、空振りさせているのです。そこに“見えている”のに、物理的な実体は干渉不可能な位相にある……。理屈は分かりますが、あんな高度な干渉を、合図の一瞬で……信じられません……」
ライオネル「マルティナ殿、魔術師団でこれを使えるものは?」
マルティナ「…………」
ただ、無言のままだった。
みゆの体が淡い光を帯びる。 《レイ・シャドウ》虚像の領域。 光学的迷彩による座標誤差の発生を確認。すべては事前の計算通り。
みゆ「……もういい?」
みゆは静かに両手を高く掲げた。
みゆ「――《クロマティック・フレア・ウィングス》(極彩色の炎翼)」
左右の手の火が一つに溶け合う。
不純物が一切ない完璧な燃焼状態となった炎は、赤から白へ、そして青、紫へとグラデーションを描く巨大な翼へと変貌した。
破壊と超越を同時に象徴する、神々しいまでの威容。
実況「おぉぉーと! これはすごい! 闘技場を覆い尽くさんばかりの、巨大で神々しい炎の翼だーー!観客席のブーイングが一瞬で静寂に変わった! 美しい、あまりにも美しい魔法だーー!」
羽ばたくたびに火の粉ではなく、宝石のような「光の粉」が舞い散る。
リュシア「なに、この炎……や、や、やめてええええ!」
その翼が振り下ろされようとした瞬間。
審判「ストッ―――プ!!」
審判の鋭い制止に従い、みゆが魔法の発動をやめると、炎は一瞬で霧散した。
審判「……リュシア、戦意喪失! 勝者、ミユ・カンザキ!」
リュシアはその場に腰を抜かし、ガタガタと震えて立てない状態だった。
亮「おー、勝った勝った! みゆ、今の鳥さんかっこよかったぞー!」
あんな「みゆ、お疲れ様!」
みゆ「……お姉ちゃんもお疲れ様」
亮「今日の試合はこれで終わりだな! 勝利を祝って、美味しいものを食べに行こう!」
あんな「いいねー、行こう!」
みゆ「……賛成です」
もっふる「ピィー♪」
こうして―― 娘たちの圧倒的な力が王都の常識をまた一つ粉砕し?、
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が、
初日の夜を迎えようとしていました。
にらみつけるだけで相手が沈む!? 一歩も動かず勝利を掴む姉と、相手が逃げ出す妹。 神崎姉妹の「存在感」が、もはや王都の理解を超えていく!
「運がいいな〜」なんて呑気に笑う亮パパですが、娘たちの実力はもはや不戦勝レベル。 そんな平和な快進撃に、突如として冷たい影が忍び寄る――。
次回、第46話 え、パパが勇者!? 不戦勝に気絶で娘が連勝!? パパだけ「運がいい」と笑ってたら事態は急変ー!?
消えたライバル、不穏な噂。スローライフに激震走る!?




