第38話 え、パパが勇者!? 重力反転で天地崩壊! 巨大スライムの「押し潰し」は回避不能!?
第十階層
その最深部へと続く一本道を、神崎家は警戒を緩めることなく進んでいた。
ここまで、あまりにも「普通のダンジョン」とはかけ離れた試練が続いていた。
亮「しかしこのダンジョン、ここまでとにかく走らされてばかりだったな」
あんな「本当。暗闇でスライムを避けて、タイルのモグラ叩きで走り回って……。攻略してるっていうより、なんだか過酷なアトラクションを連発されてる気分だよ」
みゆ「スライム、すべてが特殊型。……魔法反射に構造異常」
亮「俺がイメージしてたダンジョンって。もっとこう、普通に戦う感じだったんだけど、ドラゴンとか……ここは全然違うぞ!」
あんな&みゆ「ドラゴンは無理でしょー⁉」
もっふる「ピィ♪」
そんな会話をしながら通路を曲がると、空気が一変した。
突き当たりに現れたのは、これまでのどんな扉よりも大きく、重厚な、石造りの扉だ。
高さ五メートルほど。まるで城の門のような圧倒的な存在感に、亮は思わず唾を飲み込んだ。
亮「おお……ボス部屋って感じだな」
亮たちが扉の前に立つと、
ギィ……ィィィ……
自動で扉が開き始めた。 中は――深淵のような暗闇。
あんな「……うわ、暗っ!」
みゆ「光源、ゼロ。……気を付けて!」
もっふる「ピィ……!」
神崎家ともっふるが中へ足を踏み入れた瞬間、背後でバタン!と重い音を立てて扉が閉まった。
と、同時に――
手前から左右のランプが、パッ、パッ、パッと奥に向かって順番に点灯していく。
光が奥へ進むにつれ、部屋の全貌がゆっくりと浮かび上がった。
あんな「……あれ、見て」
部屋の中央後方。
そこにいたのは、象よりも巨大な、エメラルドグリーンの丸い影。
丸いスライムがぽよん、ぽよんと揺れていた。
亮「でっか……!」
あんな「あ、でもポヨンポヨンしててちょっと可愛いかも!」
亮「いいなぁ、あれ。一匹欲しいなー」
あんな&みゆ「いらないでしょー!」
もっふる「ピィー!」
亮「この部屋、今は静かだけど……普通なのか?」
みゆ「……分からない。でも、ギミックがあると思った方が安全」
あんな「ここまで色々あったし、最後だけ普通ってことはないよね⁉」
その時、あんなが部屋の左奥、壁際にそびえ立つ奇妙な物体を指さした。
あんな「ねぇ、あれ……砂時計?」
それは、天井から床まで届くほどの巨大な砂時計だった。
中の赤い砂は、今まさに最後の一粒が落ちようとしている。
亮「もしかして、砂が落ち終わると――」
言い終わる前に、みゆが小さく叫んだ。
みゆ「あ、あ……ヤバイ。そろそろ……!」
亮「え、何が――?」
ゴウンッ。
突然、世界が真逆にひっくり返った。
亮「わーーー!?」
あんな「きゃーー!?」
みゆ「……っ!」
もっふる「ピィィィ!?」
浮遊感は一瞬。直後、体は「天井」に向かって叩きつけられた。
亮「痛っ……! 天井が床になってる……?」
あんな「何これ、八階層のときみたいに部屋が回ったの!?」
みゆ「違う。……さっきのは構造自体が回る構造反転。今回は……重力そのものを反転」
あんな「どっちでもいいけど痛いってばーー!」
一方で、巨大スライムは違った。
重力が変わった瞬間に空中で器用にくるっと身を翻すと、何事もなかったかのように「新しい床(元の天井)」へと優雅に着地した。
その動きは、ポヨン、ポヨンとリズムを刻むほど余裕に満ちている。
亮「攻撃してこない……?」
みゆ「……まだ」
その瞬間。
巨大スライムが――
ポヨォォォォォーンッ!
と、爆発的な勢いで跳ね上がった。
あんな「来た来た来た来たーーー!?」
亮「やばい、逃げろーー!」
みゆ「……潰される!」
もっふる「ピィィィーー!」
散開し、間一髪で直撃を避けた。
スライムは天井(元の床)にドスンと落ち、再びぽよんと揺れる。
亮「これ……どうやって戦うんだ!?」
みゆ「……砂時計。砂が落ちるたびに重力が反転する」
あんな「ってことは……またすぐ来るってこと!?」
砂時計を見ると、砂は残りわずか。
亮「うそだろ……!」
砂が落ちきる。
ゴウンッ。
世界が、再びひっくり返った。
体がふわりと浮き上がり落下が始まる。 だが、その「落下中」の無防備な瞬間を、見逃さなかった。
巨大スライムがこちらを見上げ――いや、見下ろし――いや、どっちだ!?
その巨体を大きくしならせた。
あんな「パパ、来る!」
みゆ「跳躍予兆……!」
もっふる「ピィ……!」
空中に放り出された亮たちに向かって、隕石のような勢いで突っ込んできた。
ボヨォォォォォォォォンッ!!!
逃げ場のない空中。 巨大なグリーンの影が、亮たちの視界を完全に塗り潰していく。
亮「うわ、これ……避けられない……!」
あんな「パパーー!」
みゆ「……っ!」
もっふる「ピィィ!」
亮たちの視界が、巨大スライムの影で真っ黒に染まった。
こうして――
重力反転の洗礼を受けた神崎家ともっふる。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)
巨大スライムとの戦いは、ここからが本当の地獄の始まりだった。
落下する意識、迫り来る巨大な影――絶体絶命の空中戦でパパが掴み取ったのは、奇跡の逆転劇への『盾』だった!?
次回、第39話『え、パパが勇者!? 空中戦は盾で防げ! 炸裂する姉妹のコンボと謎の無拍剣』
家族の絆が、十階層の静寂を切り裂く!
★やブクマ、本当にありがとうございます!
もっふるも喜んでます「ピィー♪」
家族の物語、引き続き楽しんでもらえたら嬉しいです。




