第36話 え、パパが勇者!? 天地がひっくり返る!? 構造反転の回廊!?落下する岩ともっふるの野生の勘
第八階層
空気がふっと揺れた。
階段の先、約二メートルほどの位置で空間がゆらりと歪んでいる。
その歪みの向こうでは、サッカーボールほどの岩がゴロゴロと転がっていた。
亮「……なんか変だな」
その言葉と同時に、視界がぐるりと反転した。
反転した瞬間、転がっていた岩が頭上から落ちてきて、ドンッと鈍い音を響かせた。
あんな「ちょ、ちょっと待って……今、ひっくり返ったよね!?」
亮「岩!? いや天井!? いや床!? どうなっているんだ?」
みゆ「パパ、パニックにならない⁉」
あんな「でも、どうやって進むの?」
みゆ「……鑑定」
みゆの瞳が淡く光る。
みゆ「“構造反転の通路”。六十秒ごとに天地が逆転。岩は、触れた相手を巻き込んで爆発する。魔法、物理攻撃、無効。魔物の反応なし」
あんな「魔物がいないのはありがたいけど、危険すぎない!?」
亮「大丈夫だよー」
みゆ「パパ! 前回の反省。様子を見るべき」
亮「うっ……確かに」
三人ともっふるはしばらく反転のタイミングを観察した。
ちょうど六十秒後、空間がふっと揺れ、天地が再びひっくり返る。
反転した瞬間、岩が下へ落ちてドンッと音を立てた。
亮「……しかしこの通路、どこまで続いてるんだ?」
あんな「……通り抜けるだけって言っても、簡単じゃないよね」
その時ーー
もっふるが前に出て、耳をぴんと立てた。
転がる岩の音に合わせて、体を左右に揺らす。
亮「……もっふる、行けるのか?」
もっふる「ピィ♪」
亮「よし……もっふる、頼んだぞ!」
もっふる「ピーーー♪」
反転の瞬間、もっふるが軽い体で一歩踏み出した。
その後ろを亮が続く。
亮「よし! あんな、みゆ行くぞーー!」
岩が頭上から落ちてくる――が、すれすれで避ける。
次の岩も、転がる方向を読み、ひょいとかわす。
あんな「ちょ、ちょっと速い! 待ってパパ!」
みゆ「お姉ちゃん、足がもつれてる」
あんな「無理だよ、これぇー!」
亮「大丈夫だ、ついてこい! 次、右! そのまま真っ直ぐ!」
反転。落下。転がる岩。
そのすべてを、もっふるが先に進み、かわしていく。
もっふる「ピィ♪」
亮「次、左! しゃがんで! 跳んで!」
あんな「跳べないってばぁ!」
みゆ「お姉ちゃん、跳ぶしかない」
あんな「だから無理だって言ってるのにー!」
もっふる「ピィーーッ!」
もっふるは丸い体で岩の隙間をスルスルと抜けていく。
亮の後ろを、あんなとみゆが必死で追いかける。
息が上がり、足がもつれそうになりながらも、亮の声だけを頼りに進んだ。
みゆ「……パパ、速い」
あんな「ほんとだよ……なんでそんな余裕なの……」
亮「いや、なんか……今回は絶好調!」
みゆ「パパ、今回だけ有能!」
亮「今回だけって……!」
反転のタイミングを読み、岩の隙間を縫うように走る。
転がってくる岩の前では、まるでそこに道があるかのように進んでいく。
そして――通路の終盤。
巨大な岩が道を塞ぐように転がっていた。
他の岩とは比べものにならない大きさ。
亮「……あれに当たったらヤバいな」
あんな「どうするの……?」
みゆ「タイミング、必須!」
もっふるがじっと岩を見つめ、耳をぴんと立てた。
跳ねるように一歩前へ。
もっふる「ピィーー!」
亮「今だ! 走れー!」
三人ともっふるは一気に駆け抜けた。
巨大な岩が反転する寸前、ぎりぎりで通り抜けた。
あんな「はぁぁぁ……生きてる……」
みゆ「クリア!」
カコンッ。
部屋の中央に宝箱が現れた。
亮「よし来た! この音!」
あんな「この階層だと宝箱の中は……」
みゆ「……防具」
亮は宝箱の前に立ち、軽く腕を回した。
亮「よ〜し、それじゃあ――いざ、オーーープン!!!」
パカッ。
中には鉄製の盾が人数分。
あんな&みゆ「予想通りだねー」
亮「これは……ありがたいけど、盾で岩を防ぐってことか?」
あんな「そうなんだろうね!?」
みゆ「避けるより、受ける想定」
亮「定番階層はないのーー?」
もっふる「ピィ♪」
こうして――
構造反転の回廊を突破した神崎家は、次なる階層へと歩みを進める。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)
この先に待つのは、まだ見ぬ仕掛けか、それとも――。
やっと通常運転のダンジョンか……と思いきや、そこはやっぱり神崎家。斬れば増えるスライムの群れを前に、パパの意外な(?)観察眼が光ります! 家族の連携と、最後に手に入れた『あの武器』の正体とは……?
次回、第37話『え、パパが勇者!? 斬れば増える!? 分裂スライム地獄!』。神崎家の快進撃(?)をお楽しみに!
あんな:「ちょっとパパ! また勝手におにぎり配らないでよ!」
みゆ:「計算上、このおにぎり1個で騎士団1ヶ月分の糧食に相当する魔力が含まれてるわ。星5評価をくれたら、もっと増産できるかもしれないけど」
亮:「え、そうなの? みんな、評価とブックマークよろしくね(笑)」




