第42話 え、パパが勇者!? 人気者はつらいなぁ。心当たりゼロのパパ、敵意をファンサービスと勘違いして大会に強制エントリー!
ギルドの扉を押し開けると、朝の喧騒がそのまま中に流れ込んできた。
依頼掲示板の前には冒険者たちが集まり、受付前では新人が緊張した面持ちで書類を抱えている。
そんな中、亮の姿を見つけた冒険者たちが次々に声をかけてきた。
「亮さん、どうしたんだ? 一人なんて珍しいな」
「今日はあんなちゃんとみゆちゃんはー?」
「もっふるは? あの子、今日も元気か?」
亮は思わず笑みをこぼした。
亮「こういうの、いいなぁ……。娘たちも、もっふるも、みんなに好かれてる。こんなに温かく迎えてもらえるなんて。最高に幸せだよ」
亮は軽く会釈しながら受付へ向かった。
リーナ「亮さん、来てくれたんですね。ギルドマスターが奥で待ってますよ」
亮「ありがとう、……やっぱり、何かあったのかな?」
リーナは優しく微笑んだ。
その微笑みに背中を押され、重厚な扉をノックすると、中から低い声が返ってきた。
ガリオス「入れ!」
亮が扉を開けると、机に山積みの書類を前にしたガリオスが腕を組んでいた。
ガリオス「おう、来たか。亮、まずはダンジョン10階層クリア、おめでとう!」
亮「ありがとうございます」
ガリオス「今回は無茶しないで帰ってきたな。少しは学んだか」
亮「……あんな思いは、もう二度とごめんですから」
ガリオスはふっと笑った。
ガリオス「ふ、少しは成長したな」
亮「いやいや、普通に帰ってきただけですよ」
ガリオス「それが一番難しいんだ」
そう言ってから、ガリオスは表情を引き締めた。
ガリオス「さて、本題に入ろう。王都で双極大会が始まるのは知っているな」
亮「えぇ、噂で少しだけ」
ガリオス「単刀直入に聞く。出るのか?」
亮「出ないですよ」
ガリオス「即答か。まぁ、お前らしいが……」
亮「スローライフに関係ないですし!」
ガリオス「だが、すまんが……出場してもらわないといけないかもしれん」
亮「え?」
ガリオスは深いため息をついた。
ガリオス「例の“紅蓮の輪”が大会に圧力をかけてきた。貴族の出身でな。大会の枠を好き勝手に動かそうとしている」
亮「うーん……。いやぁ、娘は人気者で美人姉妹、しかももっふるは可愛い……」
「……は?」 思わず、ガリオスの動きが止まった。
亮「いや、わざわざ圧力をかけてまで、あんなとみゆの活躍を見たいなんて、よっぽど熱心なファンなんですかね。困っちゃうなぁ~」
ガリオス「……ゴホンッ。亮、お前……いい性格してるな」
わざとらしい咳払いをして、脱線した空気を無理やり引き戻した。
ガリオス「とにかく、どうするかは、お前が決めろ!」
亮「いえ、出ないです。スローライフには関係ないので!サインなら書きますけど」
ガリオス「分かった。大会には――」
その瞬間、扉が勢いよく開いた。
バンッ!
あんな「パパ、出るよ!」
みゆ「……任せて」
亮「えええっ!?? あんな、みゆ!? 買い物は?」
あんな「気になって来てみたの!」
みゆ「……パパだけでは不安」
亮「いやいやいや、なんでそうなるの?」
ガリオス「良いのか?」
あんな「面白そうだし!」
みゆ「……負ける気がしない」
亮「えぇ……。でも、二人とも目立ちたくないって言ってなかったっけ?」
あんな「いやいやパパ?今更なに言ってるの?」
みゆ「……自覚ないのが怖い」
亮「ええっ、どういうこと?」
ガリオス「……ンンッ! まぁ、家族がやる気なら話は早いな。家族会議は帰ってからやってくれ」
ガリオスは苦笑しながら書類を取り出した。
ガリオス「双極大会であんなは武闘大会、みゆは魔術大会に登録しておく。大会は二日後だ。よろしく頼む」
亮「えぇぇぇぇぇ……」
あんな「パパ、応援よろしくね!」
みゆ「……パパは観客席で静かにしてて」
亮「なんで俺が一番静かなんだよ……」
もっふる「ピィー♪」
亮「もっふるまで楽しそうにするなぁ!」
ガリオスは肩を震わせながら笑った。
ガリオス「まぁ、頑張れ。お前の家族なら、きっと大会をひっくり返すぞ」
亮「ひっくり返さなくていいんですけど!?」
こうして――
スローライフを目指す亮の意志とは裏腹に、
神崎家はまたしても大きな渦に巻き込まれていく。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
王都中を巻き込む大騒動へと加速していくのだった。
応援のためにパパが選んだのは、背中に龍と虎が躍るド派手な「学ラン」!? 国家の威信をかけた大舞台で、娘たちが静かな怒りとともに最強の皇女を狙う!
次回、え、パパが勇者!? 国家の威信をかけた大会! 学生服(?)で応援はマズいですよ――!?
パパの迷コーデをよそに、娘たちのガチ無双が始まっちゃう!?




