第40話 え、パパが勇者!? 十階層を突破したのにFランク!? 天才皇子の即位と、パパの「お米」基準なスローライフ!?
第十階層の激闘を終え、神崎家の一行は転送魔法陣の光に包まれた。
視界が開けると、そこは王都の正門近くに設置された帰還者専用の石造りの広場だった。
亮「ふぅ……。やっぱり地面が動かないって最高だー」
あんな「……本当にそれ。最後の方はどうにかなりそうだった!」
みゆ「……同感。三次元酔いの極致。二度とやりたくない」
もっふる「ピィ~♪」
王都の巨大な正門をくぐると、そこには異様な熱気が立ち込めていた。
街のメインストリートには色とりどりの旗が掲げられ、まるでお祭り騒ぎだ。
亮「なんだ? 随分と賑やかだな」
あんな「そうだね、何かあるのかな?」
通りすがりの商人が、興奮した様子で振り返った。
商人「旦那、知らないのかい! 新しい王様が即位されるんだよ。なんと、まだ五歳の第一皇子、アレン殿下だ!」
あんな「えっ、五歳⁉ まだ子供ですよね?」
みゆ「五歳で王様……。」
商人「ああ、だが、ただの子供じゃない。産まれてすぐに言葉を話し、今じゃ政治も軍事も、国中の賢者が束になっても敵わないって噂の天才児さ」
亮「へぇ――、アレン皇子か。すごい人なんだねぇ。世の中にはそんな天才皇子様もいるんだ」
もっふる「ピィ」
神崎家は他人事のように感心しながら、報告のために冒険者ギルドへと向かった。
扉を開けた瞬間、直後に地を揺らすような歓声が上がった。
冒険者一同「おおおおおおお!!!」
「帰ってきたぞーー!!」
「十階層突破だってよ!!」
ギルド中が爆発したように沸き立った。
亮「え、え、え? なんでこんな……」
さらに――
あんな親衛隊「きゃーー!! あんなちゃーーん!!」
みゆ親衛隊「みゆちゃーーん!! 無事でよかったぁぁ!!」
あんな親衛隊とみゆ親衛隊が、両側から押し寄せてきた。
あんな「わ、わわっ!? ちょ、近い近い近い!」
みゆ「……圧がすごい」
亮(娘たちの親衛隊増えてない?)
もっふる「ピィー♪」
そこへ現れたのは――《紅蓮の輪》
ギルドの奥から、赤い装備の五人組がゆっくりと歩いてきた。
ガルド「……ほう。無事に戻ったか、亮。運が良かったようだな」
セリナ「へぇ――。凄いじゃない。Fランクが十階層から生きて帰ってこれるなんて」
亮「ありがとうございます」
セリナ「ありがとうって、調子が狂うわね。まあいいわ! それで、もちろん、双極大会には出るのよね?そのために帰ってきたのでしょ!」
亮「え? 大会? いや、俺たちはそういうの出ないですよ。のんびりしたいですし」
リュシア「知らないの? それとも逃げるつもりかしら。プロの技術も知らない素人が、少し運が良かったからって調子に乗らないでほしいわね」
みゆ「……理論より結果。私たちは無傷」
リュシア「なっ……!」
ミレイア「でも、十階層を突破して逃げ出すなんて、街の皆さんがガッカリしちゃうわね。無様な姿を見せたくないっていう気持ちも分かりますけど……うふふ」
あんな「……っ」
みゆ「……」
セリナは鼻で笑い、ミレイアは意味深な笑みを浮かべ、ヒールの音を響かせながら去っていく。
その背中を追うように、レオンだけが板挟みの苦しそうな顔で亮たちに会釈を残し、慌てて彼女たちの後を追った。
ギルドのあちこちから声が飛ぶ。
冒険者たち「気にすんなよー!」
「応援してるぜー!」
「紅蓮の輪はいつもあんな感じだ!」
亮「みんな、ありがとう! 大会か……優勝するとお米がもらえるのかなー?」
あんな「それはないと思うけど……」
みゆ「そもそもお米が存在するか不明」
亮「確かにねー。お米がないなら、やっぱり出なくていいかな!」
あんな「お米が基準なのね」
もっふる「ピィー♪」
受付のリーナが、申し訳なさそうに近づいてきた。
リーナ「亮さん……その……実は……手違いで、ランクが……EではなくFのままでして……」
亮「え?」
リーナ「以前のお母さんを助けるための薬草採取……あれ、Bランク相当の依頼扱いで……、でもギルド案件ではない?……処理が……」
亮「あー……なるほど。大丈夫ですよー」
リーナ「す、すみません……!」
あんな「リーナさんが謝ることじゃないです! ねぇパパ!」
亮「あんなの言う通り。それに――スローライフはFランクが一番です」
あんな「パパらしいね」
みゆ「……でも、スローライフ達成率0%」
もっふる「ピィー♪」
家族で笑い合っていると、亮がふと思い出したように手を叩いた。
亮「ということは……さっきの《紅蓮の輪》の人たちが言っていたことって、本当だったんだー」
あんな「え? 何が?」
亮「ほら、いつもFランクと言っていたでしょ。 きっと俺たちに教えてくれてたんだ。今度会ったら、謝っておこう」
冒険者たちは一斉に首を振った。
冒険者一同「「「それはないと思うよーー!!!」」」
ギルド中に響き渡る盛大なツッコミと笑い声が、王都のギルドに響き渡った。
――そして、その空のさらに深く。
女神は、穏やかな微笑みを浮かべていた。
ふふ……あの勇者たち、今日も楽しそうですね。
あの家族にかかれば、数多の冒険者を退けた狡猾な迷宮さえ、賑やかな遊歩道のようになってしまうのですね。
息を合わせ、世界を読み、互いを信じる家族。
その一つひとつが、彼らの絆をより強く、より優しくしていく。
理不尽な罠をも笑いに変え、 強大な敵を前にしても、手を取り合う。
「最強」の力を持ちながら、「最弱」の称号を何よりも喜んで受け入れる。
力に溺れず、名誉に惑わされず……ただ家族と一緒にいたい。
その純粋な想いこそが、世界で最も強く、そして優しい魔法なのかもしれません。
さて……次はどんな試練が待つのでしょう。
新しい王の誕生、そして不思議な招待……。
あの家族なら、きっとまた笑顔で越えていくのでしょうね。
光が揺れ、風がそっと頬を撫でる。
その微笑みは、今日も変わらず優しかった。
こうして――
十階層を突破し、王都へと帰還した神崎家は、思わぬ騒動とギルドの大歓声に迎えられることになった。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が
また一歩、賑やかに進んでいくのだった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
第三章「迷宮編~家族で挑む、仕掛けだらけの地下世界⁉~」は、一区切りとなります。
三次元酔いに耐え、十階層を攻略して英雄?になったはずの神崎家ですが、 気づけば「最強のFランク」として、今度こそは、スローライフに近づくことになりました⁉
果たして本当に、穏やかな(お米のある)日常は訪れるのか……?
(だいたい、パパの天然と勘違い次第です)
このあと少しだけ、本編では描ききれなかった日常を描く【外伝】を挟み、 第四章では新たな王都の舞台で、また賑やかな日々が始まります。
引き続き、神崎家の異世界生活を楽しんでいただけたら嬉しいです。
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あんな「パパが調子にのりますけど、私たちが止めまーす⁉」
みゆ「ブックマーク登録も、あわせて、お願いいたします!」
あんな&みゆ「皆様の応援が、パパの天然パワーを加速させます!」
もっふる「ピィー♪」




